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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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238. (外伝6)追跡アーティファクト、その力

「さぁ……藤騎といったか、追跡してみてごらん」


 双葉が柔らかい笑顔で藤騎を見た。


「うん、やってみる……」


 藤騎は首から下げたアーティファクトを左手で服の上から握りしめ、五人衆のアーティファクトに右手をかざして深呼吸をし、唱える。


「マーキング!」


 するとピンクの淡い光が五人衆のアーティファクトを覆った。


 よくみると藤騎の左手からも少し同じ色の光がもれてきている。


「……離れた部品……このアーティファクト達の仲間の居所を指し示して……!」


 おそらく、こんな使い方をするのは初めてだろうに、藤騎は的確に指示を出していた。


 大吉は、こんな小さな子にまで頼っているのだな、と改めて自分を情けなくも思うが、藍華の安全が何よりも優先される─

 そう、己の体面は掻き捨てた。


(どうか……)


 祈るようにその様子を見守っていると、五人衆のアーティファクトから一筋の光が伸び始めた。ヨロヨロと。


「伸び始めた!」

「やった……!」

「おぉ……!」

「…………」


 それぞれが感嘆の声をあげたりなどして期待に胸を膨らませるが。


 ヨロヨロ進むその速度はとても速いとはいえず……。


「大吉……ゴメン…………これ以上スピードが出せないみたいで…………」


 涙目となって言う藤騎。


「大丈夫だ……。さっき花子さんも言ってただろ? 少し時間はかかるかもしれないけど、追えるって……」


 そうは言うものの、冷静さを保つために必死な状態の大吉は、不安な顔となってしまっていた。


 闇雲に探すにも情報は少なく、ここで追跡が完了するのを待って、体力温存に努めた方がいいことはわかっている。


 わかってはいるが……


「今のところ……

 藍華さんの……命に別状は感じられません。

 この速度でも明日の朝にはきっとほぼ判明しているはずです…………」


 花子がそう伝えるも、大吉の心のざわつきは治らなかった……。


「そう……か…………」


「少しでも何か手がかりがあれば捜索へ向かうんだが……」


「何かないのか? 大吉……!」


 フェイもアグネスも藍華が一度捕われた先で奴と出会っている事を聞き知っている。


 アグネスは多分何をされたのかも聞いたのだろう……自分と同様に焦る気持ちをアグネスから感じ取った大吉は“手がかり”の言葉に一つ大事な事を思い出した。


「そうだ……。カトレイル教……!」


 焦るとこうも思考は鈍るのか、と大吉は改めて思った。


 確実なのは藤騎の追跡だと考えていて、そちらからも辿れるかもしれないという事を失念していた大吉がつぶやくと、藤騎も続いた。


「そういえば誰かが副教祖とかなんとか言ってなかった……?」


 二人は目を見合わせて頷き


「あぁ……! 田次郎おじさんにも聞けと言われたんだが、カトレイル教について何か知っているか⁉︎」


 大吉は双葉に食いつくようにして聞いた。


「カトレイル教会……」

「あの教団か…………」


 花子が顔を曇らせて教会名を呟くと、双葉も珍しく深妙な顔をして言った。


「副教祖と呼ばれている男が……藍華を…………」


 その事実を伝えるだけで、大吉の心臓は鷲掴みにされたかのような感覚に陥る。


「攫って行った……伏見の稲荷に黒い影を祓ってもらった時にわかったんだが、藍華が悪夢を見てたのも、俺の腰の不調の原因も、やつが原因だったらしい…………」


 双葉と花子には、みなまで言わずとも伝わるとわかっていても、他のメンバーにも伝えるために、大吉はあえてそれを口にした。


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