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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
193/343

192.よろしくね

「もう少し離れて、藍華は力の流れをよく見てろ」


 俊快さんはそう言いながら、石膏龍石から少し離れた位置に立ち、先程とは違うタイプのアーティファクトを懐から取り出した。

 それはシンプルなマクラメ編みで包まれているペンダントで、俊快さんはそれを三重くらいにして左手に持つ。


 包まれているのはレジンで作られたコイン型のパーツで、中にはワイヤーで飾られた何かのビーズと魔法陣のような模様。そして虹色に輝くホロが散らばっている。



 挿絵(By みてみん)



 二人して一歩下がり、わたしは言われた通りにそのアーティファクトの力を感じようと意識してみる。


 俊快さんが両手を合わせ集中し始めると、アーティファクトが淡く光り出した。


 十数秒後、しゃがみこんでぐわしっと金属の塊を片手で掴むと光は塊に移り輝きを増し、光の強さが安定してきた時、持ち上げた。


 置いた時の音から、かなり重い物だと思ったのだけれど、軽々と持ち上げてるあたり、アーティファクトの力で軽くなっているのだろうか……?


 そんなことを考えていると、俊快さんはそれを石膏龍石の真上へとそれを持っていき、おもむろに手を離し落とした。


「……!……」


 普通ならば当たって石膏が砕けるだろうと、その衝撃や音などを覚悟して思わず体が固まるが、光る塊は石膏に触れるなり、まるでスライムにでもなったかの様にトロリと石膏龍石を包んでいった。


「……すごいな……」

「はい……!」


 感嘆の声を上げた大吉さんにわたしはすかさず同意する。

 このアーティファクトを借りて、龍石の形を変えるのか……と思い、わたしは瞬きもせずに観察した。


 俊快さんは用意していた二つを使い、龍石全体を覆った。

 そして最後の一つは、どうやら厚みを持たせるために使用したようだ。


「レプリカ制作アーティファクトで作るより本来の工程で作った方が気合が入るんだがな。

 藍華ののレプリカを製作する姿を見て……出来上がった物を見て…………考えが変わったよ。どんな作り方しても良いものは良い」


 そう言った俊快さんの額には汗が浮いていて、疲労の色がうかがえる。


「出来るだけ硬い真鍮の塊を選んできた。厚みも持たせたから余程の高熱にならない限り大丈夫だろう」


 そう言いながらわたしのところに来て、手にしていた首飾りを渡す。


 受け取ったわたしは、そのアーティファクトをじっくりと観察した。


 ワイヤーで飾られたビーズはわたしの知らない物だった。それは、少し暗めの砂っぽい金色でゆらめいているような枠に、赤や青、緑の半透明な部分がまるで水面かのように埋まっている。


 それは、天然石のようでいて違うような雰囲気を受けた。


 ただ、それが主となって変形させるための力を持つのだ、ということも感じて理解した。


「中の石膏もこれで変形させて出せばいい。……お前さんなら一発で成功するだろう……そいつの特性をよく感じ取って使ってやってくれ」


「はい……!」


 真鍮の皮を被った石膏龍石を逆さまにして固定するため、大吉さんが外の竹林から数本の竹を取ってきて、

 俊快さんと二人で、サイズを合わせながら固定する台を組み上げた。


 わたしはその間アーティファクトをじっと眺めたり、手で覆って感じようとしてみたりしていた。


 自前のアーティファクト程ではないけれど、何かは感じる。少なくとも嫌われてはいないだろう、ということも。


「よろしくね……」


 組み上がった台に、棒人間のオマージュアーティファクトで持ち上げ逆さまにし、そっと下ろす。

 できるだけぐらつかないよう、作業シートとして使っていた風呂敷をクッションがわりにと、俊快さんがかませてくれた。


「……やります……」


 俊快を真似て、三重にした紐を左手の親指にかけ、手を合わせる。


 もう一度心の中で、力を貸してくれてありがとう、よろしく、と語りかけてしばらく間を置いてから言葉にする。


「発動」


 手に持つアーティファクトはふわりと輝き、そこからおおきな光の球体が飛んでいった。


 光は吸い込まれるように石膏龍石へと入り、石膏が光り出したかと思うと、明らかにその表面が変化をした。まるで粘度の高い水分がそこに入っているかのように波打ったのだ。


「ありがとう……」


 笑顔で光り続ける手に持つアーティファクトに語りかける。

 そしてその石膏を出すのに、オマージュアーティファクトをプラスで発動させた。


「発動……。石膏龍石をその中から取り出したまへ」


 まるで意志を持つスライムのように。真鍮の型から出てくる石膏。


 そのままパコっと出てくる想像をしてたけど、流体だとやっぱりこうなっちゃうのか……。


 そのままの形で出せれたなら良いな、と考えていたのだけれど、なかなか思う通りにはいかないものだ。


 ならば──


「藍華、全部出たぞ」


 大吉さんに、全ての石膏が出たのを確認してもらい、わたしはその石膏を残しておいてもらった風呂敷の上に下ろす。


「あなたの好きな形にして良いよ」


 俊快さんからお借りしたアーティファクトにそう語りかけると、アーティファクトと石膏を包む光が呼応して細かく震えるように光が強くなったり弱くなったりする。


 数秒後。石膏の形は迷うことなく変化していき。


 出来上がったのは────


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