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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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246. コップの蓋と卵の殻、そして布団とわたし

 なんとか抜け出せないか、近くにアーティファクトは全くないのか、色々考えて感知の範囲を広げてみたりしていると、おなかの減り具合からも攫われてきてからそう時間が経っていないらしいことに気がついた。


「感知できる範囲にはランプアーティファクトくらいしかないか……」


 ユキノブが消えたあたりに一つだけ僅かな気配は感じるけれど、いかんせん遠すぎてなにもできなかった。


 遠隔操作ができるわたしを、なんの結界もなしに放置していくあたり、この近辺にはアーティファクトがないのだろう……。


 もしかしたら人もあまりいない場所なのかもしれない。


 ごちゃごちゃ考えていると、覚えのあるアーティファクトの気配が現れ、近づいてきて、美味しそうな匂いと共に夕食が運ばれてきた。


「夕食よ、食べておきなさい。あとトイレはそこ。一応使えるようにはしてあるわ」


 持ってきたのは詩織で、何故私がこんな事をと文句を言いながら部屋に入ってきた。


「貴女の持つアーティファクトが神器並みだったそうで、ユキノブ様の理想通り、何かあった時のための予備まで揃い……第一候補の明日に儀式が行えることには感謝しているわ……」


 なるほど、他のメンバーにはそんな風に説明したのか……。


「物だけ奪って処分してしまえばいいものを……全く……ユキノブ様はなんでこんな女を生かしておくのか……!」


 そう言って、ギロリとこちらを睨んでくる彼女。

 そんな憎らしい目で見られても。


 彼女の態度から、随分と慕われて? 崇拝されていそうだということは分かるけれど、仲間に全てを話しているわけではないという事も分かった。


「明朝になったら誠司が食事を運んでくるわ。とりあえずそれまで大人しくしてることね……!」


 そう言い捨てると詩織は大きな音を立ててドアを閉め、鍵をしていった。


 一応鍵はかけてくのよね……。

 外に出られたら困るんだろう……儀式を行う場所だと言っていたし、何か壊されたら困るものもあるんだろうか。


 色々考えるものの、ぐぅぅきゅるるる、という自分のお腹の音に思考を邪魔され、苦笑しながら一人喋ってみる。


「とりあえず、腹が減っては戦はできぬ。だわね」


 食べよう。


 縛られたままの手で、食べにくくはあったけれどなんとか完食し、壁の方に押し付けた布団にもたれとりあえず体勢を楽にしてもう一度感知の輪を広げてみる。


 しかしやはり一つの気配も感じない。

 流石に儀式を行う場所は感知阻害か何かのシステムで守っているのだろうけれど……。


 この世界に来て、アーティファクトというものを知ったその時から感じいていた、温かいような感覚のモノがここにはとても少ない。


「アーティファクトがないことが……ここまで心許なく感じるとは…………」


 元の世界では普通だったことなのだけど、自分がどれだけこの世界に馴染んでいたのか、身に染みて感じる……。


「ないなら、作っちゃえば良いのよ」


 今部屋内にある物は………


 牛乳の入っていたコップに乗せてあっただけの紙の蓋、卵の殻、布団とわたし。


 ………………


 コレで何が出来るだろうか………………。


「せめてウェストポーチがあれば…………!」


 打ちひしがれながら、ふと思い出す。


「そういえばあの時切り裂かれたポーチから収納袋が落ちて…………」


 藤騎くんに拾ってもらったんだ!

 じゃぁ水晶龍は大吉さん達と一緒にいる……!


 ドラゴンブレスライカの欠片も収納袋に入っている。龍石の欠片のビーズは研究所に預けてあるから大吉さんがその事を思い出してくれれば…………もしかしたら水晶龍を通じてここの場所が判るかもしれない…………?


 微かな希望が見えるも、やはりこの場からは早いところ離れた方がいい、とわたしはとにかく()()を作ろうと頭を捻った。


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