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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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165.チャクラ講習

「チャクラは足裏あたりから頭の上まで八つのポイントがあって……それぞれに意味があるんです」


「なるほど、そういうことか……!」


「???」


「その身代わり護りの石は、ゼロ番を省いているものだな。おそらくそれも功を奏しているんだろう」


 夕紀美さんは医療関係でチャクラストーンに縁があるらしく、おそらくわたしと同じ結論が見えている。


 大吉さんは一人、わからないようで、説明を求めてきた。


「俺にもわかるように説明してくれるか?」


「わかりやすく説明するとだな……」


 夕紀美さんはざらっとチャクラの説明をした。




「第一チャクラの場所は“尾てい骨”

 担当する事柄は“生命エネルギー、行動力”


 第二チャクラは“下腹”

 肉体的欲求、物質的欲求


 第三チャクラは“中腹”

 感情のコントロール、意志力


 第四チャクラは先程言った通りだが、“心臓付近”で

 慈しみの心、希望、慈悲と博愛


 第五チャクラは“喉”

 コミュニケーション能力、感情表現、意志伝達


 第六チャクラは“眉間”

 潜在力、直感、智恵と知性


 第七チャクラは“頭頂”

 霊性の進化、自己献身」




 夕紀美さんの説明はわかりやすく、わたしがふんわり覚えていたそれぞれの意味と大きく違うところはないように思った。


 元々専門的な本でもサイトでも、多少違う部分があったりするので、そこはまぁ使用する人本人の感性で決まるものなのだろうと思っているし。


「元来は、それらを補助する意味を持って使用されるチャクラストーンだが、その全てが水晶龍を顕現する助けとなっているのだろう」


「ちなみに身代わり護りは、チャクラを司ると言われる色の天然石を当てはめて、それぞれの箇所を護るように作られてるみたいですね…………」


実際の流れを知らずに作っていたけれど、多分そうだろうと思っていたことを述べてみる。


 そして水晶龍は、身代わり護りを、身を護る物としてではなく、チャクラ本来の意味でもって、己の体を動かすための補助として使用した、ということになる。


「おそらく第七の“霊性の進化”で、単独の顕現が可能になり、他のチャクラが行動の原動力を補助しているかと思われる」


 考えれば考えるほど、間違いない、という感じがしてならない……。


「第ゼロの“足の裏”を担当するものがないのも、水晶龍にはちょうど良かったんだろうな。あれは大地との繋がりを強めるチャクラだから、自由に空を飛び回る水晶龍には足枷になっていただろう」


「なるほど……? 俺が昔使用してたやつは第一を省いて第ゼロを入れたものだったんだな……その一番端っこの石が、ヘマタイトだったから」


 相変わらず胸元でキュルキュル言いながら体を擦り付けている水晶龍に目をやると、身代わり護りと水晶龍が、淡い光で繋がっているのがぼんやりと見えた。


 首飾りと龍石が揃って顕現できていた水晶龍、偶然とはいえそれを全て補完するほどの力が身代わり護りにあるのか……?

 そうだとしたらそんなにすごいことはない。ないけれど……


「たしかに……補助してはいるかもしれないですけど……。

 一番大きいのは、水晶龍がここに来た当初より成長したってことじゃないですかね…………」


 人も来ることのできないこの地で、龍石と二人(?)泉の水を清め続けてきたことで、霊格のようなものが上がっていたのではないかと思い、そうわたしはつぶやいた。


 胸の上で、例の球を手でコロコロさせながら遊んでいる可愛らしい姿に、また一つ気づいたことがある。


「……さっき大吉さんがその小さな球を渡してくれるか、と言った時、まるでからかうようにしてたじゃないですか…………。

 それは多分第四が欠けてしまっているから…………かもしれないですね」


 慈しみの心や博愛が無い状態。

 好き勝手に飛び回り動いている印象がしていたのも、おそらく間違いないだろう。


「……………………」


 そうなのか? と訝しげな顔で覗き込む大吉さんに、水晶龍はピタリとその動きを止めて、プイッと顔を背けた。


「こいつ…………!」


 大吉さんは水晶龍から顔を離して、ふーっと怒りを収める為に一呼吸吐くと、気持ちを切り替えたようで床に置いてあったドラゴンブレスの残りの破片に手を伸ばす。


 左手に握ったままだった大きな欠片はそのままに、右手で残りの欠片を拾い集め左手に乗せていくと、


 水晶龍が何かに気づいたように突然大吉さんの左手に飛びついた。


「……!……な! こいつ!」


 キュキュー!!


 長い尻尾で器用に大粒の欠片を奪い去り、龍石の方へと飛んでいく水晶龍。


「待て! このやろ!」


 大吉さんは立ち上がって後を追っていった。


「…………?」


 気になったわたしは体の感覚から、起き上がっても大丈夫かと、転がり横を向いて上体を起こそうとする


「! 藍華ちょっと待て……」


 夕紀美さんの制止する声を聞き切るまでもなく、

 脳天から血の下がるような感覚に、上体を起こしたところでピタリと動けなくなる。


「……血が足りてないと言ったろぅ。水中で空気中より失血は少なかったとはいえ、治療開始するまで血は流れ続けてたんだ。まだしばらくは横になっとけ…………」


「う…………ハィ…………」


 夕紀美さんの補助で、もう一度横になると……


 キュー、キュー、キュー!!


 鳴きながら戻ってくる水晶龍に、ドタドタと後を追いかけてくる大吉さん。


「待てー!!」


 本気ではないのだろうけど、ヒョイヒョイと避けながら飛ぶ姿にその機動力のレベルの高さが垣間見える。


 二周ほどして、再びわたしの胸の所にやってきた水晶龍は、何か語りかけるかのようにわたしの目を見てキュゥン、と一声鳴き、水晶龍の手にある例の球が淡く光った。


 キュゥ!!


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