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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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183.気になる力、試してみよう

 わたしが話し終えると、大吉さんはできた指輪を手に取って、ながめながら言った。


「……試してみてもいいか……?」


 その瞳と声色には好奇心の意志が宿っている。


「……はい……!」


 映像も音も反転した状態ではなく記録するDVDなら、しかも書き換えも可能なDVD-RWなら……再利用が可能なはず。


「いくつあっても困らない、あった方がいい物。

 藍華、何か欲しいものはないか? 俺が持ってるアーティファクトの中から」


 言って、わたしの方を見る。

 見られたくらいじゃもぅ赤くはならないぞ、顔。


 と気合を入れ、真顔でその瞳を見つめ返しながら考える。


「そうですね……時計……?」


 スマホは今手元にないし、大吉さんと別行動取ることになるとも思ってなかったので、ないと地味に不安感のある時計を、わたしは選んだ。


「コレだな」


 そう言って、大吉さんはベルトチェーンの先に付いている例の時計を取り出した。(第一章 7話参照)


 まさか。この、自らの失敗作でレプリカを作ることになろうとは…………。


「……ハイ……」


 複雑な心境のまま返事をする。


 もしかしてホコリまで再現されるのだろうか……?


「じゃぁ、さっき出してた資材から金色の粉、もらっていいか?」


「勿論です……あの」


 自らの資材袋から必要そうな物を取り出す大吉さんに、質問しようとすると、


「俺が作ってみてもいいか?」


 そう嬉々としながら答えた。


 手持ちのレジンがまだあるのでそれも渡し、着々と作業を進める大吉さんを見守って、作業が無事完了すると──結果は大成功。

 現物と遜色のない。シートの曲がり具合から、ホコリまで見事に再現してくれていた……。


「……スゴイ……! ホコリも黄変の具合までもソックリです……!」


 大吉さんの作ったソレを受け取りしっかり観察してからわたしは言った。


 元となった物と遜色のない『感覚』が、何故かハッキリとわかる。

 起動させてみても、今のところ違いはわからない。


「じゃ、それは藍華のな。

 なんていうか、これまでのと手応えが全く違うな。

 俺にもわかったぞ」


 興奮気味にそういう大吉さんの顔がキラキラ輝いてまるで少年のようでカワ……


「ありがたく頂いておきます」


 暴走しそうになる意識を引き戻し、笑顔で言葉を捻り出す。


「しかし……よく気づいたな、ソレがレプリカ製作用アーティファクトに使えるって……」


 手から新レプリカ用アーティファクトを外し、差し出しながら大吉さんは言った。


 受け取りながら指輪をじっと見つめる。


 光抑えた今でも、見ようと思えば見えるその内包する力の強さ。やはり思った通り、再利用が可能のようだ。


「大吉さんからレプリカ製作用アーティファクトの話を聞いた時から気になってたんですよね。初めてレプリカを作った人は、どういう風にソレに気づいたのかなーって」


 大吉さんの説明では、背面が鏡のようになっているか、鏡面を持つ資材が入っていることが第一条件で、何故かそこにこのダイヤ型を模している金属プレートが入っているとなお良いと。


 そしてそこに別の資材が入っていてもある程度はレプリカ製作として使用できるが、無い方がより良い物が作れる、と。


「できる限り簡単に、力は劣っても沢山のアーティファクトが必要な時があったんだと思います…………。ソレがレプリカを作るためのアーティファクトの発見当初で、そこに使われていた物が鏡、もしくは鏡のような物だったとしたら……


 この鏡タイプのレプリカ製作用アーティファクトは、おそらく質が高くなくても、量産したい場合には適しているんです。

 鏡という、どんな人にも身近な物なため、適応率は高く、扱える人も多い」


 割れてしまったCDの破片を入れられた作品や、鏡や鏡質の破片の入った作品、底の部分を鏡のようにした作品もたくさんある。


「そして扱える人の中でも、的確に、もしくは本能的にその本質に気づいている人がレベルの高いレプリカを製作することが可能……」


 はじめは本能的に。だんだんと考えていくことによって、ハッキリしてきたその技術の輪郭。


「そして多分そこからレプリカのこれまでが決まったんですね……レプリカはオリジナルの力の半分だと。

 鏡面のものがトレースの能力が高いのはわかります。でも鏡に映るものは反転してしまう……。

 力が半減してしまう理由は多分ソコです。反転して写し取った物をまた反転して出力する、その過程でレプリカに何が起こっているのかまでは本当想像でしかないんですが……」


「…………その反転にエネルギーがかかることで本来の力を損なうのでは……とかなんとか言いそうだな、おじさんなら。

 なんとなくわかるぞ……スゴイな…………!」


 大吉さんは元となった彼のアーティファクトとわたしの作った物を見比べて感嘆の言葉をもらすが、


「じ……実際にそうなのかどうかはわかりませんよ……! そう思ったってだけですから……!」


 鏡は精巧に反転して映し出す。

 CD-Rは音楽を記録することに使えば物凄い性能のものになったのだろうけれど、レプリカ製作に使われると、鏡と同等以下の力にはなっているはず……


「トウキョウに戻ったら…………俺にも作ってくれるか…………?」


「……勿論です……!」


 オソロイ……!!


 脳みその中がピンク色に染まりそうなのをひたすら引き戻しながら伝える。


「た……多分ですけど、これまでの物でレプリカを作る時にも、その反転して反転しているっていうことを念頭にやったら質が上がると思います……」

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