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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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247. 顔合わせ

 夕食時、邪魔だと思ったことで思いつき、ひとまず髪の毛を数十本使って指輪タイプのプチ身代わり護りを作った……。(抜く時結構痛かった……)


 それを握ったまま眠ってしまい、朝食を持ってきた誠司に起こされ、なんて図太いんだ、とお褒めの言葉をいただいた。


 誠司からは詩織ほどの攻撃的な雰囲気は感じず、


「儀式は1時間後くらいだ。それまでに食べておけ」


 そう言うと、いそいそと何処かへと向かっていった。


 ユキノブや詩織のように、アーティファクトの気配は消えず感知外へ行った感じがしたので、もしかしたら儀式の用意などしに行ったのかもしれない。


「何とかわたしのアーティファクトを取り戻せるといいんだけどなー……」


 髪の毛の指輪はなんとか光っているから、ある程度の効果はあるだろうけど……


「やっぱり心もとないなぁ…………」


 他にやることもできることもなさそうで、もう抜きたくはないけれど、プチアーティファクトサイズの三つ編みを編み続けていると、ユキノブと詩織、そしてオオトリともう複数のアーティファクトの気配が突然現れた。


「……!……」


 アーティファクトは持つ者の特性によってなのか、よく似た雰囲気になるらしく、どんな系統の力のものであっても、グループに別れているような感覚で判別が着くことにも気がついてきた。


 ……ユキノブ達以外、プラス三人かな……


 ユキノブだけがこちらに、残りは別方向へと向かっていく。儀式とやらが始まるのだろう。


 わたしは作ったプチアーティファクトを握ったまま、その気配が漏れぬよう意識する。


 鎮まれ……必要とされるその時まで、鎮まれ────


 ガチャリと鍵が開く音がして、扉が開く。


「お待たせしました。

 一度神器を集めてある部屋までご案内しましょう……。

 扉を開く鍵達のご対面です」


 静かにそう告げてくるものの、その声には歓喜が滲み出ているように感じる。


 扉が開き、必ずあちらへ帰れるという自信の表れだろうか……


「着いてきてください」


「…………」


 着いてなどいきたくもないけど、この部屋から抜け出せるようなものは髪の毛では作れずこの部屋からすら抜け出すことが出来なかったので、わたしは大人しくその言葉に従った。


 ユキノブの懐に、わたしのアーティファクト達が入れてあるという袋も見えたので、何とか奪い返せないだろうかとも考えながら……。


「貴女を儀式の場に連れて行く理由、彼らには私の周知されているのと同じ能力、『その場にいるだけで神器の力が増す』という風に説明をします」


「そんな能力が……?」


「こちらにきた後判明した能力ですよ……。気づくまで時間は要しましたがおそらくはじめから持ってた能力です。

 実際の力は『短時間で強制的に力を出させる』というものですが」


 強制的に力を出させる……?

 古の巫女と似たような現象を起こせるということだろうか? だけど古の巫女の力は使用するアーティファクトの本来の力を引き出す的な物で、他人が使用するアーティファクトの力をもっと出させるというのは、また違ったもののような気はする。


「でもわたしにそんな力は……」


「……まぁ、あろうとなかろうと、関係はないです。取ってつけた理由なので」


 その場で騒ぎ立てたら少しは混乱して儀式が取りやめにならないだろうか。

 とか考えるものの、いきなり連れて来られただけの自分が何を言おうとも、押さえつけられて終わりだと思い、安易に行動にはでないと心に決めた。


 何か行動に移すにしても、アーティファクトを取り戻さないと────


「どうぞ、こちらです」


 部屋から出ると、そこは湿気の匂いに混じって潮の香りがした。

 割れた窓の外には草の生い茂る……おそらく瓦礫の山だったものが見え、遠くの方には山が見える。

 潮の香りがするということは、反対側からは海が見えるのだろうか……。


 廊下は部屋と同様にボロボロで天井には埋め込み式の照明の名残があり、壁には所々ランプアーティファクトが設置されていた。


 部屋から感知外に位置するエリアの少し先に来ると、廃墟感漂っていた内装が、完全にリフォームされている場所へとやってきた。


「まず、こちらの部屋にどうぞ」


 木目の綺麗なドアを開き、わたしを先に通すユキノブ。


 ドアが開かれた瞬間、室内から溢れ出てくるアーティファクトの気配に、思わず息を呑んで立ち止まるが、それが神器達の気配なのだと気づいてゆっくりと室内に入る。


 すると、そこには詩織、誠司、オオトリと、みたことのない男が二人と女が一人。

 円形のテーブルがあり、ちょうど人数分ある椅子に座っていた。服装からするとこの見たことのない三人はオオトリのファイグス側の者だろうか。

 そしてテーブルの上、それぞれの目の前には一つづつの神器……。


 あれ……レジン桜のハーバリウムがない…………?


 あと……オオトリの横に座る男が懐に持つアーティファクトの気配に、なぜか覚えがある気がした。


「お待たせしました。

 彼女ですが、神器の力をさらに引き出すため、彼女の存在がとても役立つので、私と一緒にいてもらうことにしました」


 ドアをパタリと閉めると、わたしの後ろに立ったユキノブが、突然連れてきたわたしという部外者がここにいる理由をそう説明した。


 すると、オオトリの横に座る男が訝しげな顔をして口を開いた。


「……この女にそんな力があると……?」


 ……この声…………


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