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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
261/343

260.明かされた事柄

「最後、まだ闇の中に頭突っ込んだままなのに、放置された時はさすがに焦ったがのぅ!」


 はっはっは、と笑う龍石に大吉さんは苦笑しながら、すまなかったなと呟いた。


 大吉さんがあの時呪いの闇の中で動けていたのは、やはり何かの結界のお陰だったのか……でも──


「大吉さんて、結界系アーティファクト持ってましたっけ……?」


 確かその系統のアーティファクトは持っていなかったはずと、わたしが呟くと


「藍華が付けておいた方がいい、って言ってくれたあの双葉ーちゃんからのアーティファクトだよ」


 あの……! 使用者が特定されていた──!


「大変だったんだぞー?」


 アグネスが、連中の懐から回収したアーティファクトを手に、こちらへやって来た。


「双葉様の所から、この近くの山中に残ってた神社まで飛んできたんだけどな。着くなり水晶龍が飛んでいっちまうし」

「大吉は一人でそれを追いかけて行ってしまうし。俺たちは後を追いかけるのに必死だったんだ」


 同じく、いくつかのアーティファクトを手に、フェイが文句を言いながらやって来る。


「ちょうど僕達が森を抜けた時だったよね、爆発みたいなのが起きて黒い闇が一気にそこまできたの」


 その爆発は、おそらく神器を覆った結界が破れた時の……


 藤騎君は、何故か水晶龍を抱きながらこちらへやってきて、話を続けた。


「その時はもう、水晶龍は影も形も見えなかったんだけど。先に行ったはずの大吉が森を抜けてすぐの所にいて、その黒いのに飛び込もうとしててさ」


「何だその黒いのは⁈ と、中の様子を伺うと、木々はみるみるうちに灰のように崩れていくし、大きな岩も同じように風に飛ばされて無くなっていっているし……。

 どう見ても入ったらまずいだろって、大吉を引き留めてたんだけどな」


「力じゃ敵わないからさー!

 ズルズルと、こぅ。引き摺られてったわけ。あたしもフェイも!

 そんで、その黒いのに片足突っ込みそうになった時、大吉のポケットが光り出して!」


 全員が大吉さんの後ろに並んで、次々に話しだす。


「……それで思い出したんだ。このアーティファクトの事」


 チャラリとチェーンの先に取り付けた、あの球体のアーティファクトを取り出して大吉さんが言った。


挿絵(By みてみん)


「試しに発動してみたら、身体が光り始めて。なんと、突っ込もうとしてた手を闇が避けてったんだ」


 なるほど……必要な条件下じゃないと発動しないタイプのアーティファクトなんだ。


「そういえば、あの闇の中よく……わたし達の場所が分かりましたね……?」


 森を抜けた所まで一人突っ走ってったのに、そこで止まってたということは。水晶龍は既に、目視できていなかったということ。タイミング的にも、わたしのいた所へ来ていたということで…………


「んー……勘……?

 まぁ、俺は闇の爆発が起こる瞬間を見てたからな。

 中心地の方だと思って突っ走ってっただけだ……」


 頬をポリポリとかきながら視線は空を仰ぎ、大吉さんは答えた。


「ただ、爆発は海岸近くから起きたと思うんだが……呪いのアーティファクトが解放されただけにしてはデカいなーとは……」


「それは……」


 わたしは見てきたことを、そのまま話した。


「──それで、その集められた神器の中に、呪いの力が封じられた物があったんです」


 全員が黙って目を見合わせると、


「双葉様が言ってた通りだったな……」


 フェイがそう言い、アグネスも藤騎君も頷いていた。


 あれ……? そういえば…………


「そういえば、みんな……水晶龍とかの事情を知って……?」


 思考力が戻ってきた。

 三人とも何故、水晶龍の事を驚きもせずに一緒にいるのか。


 大吉さんは柔らかい笑顔でわたしが拐われた直後のことからざっくりと説明してくれた。


 まず、研究所から五人衆のアーティファクトを借りてきて、藤騎君のアーティファクトで追跡しようと思いついたこと。

 それ以外にも何か追う手立てはないかと、双葉ーちゃんを頼り。そこでカトレイル教が何か儀式を行おうとしていることに気づいて、その場所をつきとめようとしたこと。


 そして──わたしとクゥさんの事情、別の世界から来たという事を、勝手にみんなに話して申し訳なかったと言われ……


「勿論大丈夫、問題ないです……。

 それより、わたしこそアグネス達にちゃんと話してなくてゴメンナサイ…………」


 チラリと見ると、


「まぁ、ぶっちゃけよくわからんし、ビックリはしたけどな! 仲が良いからって全てを明かさなきゃいけないわけじゃないんだ。藍華と大吉の間でだって、話していないこともあるだろう?」


 言われて心臓が跳ねるのはもうお約束のようなもの。上がってくる熱を冷ましながら、わたしは口をつぐんだ。


「だから問題なんか全くない! な?」


 アグネスがそう言ってフェイを見る。すると彼も同意のようで、勿論だ。と言ってくれた。

 そして藤騎君はクイクイっとわたしの手を引っ張って言った。


「僕もそう思うよ!」


「……ありがとう……」

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