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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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224.決意と決断

 やっぱり──!

 手袋の紋章のような刺繍………………!


「藤騎も見覚えがあるな?」


「うん……! さっき見たやつだ!」


「決まりだな……。カトレイル教は、神器クラスのアーティファクトを集めて何かをする気だ…………」


 アーティファクトをしまいながら難しい顔をして大吉さんは言った。


「で……どうするんだ? これから」


「ここから先の案件は特殊部隊に渡すのが一番いいとは思う。確実に賊の……敵のいる場所に行かなければならないから……」


 フェイの言葉へ、迷うように言葉を紡ぐ大吉さん。しかし──


「こんな……目的のアーティファクトもない、アジトもわからないまま僕は帰りたくない……!

 でも一人じゃ無理だから大吉……頼むよ……!」


 藤騎くんは大吉さんが腰につけている上着に縋り付くようにして言った。


 藤騎くんとしては、追跡したものの、それを持ち帰ることもできず、アジトもわからずではお父さんに合わせる顔がない、と思っているのだろう……


「逃げ足なら任せて! もし一人でも立派に逃げてみせるから!」


「人混みの中後ろからぶつかられてこけてたのに?」


「あれは……! 来るって分かってる時とは違うだろ!」


 茶々を入れる大吉さんにムキになって答える藤騎くん。


「……誰に何かあっても見捨てて逃げれるか────?」


 そう言って大吉さんは藤騎くんだけでなく、わたしをも見る。


 問われている──。わたしもそれが出来るのか? と────


「奴らが持ってったなら、ある意味チャンスじゃないか? それは確実に奴らの場所へと案内してくれるだろう?」


「バカ! こんな小さな子供をわざわざ危険な場所に送り込む気か!」


 アグネスの言葉に、フェイが答えた。


「私はただ客観的な意見を述べただけだ。それをいうなら大体闇市への追跡だってダメだろう?」


 意見は二つに割れている。こういったものは多数決で決めるべきではないと思うのだが……全員の視線がわたしに集まり、わたしは一瞬どもってしまう。


「う……本心はわたしも大吉さんと一緒でもう預けた方がいいと思います……思いますが────」


 わたしの中の何かが危険だ。危険だけど行かなければならない、と言っている気がしてならない……


「……いざとなったらちゃんと逃げます……守りの結界もしっかり張りますので……」


「…………わかった。神器並みのアーティファクト持ちが相手だということを覚悟して……行くか……。

 フェイ、アグネス……お前らさえよかったら少し協力してくれるか?」


「みずくさい! もちろん協力するわよ! な、フェイ?」


「しょうがない……殲滅しに行くわけではないんだろ?」


「勿論だ。アジトと思われる場所を確認し、特殊部隊に引き継いだら引き上げる。それでいいな? 藤騎」


「うん!」



 藤騎くんは緊張しながらもワクワクしている表情で頷いた。


「大吉さん……」


 わたし以外が全員、この特殊な事態に向けてそれぞれに心の準備をしているだろう中わたしは一人、段々とハッキリしてくる嫌な感覚の事を大吉さんに告げようと口を開いた。


 みーばぁ、双葉ーちゃん、そして蝶子さんに花子さん達と会ってきて、自分の中の何かが変化した気がする。


「あの盗賊のところにいた人物がソコにいる……かもしれません…………」


 彼女達には到底及ばないし、それがどこからやってくるものなのかはわからないけれど、何かが『ワカル』という感覚だけがハッキリあった。


「アグネスとフェイもいる。もし嫌なら……来なくても大丈夫だぞ……?」


 これから行く場所にアイツがいるかもしれない、それを感じただけで体の奥底から嫌な震えが上ってくる。


「できることなら二度と会いたくも見たくもないです……けど……彼の持つ情報から何かを知らなければならない気がするんです……」


 扉、あちらに戻るチャンス、あの人が言っていた言葉の意味を知らなければならない気が、わたしにはしていた。


「だが今回は──」


「分かってます。遠目に見るだけで……。

 何か感じ取れるか試してみます」


 双葉ーちゃんは言っていた。直接会えば何か感じ取れることもあると。


「それでも足りないのならまた別の策を考えます────」


「……わかった……退路だけは絶対に確保しながら慎重にいこう……」


「はい……!」


 わたし達は、ひとまずこれまでの経緯と向かう大体の場所を、声と手紙で黒い鳥に託して送り、藤騎くんの案内のもと、ソコへと向かった。


 着いた場所は下町から少し外れた川沿いで人気はなく、廃倉庫のようだった。


「ここか?」


 わたし達は鬱蒼と茂る木々の合間からその倉庫を見ていた。


「うん。この奥の方……地下……かな。

 ここからの距離は五十メートルくらいだと思うんだけど…………」


 外側からは完全に廃墟に見える。


「暗くなって明かり用アーティファクトがついたら奴らの場所もわかりやすそうだな……」


「待って、大吉……。多分感知されないためのアーティファクトと、アーティファクト無効化の結界が使用されてる……。

 追ってる気配が揺らいでて完全な場所の特定ができないしこのままだと追跡が強制終了させられる……!

 今も、もやがかかってるみたいで……。十メートル……いや二十メートル単位の誤差が出てるはずだ…………」


「そりゃ……いよいよ確実になってきたな……。

 ならば、藤騎はここまで、だな。アグネス、フェイ、こいつ連れて研究所まで行ってくれるか?」


「なんで……!」

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