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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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227.中央の部屋

「よし、じゃあ二人とも、俺の真似しながら着いてきな」


 先を行く大吉さんの後を多少緊張しながら追いかけて、感知阻害されている部屋の近くで籐騎くんに確認してもらい、ここか? ここではない、というやりとりを繰り返し、わたし達はどんどん奥の方へと進んでいった。


 最奥の部屋の前まで辿り着くと、棚の陰になっている場所で一度息をひそめた。


「藍華、この部屋のアーティファクトの気配は?」


「結界系……おそらく感知阻害の結界がすぐに張れるようになっているだけでまだ起動はしていないです」


「そうか。籐騎、追跡は?」


「……距離が上手くつかめないんだ……この先にあるってことしか…………」


「そうか……。部屋の中に人の気配はないから、とりあえず入るぞ。

 それからまた対策を練ろう」


 大吉さんがそっとノブに手をかけ扉をあけ、今来た通路にも気を付けてくれている間に、わたしと藤騎くんが急ぎ先に入り、大吉さんも最後に入った。


 その部屋は。

 入るとけっこう広い部屋で、正面には反対がわにでるための扉、左側の奥の方には簡素で大きな書斎用デスクと椅子があり、右の方には来客用な雰囲気の三人掛けのソファがテーブルを挟んで向かい合わせになっていて、最奥には一人掛け用のソファがあった。


 壁一面には天井までの書棚のようなものがあるけれどそこにほとんど本はなく、ランプや何やら小さな小物が置かれていて。

 そのどれもがアーティファクトであることがわかる。


 そして、一通り見回して部屋の四隅、天井から吊る下げられているランプの様な物が目に入り、確信した。


「四隅にあるランプが、結界系アーティファクトです。

 その書斎デスク上の同タイプのランプケースに鍵となるアーティファクトを入れると起動するようです……」


 四隅のそれと、デスク上の物が細い光の線で繋がっているのが見え、それの意味と能力を予測してわたしは言った。


「機能は感知阻害以外にもあるんだろうか……?」


「詳しくはわからないですが……中に入れる鍵の種類によっては別の機能も発揮できそうなタイプな感じですね」


 部屋を見渡し、入ってきたドアが目に入ると、ちょうど目の高さの位置に、金属製で鍵穴がレジンに埋められているシンプルで小さなチャームがひっかけられていて、その微かな光から何かの力を持つアーティファクトだとわかる。


 このシンプルなチャーム光がすごい弱いけど…………どんな能力なんだろう……?


 目線を大吉さんの方に戻すと、書斎デスクの後ろの壁の隅、ランプの丁度下に位置する場所に普通のドアより少し背の低い鉄製のドアがあり、そこを開けているところだった。


 そのドアには本物の鍵穴もついていて元は金庫のような役割をしていたかと思われたが、開かれ中を見ると、今はただの物置として使われているのか、もともとコの字型にあっただろう棚の中央と右側が取り外された跡があり、床にはモップの突っ込まれたバケツと箒が置かれている。

 残った棚の一番下には塵取りがあり上の方には大小様々な箱があるのが見えた。


 わたしと籐騎くんが大吉さんの横から一緒に覗き込むと、ドアを開けたことにより動いた空気に乗って埃が飛んだのか少し鼻がむずむずしてくる。


「うわー埃っぽいな、ここ。全然使ってないみたいだけど。ここに何かあるのか?」


 この物置内の物が一様に埃を被っていて、この扉自体がしばらく開けられていないようだ。


「ただの確認だ。いつ何時何が役に立つかわからないだろう? こんな埃被った箒だって、いざとなったら武器になる」


 藤騎くんの言葉に、大吉さんは真剣に答えた。


「へーそういうもんなんだ……?」


 まるで、授業を受けているかのように籐騎くんは大吉さんの言っていることを吸収しているようだ。


「モップと箒は使えそうだな」


 ニカっと笑顔でそういう大吉さんに、それは本気なのか冗談なのか、わたしには判別がつかなかった。


 というか、笑顔にやられてそれどころではなかった。


「藤騎、反応はこの先の方の部屋にあるんだな?」


「うん、だいぶ近づいてるみたいだよ」


 藤騎くんが少し離れ、入ってきたのとは反対側にある扉の方を見て言う。


「藍華、何か感じ取れるか?」


 突然話をふられたわたしは、一瞬反応が遅れるものの、表面だけは真面目な顔を保って答える。


「やってみます」


 意識を扉向こうの通路の方へ向けてみると……


「この先の通路に、普通のランプアーティファクトの気配と……ここに来るまでのと似た感じの感知阻害されてる部屋が一つあるようです」


 そのずっと向こうの方にはアグネスとフェイのアーティファクトの気配も感じた。


 二人も着実にこの部屋の方まで向かっている。


「一つ?」


「はい」


「じゃぁ十字架のアーティファクトはそこだな……籐騎、部屋の前まで行ったら上書きは可能か?」


「する。やってみせる!」


「よし、じゃあ……」


 大吉さんがそう言って奥の扉に向かおうとしたその時。わたし達が入って来た方の扉が、あの鍵穴のチャームを中心に光り始めた。


「……‼︎……」


 光量が増し、扉が動く。


 何かが来る……⁉︎

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