020. 市場でいただいた物
両腕に下げた袋は重くはないが、かさばるので少し歩きにくい。大吉さんなんか、腕に食い込むくらいの物を下げているので、あまり遠くに行くのはあれだと思うんだけど。
「よし、ここらならいいだろ。座るか。」
川沿いの、船着場とは反対の市場から少し離れたところに向かって行ったら、緑むす空き地と、所々に瓦礫とがあって、ちょうど腰掛に良さそうな瓦礫やら廃材やらが転がっていた。
「沢山もらっちゃいましたね。」
ほぼ支払いなしにいろんな食材を渡されていた大吉さん、ネギやらジャガイモやら、様々なものを抱えていた。
「本当にな!
みんな俺なんかにタダで色々わたし過ぎ。」
苦笑して話す。
「そして、その分ボランティアとかなんかで街の人たちにお返しするんでしょ?」
街の人たちとのやりとりでなんとなくそう感じた。
「まぁな。。」
頬をポリポリとかきながらゴソゴソと荷物を足元に置く。
先程買ってもらった大吉さんオススメのものは。
オニギリ。
「米は今でもよく食べられるんですか?」
「あぁ、主食だ。船でもうちょっと内陸に行ったところにも田んぼがあるし、北の方に行くともっと沢山作ってるところがある。」
帰ったら地図があるか聞いてみよう。
今の地形や何がどこにあるかって興味がある。
東京の街はあまりよくは知らないけど・・・
パクッと一口。
シンプルな塩握り。
「美味しい・・・」
炊飯器と釜で炊く米は旨さが違うというけれど、それだろうか?
「だろ?
売り子の親父の手作りなんだぜ?それ!
俺なんかガキの頃からお世話になってるんだ。」
大きさがコンビニおにぎりの3倍くらいあるのもイィ。
なんか、人と人の関係が暖かく感じるのは気のせいではないだろう。
ここに来る前のわたしの生活は、一人暮らし向けアパートにご飯はコンビニが主。人との関わりなんて、大家さんと会社の人たちくらいだった自分。きっと神様という存在があるのなら、人との関わり方も知りなさい、というお達しなのかもしれない・・・・・・
少なくとも、大吉さんとはこれまで生きてきた中で1番“関わって”いる。
塩茹での枝豆を途中でつまみながらおにぎりを完食。
あと鳥の串焼きに味噌汁?と発泡系の飲み物。
味はジンジャエールに近い。そしてジンジャーが強めだ。
「そういえば。甘味はあまり見かけない感じですね?」
先ほども話していたけど、そこまで手に入りにくいのかと思って聞いてみる。
「砂糖はな・・・・・・かなりの貴重品だ。
ずっと北の方かずっと南の方に行かないと手に入らない。
今の時期的には南の方に行くと手に入る可能性は高い。
うちはまだ蓄えがあるから大丈夫だが、腐るものでもないからな、安い時期に多めに買っておきたいものではある。」
なるほど、時期にしか取れず競争も激しそうだ。
温室とかはやってないんだろうか。
廃ビルとか多そうだし、処理ができたらビニールハウスでも結構行けそうな気がするけど。
おそらく純粋な電化製品はほとんど残ってないんだろう。そういえば車は1台も走っているのをみていない。
自転車やキックボードはよく見る。
バイクは2台くらい見ただろうか。。
意外なのは電動キックボードらしきものもあること。
まぁ動力は冷蔵庫なんかと一緒でアーティファクトかレプリカなんだろうけど、もしくは太陽光発電??
大きな発電所などの発電機能は残っていないけれど、機械等を動かすのが電気からアーティファクトに変わっただけで、機械系統のものは残っている、という感じらしい。
いい意味で環境に優しいんだろうか。。
たわいもない話をしながら無事完食。
いただいたものが、半分ほど胃袋に収まってしまったことがオソロシイ。




