表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
259/343

258.ありがとね……もう出して良いよ…………

 大吉さんが、そらした目を、出てきたばかりの闇の方まで向けて確認する。


「まだ、そこにあるな……ほんの少し後退しているようだが……」


 すると、フェイとアグネスが言った。


「多分ここは大丈夫だ。一度爆発的に広がってきたが、それ以降は広がってくる兆しは見えない」


「あぁ、あそこの大きな岩よりこちらには来ていないし……」


 ひとまず、それ以上広がってくる様子がないのならよかったと、わたしは一息つく。


「闇のきてた所、全部が黒……というか焦茶色……? みたくなってって……ここから先、生き物の気配を感じないね…………」


 藤騎くんはその闇との境界線の方を見て、言った。


「僕が目印と思って見てた岩も、闇が覆った部分から先がボロボロの灰みたいになってるよ」


「藤騎、あまり近づくなよ? 何の弾みでまた闇がくるかわからないから」


 興味津々な声で言う藤騎君に、大吉さんがそう注意をした。


 草も岩も、全ての生気を吸い取り。元あった形は止まることを許されず、灰となる。


 これが、呪いのアーティファクトで焦土と化する、ということなのか……。


 キュゥう、キュゥう


 水晶龍が何か話しかけるようにわたしの目の前に来て鳴いた。


 あ、そうだ。早く出さしてあげないと……。


「ありがとね……もう出して良いよ…………」


 その言葉を聞くと、水晶龍は少し離れた所へ行き、何やら力を込めてプルプル震え出す。


「一体何を…………?」


 大吉さんの言葉に、わたしが答えようとすると。水晶龍は明らかに容量オーバーなソレをズオオオオオオという音と共に吐き出した。


「……‼︎……」


 全員が息を呑んでそちらを見る。

 うん、やっぱり驚くよねー。提案したわたし自身も驚いてる。


 わたしから三人の顔は見えないけれど、おそらく大吉さんと同じような顔をしていることだろう。


 大吉さんは、目を見開き、口もあんぐりと開いた状態で、アグネス達の後ろの方を眺めている。


「特殊部隊の連中まで……何で……⁉︎」


 大吉さんが驚愕の声を上げると、その声に反応したかのように、蘇芳さんが首を振りながら起き上がる。


「く……ここは…………?」


 続いて特殊部隊の面々が次々と目を覚まているようで、ムクリと起き上がる影が見えた。


「儀式が……行われている最中に……来たんで……す…………」


 ケホッと、咳き込みながら言うと、胸が苦しくなり息が切れてくるのを感じた。


「藍華、無理して喋らなくて良い……まずはゆっくり休め……。

 そうだ、ベルカナは?」


 大吉さんはベルカナでわたしを治療してくれるつもりなのだろう……けど、もしかしたら…………


 荒い息はなかなか治らず、わたしはひとまず目でその場所を示した。


「ポケットだな、ちょっと失礼するぞ」


 そう言うと、すぐに大吉さんはわたしのズボンの右ポケットからアーティファクトセットのチェーンを引っ張り出す。そしてベルカナを手に取ると、訝しげな顔をして言った。


「これは……発動できない…………?」


 やっぱり──


 大吉さんがそう呟くと、後ろから蝶子さんがやってきて言った。


「大吉さん……お待ちください、藍華さんの回復が先です。……少し場所をいただけますか……?」


 自身もまだ完全じゃないだろうに。蝶子さんはそう言うと、七粒の玉のついたブレスレットを取り出した。


「藍華さんが回復すれば、そのアーティファクトの力も戻って来るはずです。結界を張りますから、そちらまでお下がりください……」


 指された方、水晶龍が吐き出した者達の方へと素直に全員が向かうと、蘇芳さんの声が聞こえた。


「藍華は蝶子に任せてこっちを手伝え……! 念のため、コイツらのアーティファクトを全部取り上げるんだ」


「……わかってるよ……!

 お前はもう少し休んどいたらどうだ? ダメージデカそうだから」


 言い合う二人の声に、蘇芳さんも無事そうで良かった、と胸を撫で下ろす感じに一息つく。


「藍華さん、こちらに……治癒に集中してください。

 全快までは難しいですが、太陽も出てきているので私の力も強まります。できる限りまで治療しますので……」


「……はい……」


 自分がどんな状態なのかわからないけれど、今は蝶子さんに頼ろう。


「ありがと……ございます…………」


 感知の力も働いていないはずなのに、目を瞑る前に見えたのは、光に包まれる蝶子さんとそのアーティファクト。


 大玉の両サイドに三つずつの玉が連なるブレスレット……アレは多分医療用アーティファクト。


 目を瞑るとさらにイメージが脳内に浮かんでくる。


 蝶子さんが力を解放すると六つの玉がそれぞれの場所へと飛び、医療用結界の六芒星を形作った。

 そして、透明な大玉が彼女の目前に現れて、そこから力を発動して治療を開始する。


 すると、同時にホンワリと身体が温かい何かに包まれ、流れてくる心地よいエネルギーを感じた。

 このイメージが事実なら、まるで龍石の千里眼みたい、と思いながら……。


 わたしが扉を越えて得た能力は、コレなのかもしれない――。


 じゃあ時折見える、彼女から天に登る一本の細い金色の糸は、太陽が出る時強まるという力と何か関係があるのだろうか……?


 そう漠然と思いながらわたしは身を委ねた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ