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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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167.知らずとも、願いをかけておいて行く

「…………龍石の許可は得ました。

 この子を連れて行けます……」


 足の方に立つ夕紀美さんと、わたしを抱えて覗き込んでいる二人を交互に見て、わたしはそう告げた。


「夕紀美さん、ポーチの中から小さい缶を出してもらっていいですか……?」


「わかった」


「大吉さん、わたしの足首に付けてる予備の身代わり守りを取って、龍石の手の所につけたげてください」


 手に付けているものを主として、足の二本は交換する間がなくともすぐ使えるように、の予備。


「おぅ……」


 わたしをゆっくり、そっと下ろして足の方にまわって残り二本のうちの一本を外す。


 心頭滅却すれば火もまた涼し!!!!!


「藍華、コレか?」


 入れ替わるようにわたしの頭の方にやってきた夕紀美さんは、大吉さんが龍石の手に身代わり守りを付けに行ってる時に缶をポーチから取り出して見せてくれた。


「はい。その中から、少し……龍石達の首飾りと似た雰囲気の指輪が入ってるんですけど……わかりますか?」


 指輪は全部で五本入っているけど、ドラゴンブレスに似た雰囲気といえば、それ一つしかないから多分すぐわかるはず


「これか?」


「ソレです!」



挿絵(By みてみん)



 それは楕円形でカット入りのカボションが入っていて、その内側にラベンダーがかかった淡いピンク色がとても美しい、とてもレジン製とは思えないほどのクオリティのものだった。


 もし、水晶龍をここに連れてきて……首飾りを作ったのが、彼女ならば…………龍石の力になってくれるかもしれない。


「それを龍石のどこかに引っ掛けれないですかね……?」


 て部分の先か、ツノのように見える部分かなら、引っ掛けれるような気がする。


「ところで、藍華はこれがどういう能力か知って……?」


「いえ、これからゆっくり試してみようと思ってたんでまだ……。ただ、もしこれが首飾りを作ったのと同じ人が作ったものなら……龍石の力になってくれるかもしれないと思って……。

 大丈夫だと思います……?」


 夕紀美さんはまだ鑑定アーティファクトをつけている。それがどういう能力を持つのか、見ようと思えば見れるだろう。確認してもらって龍石にそぐわなそうだったら、やめてもいいかと思って聞いてみたが、


「……いいんじゃないか?

 龍石も嬉しいだろう……」


 大吉さんが身代わり護りをつけ終え戻ってくると、柔らかく微笑んだ夕紀美さんは、そのまま龍石の角にあたる部分に乗せてくれる。


 そして水晶龍は自分の小さな座布団の上から静かにその様子を見守っていた。

 じっと声も出さずに…………


「これでいいか?」


「はい。あ……夕紀美さん、龍石のヒビの所に、すぐ取れてしまう小さな欠片があるそうなんですが……わかりますか?」


「ちょっと待て……ここか…………?」


 ヒビが広がれば、龍石の首が落ちて、清めの力が失われてしまうと考えられる。だから夕紀美さんはとても注意深く観察して目星をつけてからその部分に触れてみた。


「このヒビの外側、確かに外れるな…………」


「それを持っていってくれと言ってました…………何かの役に立つはず…………と」


「わかった。じゃぁ藍華のアーティファクトの缶に入れておくぞ」


「ありがとうございます…………」


 龍石を見上げながら、わたしは手を合わせて目を瞑り、龍石が少しでも心穏やかに過ごせるよう祈る。


 すると、大吉さんはわたしの頭の方で、夕紀美さんは足元で、参拝する時のように二礼ニ拍手して、一礼しているようだった。


 キュ〜


 水晶龍の声に、目を開くと、ちょうど飛んで、またわたしの胸のあたりにやってくる。


「行ってきます、てご報告したの……?」


 キュルルゥン〜


 ぺたんと全身をわたしにくっつけて、水晶龍は鳴いた。


「さて。じゃぁどうやってそいつを連れて行く?」


「そうだな……飛んでついて来る、では目立ちすぎるしな…………」


「あの袋に入っていてもらうか…………?」


「あの袋って……?」


 大吉さんは、少し言いづらそうに夕紀美さんに答えた。


「双葉ーちゃんの所に預かってもらってたクゥさんの収納袋」


「あの……例のやつか……?

 極秘の輸送に使われているという、未だ秘匿され続けている碧空作品…………」


「誰にでも簡単に使えてしまって、世に出るのはまだ早いと、叔父さんと神職集の意見の一致があって、双葉ーちゃんのところに保管されてたやつな。あれは3ヶ月までは卵も腐らないが……」


 誰か試したの……⁈


「マスキング効果ついてるらしくて、当時の鑑定アーティファクトでは十立方メートルは入るらしいってことしかわからなかったからな」


 マスキング効果て…………!


「ふぇっくしょん……!」


 突然のわたしのくしゃみに、水晶龍は飛び跳ね、夕紀美さんは慌てて言った。


「大吉、本殿は少し冷える。藍華を早く拝殿の方へ連れて行ってあったかくしてやろう」


「あぁ……」


 体は乾かされ、バスタオルをかけられた状態とはいえ、少し冷えたのだろう。

 わたしは再び大吉さんに抱き抱えられて拝殿の方へと戻った。




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