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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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225.本当の理由

「なんで……!」


「連絡の鳥を送ってから一時間近く経つ。時速十キロと言っていたからもう向こうに着いて本来なら返事がこちらに向かっているはずだが……。

 侵入中に戻ってこられても困るから送り返さず特殊部隊に持たせてくれと言っておいたし、彼らなら早ければもうこちらに着く」


「でも……! 奴らがここから移動しないとも限らないだろ……? 特殊部隊が来て、もう移動した後でした、なんてなったら僕……なんとかもう一度あのアーティファクトの近くまで行けない? 数メートル圏内に行けたら接触できなくてもなんとかもう一度追跡を上書きする! 

 強めにかけて外れないようにするから……!」


 その時、わたしのポーチの中からピチチチ、ピチチチ、と鳥の鳴き声がした。


「大吉さん! 来ます!」


「連絡用鳥か⁉︎ 予想より早いし何故……」


 戻ってきた黒い鳥は、わたしが手を差し出すとそこに止まり、ふんわりと光りだす。


『手短に言う。今こちらは研究棟に賊が押し入って神器を奪われてしまい大騒ぎになっている。

 私個人から正式な依頼として頼みたいことがある。藤騎を守ってくれ……!

 特殊部隊も二手に分かれて捜索中だったらしく、この鳥と共にそちらに行ける者が今はいない……』


「なんだって……⁉︎」


『このままでは警察機構に藤騎ごと連れて行かれてしまう……! そうしたら無理やり駆り出されて利用される……!』


 その藤壱さんの必死な声に、わたしの脳裏に一つの事柄が思い浮かんだ。


「もしかして……藤壱さん、藤騎くんにきていた追跡以来を全て断っていたんじゃ…………」


『なんとか日が沈むまでには特殊部隊をそちらに送るから……籐騎を頼む…………!』


 ピピピッ


 藤壱さんの声はそこまでだった。

 鳥はアーティファクトに戻り、くっついた状態でわたしの手の中に残る。


「研究所の結界を突破できるような仲間が奴らにいるっていうことか……?」


 あの強固な結界システムをどうやって? とそう言う大吉さん。


「なぁ……警備隊を襲って神器奪ってった奴がここにいるんだよな……?」


「そうだよ……」


 アグネスの質問に藤騎くんは即答した。


「そしたら……今研究所を急襲して神器奪ってったそいつら、ここにくるんじゃね……?」


 フェイは直行はしないかもだけど、と続けた。


「大吉……追跡者はグループで活動する時、ピンポイントで場所を仲間に教えなければならない……僕……ちゃんと突き止めたい」


 おそらくこのままここから離れるのが一番の良作だろう……それは藤騎くん本人も多分わかっている。

 だから控えめに、おずおずと大吉さんへと話しかけているのだろう……。


「このまま逃げても、警察の人も僕の力を頼りにくるんでしょ……?」


 あの藤壱さんの声の感触からいくと、とてもただの『協力』だとは思えなかったけれど……。


「僕としては、要請されるなら喜んで協力する……でもお父さんはそれを良しとしなかった……。

 それは藍華ねーちゃんも言ったように多分僕を守るため……?

 お父さんが拒否するってことは、きっと……よっぽどフツーじゃないことをさせられるんだ。

 それだったら僕は大吉達と一緒に突き止めたい……!」


「このまま追跡が切れてしまえば警察に協力させられることもないんだぞ?」


「それじゃ最初から追えてなかった、結局役に立たないアーティファクトだって言われる……

 それじゃダメなんだ……僕の未来の為にも!」


「もう一度上書きしたとして、アーティファクト無効化のエリアに入ったらまた追跡できなくなるんじゃないのか?」


「追跡中の力の配分を変える。

 本来僕の持つ追跡アーティファクトが無効化エリアに入らなければ追い続けることは可能なんだ。じいちゃんはそう言ってた!」


 確かに可能なのだろう。けれどそれは使用過多になって倒れてしまう可能性が高くなるはず……


「使用過多になる前に自分で判断してちゃんと切れるか?」


「……」


 籐騎くんは無言で深く頷いた。


「俺は自分の力を過信はしない……。だから俺一人では……藍華と一緒でもそれに賛同することはできない……」


 チラリとフェイとアグネスを見る大吉さん。


「子育てに貢献できるのは良いことだ。俺たちが一緒なら少なくとも安全率は上がるだろう」


「オッケーオッケー! 元々私はそのつもりだ!」


 ふー、と大吉さんは一息ついて言った。


「命が一番大事だ……。

 こちらから手は出さない。もし見つかったら逃走すること。

 特殊部隊が着くまで、っていう指針がなくなってしまったから、詳細な位置の確認と藍華の目的をクリアした時点でそこから離脱する。それでいいか?」


「うん!」


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