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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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208. 怪奇? 振動して光る元神器達!

 そこにはさまざまなアクセサリーや飾り、置物が大量に並んでいた。


「……!……」


 大吉さんが驚いた顔をしてフラっと進んでいった先には。


 ケースの中に飾られている何やらワイヤーで作られた木のようなものが。


 あれ……これってどこかで…………


「これは……有名な神社にあるはずの…………桜の木の置物じゃないか……?」


挿絵(By みてみん)


「よくご存知で……。今現在神社にあるのはレプリカです……そうそう使われることもないということで、レプリカを置くことになりましたが……これは花と木と両方揃って最大の力を発揮するものなのでひとまずここに収められているのです」


 言いながら入口の扉を閉める藤壱係長。


「大吉さん見たことあるんですか?」


「直接はなかった……が…………藍華は何か見覚えないか……?」


 わたしに見覚えって……ぇ…………


「も……もしかして碧空作品ですか……?」


 こくりと頷く大吉さん。


 そういえば見たことあるな……マグネットピアスをくっつけれるピアススタンド〜!


 とSNSで見た記憶が…………。


「その可能性が高い、とは言われてますが、定かではないですよ。これには碧空の印が入ってませんから。

 まぁ、その力は碧空作品に見劣りなく、だからこそ神器とされたんですがね」


 聞くと、桜の部分だけ盗まれてしまい力を失ったため、レプリカのなかで一番力の強い物が代わりに置かれたのだとか。


「さ。早く選んでください。急いでいるのでしょう?」


「わかってるよ。藍華、何か感じ取れるか?」


「やってみます」


 二、三回深呼吸をしてから目を閉じる。

 コレだけの量のアーティファクト。一つづつじっくり見ている時間はない。


 透明度の高い子、新しく生まれ変わってもいいよという子、いる────?


 俊快さんみたいに声が聞けたらいいのに、と思いながら語りかけてみる。


 すると────声は聞こえないけれど、静かなこの空間の中に、暖かみを感じる場所があることに気づく。


「こっちです」


 わたしは迷わずその方向へと向かった。


「この箱の中身が気になります」


 感じていた場所は金庫室の一番奥の方、そこにある天上までの棚には、様々な壊れたアーティファクトが置かれていて、ちょうど目の高さくらいのところにある箱を指してわたしは言った。


「この壁際のスペースは神器の中でも役目を終えたと呼ばれる物が置かれています。力の欠片も残ってはいませんが……。

 その箱はかつて五人衆と呼ばれた伝説のアーティファクト使い達の使用していたと言われる物です」


「そうですか……」


 どういう経緯かはわからないけれど、人に協力して頑張ってくれて、そして壊れてしまった子達なんだ……そう思うと胸が痛くなる。


 中を見てみると、砕けた透明な欠片や、カボションの剥がれ落ちたりしている物もある。


 五人衆というだけあって、おそらく五行の流れを汲んだ力のものだったのかな…………

 君たちの中から力になってくれる子がいるの……?


 心の中でそう問いかけると……


 まるで箱自体が光り輝いているかのように、光りだす。


「「……‼︎……」」


「……なに……⁉︎」


 藤壱係長からも驚愕の声がもれた。


「これは一体…………‼︎」


 何の力ももたぬその箱の中身が光りだしたことに、藤壱係長は困惑しているようだった。


「この空間は通常の神器でさえ使えなくなるよう結界が施されているというのに……! この光量は一体…………⁉︎」


「俺にも見えてるからよっぽど強い光なんだろうとは思ったが……そんなに強いのか?」


 藤壱係長よりはずっとのんびりした口調だけど、それでも光が見えること自体に驚いているように大吉さんが言った。


「かなり強いです。全開で見ると眩しくて直視できないくらいには……」


 これはもしかして…………


「もしかして……全員連れていけと…………?」


 アーティファクト相手に個数ではなく人を数えるように言ってしまうのは。わたし自身がもうただの()だと思っていないからだろう。


 箱の中身、全部あったら余裕でドラゴンブレスライカが二つは作れそうだけれど……


「全員が一つのものになるわけではないけど良いの? 作り変えられることで君達個人の意思の様な物はこの世から消えてしまうかもしれない…………それでも…………?」


 そのためにここまで来ておきながらまだ迷うわたしの背を押すように、

 まるで──その質問に即答するかの如く、光はさらに強くなった。


「わかった! お願いしてみるから……!光を収めて……!」


 さすがに目を開けていられなくなったわたしが言うと、光はみるみるうちに収まっていき、消えた。


「…………ということなんですけど……良いですよね?」


 わたしは笑顔で振り向き藤壱係長を見る。


「…………」


 苦い顔をしながら、箱とわたしとを交互に見て、彼は言った。


「所長に確認を取ってからなら……」


 こんな部屋の奥の端に置き、完全に壊れてしまっているこの子達。第一研究所としても持て余してはいたのだろう。渋々、といった感じに係長はそう言うと、返事を聞いてくるから少し待て、と言って金庫室から出ていった。


「それだけあったら龍石と水晶龍の分と二つとも作れそうだな」


「そうですね……ただ作るのに必要な他の資材が、今のわたしの手持ちでは一つ分しか作れないので……っていうか、残ったら返さなくてはいけないのでは……?」


 わたしがそういうと、箱が光り震え、カタカタといいだした。

 その音が。雰囲気が。

 無言だけど無音じゃない抗議のようで、何か不思議な圧のようなものを感じる。


「……頼んでみるから……大人しくしていてくれる……?」


 箱を覗き込みそういうと、再び静まるアーティファクト達。


「……なんだか……怪奇! 振動して光る元神器達! って感じだな…………」


 カッタン!


「「⁉︎」」


 箱ごと動いて音を出すアーティファクト達に、思わずビクッと反応してしまうわたし達。


「声は聞こえないけれど……。会話が成立してますよね……」


「お前たち。あんまり荒っぽい事件はごめんだからな」


 大吉さんが箱を睨みつけながらそう言うと、感情の色のようなものが数種類見えた気がした。


「あ、意見が分かれたみたいです。荒っぽいことが好きな子と、そうでない子……?」

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