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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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188.指輪たちの意思

「指輪が言う……?」


 ポーチに入っている指輪は二つ、これまで使っていた物と、今朝作ったばかりのレプリカ製作用アーティファクト……


「オレの知るどのレプリカ製作用アーティファクトよりも若くて力の……応用が効くヤツだ」


 今朝作った方だ


「素材を活かす作り方でやれ、とひたすら叫んでるぞ……うるさいくらいに」


 素材を活かす……それはまるでここに来る前に作っていた時のような……


 何かが頭の中でつながった気がした。


 現在の言い方だと、レプリカを作るという枠に入るこの作業だけれど──


「『レプリカ』ではなく『アーティファクト』を作るイメージ……とでもいうんでしょうか……?」


 そう呟いた瞬間、まるで返事をするかのようにポーチから漏れ出る強烈な赤い光がわたし達の目を焼いた。


「「「「……‼︎……」」」」


 もう大丈夫かな、と恐る恐る薄く目を開いてみると、全員すぐに目を閉じていたようで、誰も目に異常はないようだった。


「大体正解……だそうだ」


 俊快さんが不敵な笑顔でこちらを見て、そう答えた。


「そして、最後の工程で銅像からトレースする際、自分のことは龍石の中身を、記憶や能力をトレースするのに使え、と言っている……」


「どういうことだ……? 形と、中身とを別々に精製することは不可能なはずだぞ? 同時に精製しなければ力を持たない物が生まれる。幸い資材として再利用は可能だろうが……。随分昔の研究からも判明していることじゃないか?」


「…………」


 田次郎さんの言葉に大吉さんは押し黙り、わたしは何をどうしてどうやって、と作業工程を思い浮かべ────


 ちょっと待って。


 最後の工程では形と中身と両方を同時に作り上げなければならない。


 子が言っているのは────


「──お二人とも、口は固いですよね?」


 そう問うわたしの顔をじっと見る大吉さん。


「俺は、研究所所員だ。普段から研究中のものを外にもれないようにしなければならないし、基本的に口は固いぞ」


 なるほど、たしかにそうか、と

 そして、チラリと視線を俊快さんに送ると……


「オレは……黙っていてくれ、と言われればそうするし基本的に山に篭ってる。話そうにも相手もいない」


「おま。まだそんな生活してるのか……? 悪いこと言わないから早く嫁さんもらえ……? 反抗期だろうがなんだろうが、子供は可愛いし。例え尻に敷かれようとも、良いものだぞ? 嫁さんて」


「街に降りて暮らしたい、て思えるような女か、山ででも一緒にいたい、て言ってくれるような女じゃないと無理だな」


 ブスっと不機嫌な顔をして田次郎さんの言葉に答える俊快さん。


「結婚とか言うものは人に言われてどうにかなるものでもないだろう。勧めるのは良いが、無理矢理はダメだろ叔父さん」


 もっともな大吉さんの言葉に、ゴホン、と咳払いひとつして俊快さんが続けた。


「……ま、そう言うことで、口外するなと言うならオレはしないから、安心してくれ」


 二人の言葉にひとまず安心し、大吉さんと目を合わせてから、わたしは言葉を紡ぎ始めた。


「俊快さん、もしかして……わたしが複数のアーティファクトを同時使用出来ることをご存じで…………?」


「知ってるというか、そいつらが言っているからなぁ……」


 やっぱり……!


「それは本当か⁉︎」

「おじさんは黙ってろ」


 田次郎さん大吉さんに瞬殺。


「俊快さん、お聞きしたいことがあります」


 わたしはポーチから二つの指輪を取り出し、今朝作った子とこれまで使ってきた子を取り出す。


「この新しい子が言ってるんですね? 自分のことは龍石の中身をトレースするのに使って、と」


「そうだ」


「……藍華、ちょっとコレ……」


 大吉さんに呼ばれてそちらを見ると──

 今度は大吉さんの持つ龍石に預けていったトウマの指輪が淡く光り出していた。


「大吉さん、その指輪……」


「光ってる……よな……?」


「どうやら、その指輪もお前さんの力になりたがっているようだな」


 指輪を渡され手に取ると、ふわりと香る何かの花の香りに、流れる水のイメージが突然湧いてきた。


「俊快さん、シートが水に濡れても構わないですか?」


「大丈夫だ」


「どんな能力か解ったのか?」


 大吉さんの質問に、彼の目を見ながら答える。


「はい、多分……。

 花の香りと水のイメージがしたので、多分水を呼ぶ能力は確実に」


 わたしにアーティファクトの声は聞こえないけれど、受け取ったイメージを逃さず受け取りたい。


「わたしがコレまでやってきたレプリカ作業は、龍石のように複雑な形をした物はなかったので、とても不安だったんですが……この子が手伝ってくれるようです」


 左手に乗せた三つの指輪を、右手を被せて包んで目を瞑る。


「龍石の形を写すのに空気をイメージしようと思ってたんですけど……この子が手伝ってくれるのなら…………」


 するとさらに脳内に現れてくるイメージがある……


「まずこの子、仮の名前としてトウマの指輪と呼んでおきますが、この子で水を呼び龍石を包みます。

 包んだあとに、新しい子とその水で形をトレースして石膏に写すことが可能なはずです」


 目は瞑ったまま、次々と流れ込んでくるイメージを逃さず拾って言葉にしていく。


「そして──そこから先は先程俊快さんのおっしゃったように────」


 わたしの受け取った映像のようなイメージはそこまでだった。

 まるで龍石とトウマの指輪が話しあってきたかのような……

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