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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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237. (外伝5)付喪神

「邪魔するぞ! 双葉ーちゃん!」


 そう言って、本殿の扉を勢いよく開く大吉。


「お……お邪魔します……?」


「この神社に、双葉様をばーちゃん呼ばわりして入っていくのも大吉だけなんだろうなぁ」


 藤騎に続き、後ろからアグネスがそう呟くと、フェイが同意する。


「そうだな……」


 二人の言葉に、人前ではそれでも一応気をつけようという気持ちのあった大吉は苦しい言い訳をした。


「俺にとっては近所の口うるさいばーちゃんと同じ位置あいだから……」


 大吉が靴をポイポイと脱いで上がると、拝殿の奥の方から双葉ーちゃんと花子さんがちょうど出てきて四人を迎え入れた。


「どうぞおあがりください、最後の方は扉をしっかり閉めてくださいね」


 花子さんの言葉に、フェイが扉を閉めると、何かのアーティファクトが自動で起動し、社全体が結界に包まれる。


 拝殿中央に座る双葉の所へ集まり、花子に促されるままフェイ、アグネス、大吉、藤騎そして花子の順に、輪になるようにして座ると、双葉が重そうに口を開いた。


「……大変なことになったな、大吉よ……」


 その表情から、双葉と花子は当然のごとく何が起きたのかを知っているのだと分かる。


「……助けが欲しい」


 大吉はストレートにそう伝えた。


「大吉……説明してくれ。何をしようと考えているんだ?」


「そうだ。あたしが移動前の神社で聞いた時は、関係ない者に聞かれてはいけないからと説明なしだったろうが」


 私達は関係ない者ではないだろうと、フェイ、アグネスに言われ、そうだな……と大吉は事の経緯と自分の構想を話し始めた。


 まず、ここに来たのは双葉のあるアーティファクトの力を借りようと思っていたからであること、そしてその力を借り、しようと思っていることのためにはあるアーティファクトが必要で、それを研究所に取りに行ったということを説明した。


「ある特殊なアーティファクトを作るために、神器と同レベルの力を持つと記録の残る、五人衆と呼ばれた者達が使用していた五つのアーティファクトで……修復不可能な状態だった物を再利用させてもらったんだ。必要な部分だけ、な」


「じゃあ……あれか、元は一つのアーティファクトだった物同士、繋がりがまだあるならば、藤騎の追跡アーティファクトで追える可能性があるってことか?」


 フェイの問いに大吉は頷き、話を続けた。


「あぁ……選び出す時も、この五つのアーティファクトの繋がりはとても濃いように見えたし、感じたから……もしかして、と思ってな……。

 藤騎にやってみてもらわないとわからないが……」


 言って、大吉は藤騎を見る。


「僕……やってみるよ……!」


 もし藤騎のアーティファクトで追跡ができなくとも、双葉と花子がいる。ここならば次の手が見つかるはず、と頼ることしか思いつかない自分を情け無いと思っていた大吉だったが。

 焦る気持ちを抑えて、出来る限り冷静に考えた答えがコレだった。


「大丈夫です、大吉さん……。

 藤騎くん……は追えます。時間は少しかかるかもしれませんが」


 花子が柔らかい笑顔で藤騎をみてそう言うと、藤騎は顔をほんのり赤らめて無言で視線を落とした。


「そこで、だ。双葉ーちゃんのアーティファクトに、回顧の力の物があるだろう? それをコレに施して欲しい」


 そう言って田次郎の元から持ってきた、五人衆のアーティファクトの入った袋を取り出し、双葉の前に置いた。


「修復不可能な程に壊れてから随分と時間が経っているから、一つの物であった事をしっかりと思い出せるように……」


「……なるほど……本来は人に忘れた記憶を思い出させるためのアーティファクト『回顧の鎖』をこれらのアーティファクトに使用してみてくれ、と…………」


 こくりと頷く大吉の真剣な眼差しに、双葉はよかろう、と答えた。


 双葉が袋を手に取りそれらを取り出すと、アーティファクト達はそこにいる全員にも分かるほどの()を発し始めた。


「……!……」


 花子は目を見張り、双葉は歓喜の声を上げる。


「ほ! 物凄い意志の力じゃな……!

 付喪神と化しているのかお主達……!」


 双葉の言葉に、さらに何かを発するアーティファクト達。


「わしの力は必要なさそうじゃ」


「……どう言う事だ……?」


「お前に渡され、ここに来るまでに事態を理解したのだろうよ。追跡を掛けた後はこの袋から出すな。危険じゃから」


 壊れたアーティファクトに力はないが、双葉が言うならばそうしておかなければ何か大変なことが起こると言う事だろう、と大吉はうなづいた。

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