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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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220.それは神器並のアーティファクト

「特に兄ちゃんの着けてるブレス、相当だ……」


 このおじいさんも視える人か……!

 って……大吉さんのつけてるブレス……? 身代わり護り?


「……と思ったが……んん…………?」


 何やらどもる店主に、大吉さんが急かす。


「で、どうするんだ? 悪いようにはしないぞ? この件に関しては足が付かないようにも気をつけてやるから〜」


「ぐ……お前さんその手の関係者か……⁉︎

 どうりでそんな小綺麗なガキ連れて、平然とこんな所にいやがる……」


 そう言うと店主は押し黙り、


「しょうがねぇ……いいだろう。その三点で五十きっかりな!」


 サービスで、アーティファクトの力が外に漏れない袋をつけてくれた。


「あんまり質のいいやつじゃねぇから、あんまり強いやつは隠せねぇ。気をつけろよ」


「あぁ、ありがとうなー!」


 店主にお礼を言ってわたし達はその場を離れた。


「こっちだ」


 大吉さんに連れられて、人気の無い路地裏へと入る。


「藍華、結界を……と、あれって二か所で出現させれるのか……?」


 そうだった。今アルジズは呪いのアーティファクトにかけている状態だ。電池式で半分自動で保っている状態だけれど、二箇所に出現できるかはまだ試していなかった。


「多分大丈夫な気がします。試してみましょう」


 ほんと、なんとなくだけどそんな気がする。


 両手を合わせてわたしはその名を唱える。


「アルジズ」


 すると、わたし達はいつもよりは薄い光でできた球体に囲まれた。


「長時間は無理みたいです」


 感覚と、結界の状態から考えてそう告げると


「大丈夫だ。そこまで時間はかからないだろう」


 そう言って大吉さんは購入した物を取り出した。


「これが、藤騎のマークしたアーティファクトで間違い無いんだな?」


「そうだよ」


「見せてもらってもいいですか?」


「あぁ」


 わたしは気になっていた事を確認するために、それを手に取りじっくりと見てみる。


 メガネ留めの千切れた十字架のロングネックレス。

 白いパールは天然のパールだろうか、物自体の輝きこそ翳ってきてはいるようだけど、それ自体がアーティファクトとしての力を持つようで、光を感じる。


「ん……この部分なんだか汚れが……」


 トップの部分は、金色の十字架をコイン型レジンに埋めたタイプのもので、表面に銀色の汚れのような物が付着していたので全部ではないけれど軽く手で拭って確認してみた。


 もしかしたら元々は空枠についていた物かもしれない……


 何故なら、汚れを取ることで見えてきたのだが、ペンダントにするために開けられた穴の処理が、キチンとされていない事が見て取れる。


「無理やり穴を開けてペンダントにしたみたいですね……この子……かわいそうに…………!」


 もしかしたら、作品の雰囲気のためにわざわざそういう風にしたのかもしれない、とも思ったけれど……その部分から力が少し弱まっているような雰囲気も感じたので、そうではないと判断。


「そうなのか……?」


「落ちた分の力を天然のパールを使ったネックレスで補完しているようです」


 その采配は素晴らしいのかもしれないアーティファクトとしては。


 でも────


「そうか……」


 わたしがその処理方法に憤りを感じ、それを抑えようとしている時、大吉さんは藤騎に伝えた。


「藤騎。残念だが、これは盗まれた神器ではない……」


「えぇ……⁉︎

 僕は確かに神器を狙ってマークしたはずなのに……!」


「マークした時、神器を目視したのか?」


 大吉さんは、非難しているのではないと判るように、柔らかい声で諭すように聞いた。


「……してない……光の強さで判断した……

 だって、そいつの持ってた二つとも同じくらい強い光だったから……!」


「この子は多分……神器と同等の力を持ってます……。アーティファクトのその光だけで判断したなら間違ってもしょうがないくらいの…………」


 この事態は、藤騎くんが神器を運び出す前からマークしていたら防げた事態だ。実際昔はそういうふうに盗難予防、対処をしていたのだろう……。

 けれど今は、年齢制限や諸々の縛りで事前に藤騎くんに依頼することも不可能。

 だから──藤騎くん自身のミスではない……。


「……じゃぁ、これは間違いなく犯人の持ち物ってことだ。

 ある意味お手柄だぞ?」


 その言葉に藤騎くんは大吉さんをみて顔を明るくする。


 よかった──


 藤騎くんの表情を見た後、再びネックレスに目を移すと、あることにわたしは気がついた。


 あれ……このパールの部分…………


 ネックレスに使われているパールの中で、一粒だけ光り具合が違うものに気づいてそのパールにだけ集中し、発動してみると────


 何やら紋章のようなものが中空に赤い光で浮かび上がる。


 アレ……このマークどこかで見たような…………


「コレは…………!」


 大吉さんは驚いたような顔をしてつぶやいた。


「何か知ってるんですか? この紋章……」


「さっき露店の店主も言ってたが、カトレイル教団と言う名の宗教団体の紋章だ…………

 広く一般に知られていて、再生の日以降発足した宗教だったはずだが、ここ数年で特に影響力を拡大してきた組織だ」


「神器並みのアーティファクトを所持できる機関……ですか……」


 わたしの言葉の後、大吉さんは難しい顔をして藤騎くんに言う。


「…………ここから先は任せたほうがいいだろう。

 とりあえずコレを研究所まで持って帰ろう。そしてそこで藤騎の仕事は終わりだ」


「……うん……」


 盗まれた神器ではなかったということで、藤騎くんの気持ちは明るくなりきれないようだったが、それでもお手柄だといった大吉さんの言葉に救われたようで、静かにそう言って頷いた。


「それ……研究所まで僕が持ってもいい……?」


 特殊部隊に入ったなら、奪われた神器を取り戻したなら、それを研究所まで持ち帰るのが僕の仕事になるから、と藤騎くんは大吉さんを説得し


「……闇市を抜けてからなら、な……」


 反対していた大吉さんは、そう言って折れた。


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