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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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164.身代わり護り、その能力

 確かに、これ以上は動けないーってなって、無意識に結界張ってて……?

 攻撃されて押されてそのまま泉の底まで行ったのだけど…………


「……あの時頭にあったのは……水質汚染の原因を突き止めなきゃいけないのに何でこんなことになってるのかーと……とにかくこれ以上傷つけられるのも傷つけるのも嫌だ……って思ってたかと…………」


「…………“傷つけられるのも、傷つけるのも嫌だ”というのがおそらく攻撃の意思のない“保護する”ことにつながって、それがその呪い系アーティファクトにも影響したんだな…………」


 そんなバカな………⁈

 っていうかそんな簡単でいいの⁈

 いや、わたしには簡単な状態ではなかったけども‼︎


「でもじゃぁ不味くないですか…………?

 保護してるってことは、保護がなくなったら解放されてまた呪いが…………」


 わたしの言葉に大吉さんも夕紀美さんも額に汗流しながら同時に


「「双葉(様)ーちゃんのところに持っていこう」」


 二人目を見合わせながら、言った。


「それが一番だよな」


「できるだけ早めにな」


 意見が一致していることを確認していた。


「だが……誰が持つ…………?」


 大吉さんの言葉に、夕紀美さんは両手でバッテンを作り、無言で拒否の意を示した。


「…………じゃぁオレが持つか…………」


 覚悟を決めた顔で大吉さんが、


「それ……渡してくれるか…………?」


 気持ち恐る恐る、手を差し出してそう言った。


 きゅぅーん!!


 水晶龍は球を持ったまま、わたしの胸の上でコロンコロンと二転して大吉さんの手を避けた。


「ぉま……!」


 きゅきゅきゅ〜ん


 まるでからかうように鳴いて、尻尾を振る。


「そういえば……君は何で動けるの……?

 龍石の首飾りと君の首飾り、両方共揃ってようやく動けるのだと聞いたけど……」


 きゅぅうん、きゅぅうん


 水晶龍は握ったままの、千切れた身代わり守りをその小さな右手でフリフリして見せた。


「それ、藍華の付けてた身代わり守りだよな……それになんかあるのか…………?」


 大吉さんが気持ち恐る恐る顔を近づけて水晶龍を見ながらそういう。


「そういえば……身代わり守りも怪我が大きすぎるとあまり役には立たないですねー……」


「そんなことはないぞ。

 位置的に絶対に内臓に達していたはずの傷が、損傷がほとんどなく、軽くすんでいた。身代わり守りがなかったらここまでの回復に数時間はかかっただろう……」


 え。そこまでの差があるの…………?


「おそらく…………神器並みに能力が高いぞ、その身代わり守り。それ、何処で手に入れ…………」


 夕紀美さんの言葉に、大吉さんもわたしも目を見合わせながら言葉を失った。


 その様子を見た夕紀美さんは察したようで


「まさか……藍華の…………?」


 そう言って目を丸くして言った。


「双葉様のところの身代わり守りですらそこまでの能力はないぞ……⁈ 刺し傷なんかそれこそ千切れて無効化されてしまう」


「それでか……? 双葉ーちゃんが藍華に依頼したのは…………!」


 大吉さんがそう言い、


「……みーばぁも、それがわかってたんですかね…………?」


 わたしもずっと疑問だった謎が一つ解けた気がした。


「でも……じゃぁ一体何が水晶龍に作用してるんだ……?」


 そう、そこがなんだかはっきりしない。


「……ナゴヤの翠様は想いの強さが力をくれるーみたいな話ししてましたけど……」


「ん…………ちょっと待て? その身代わり守り、どこで千切れてるんだ?」


 夕紀美さんの言葉に水晶龍は、わたしの胸の辺りで頭を擦り付けて逆さま状態で、千切れた身代わり守りをピラピラさせながらきゅぅん? とこれまた可愛らしく鳴く。


「取り上げないから、ちょっと見せてくれるか?」


 言葉を理解しているのか、水晶龍はぐいっと夕紀美さんの方にそれを突き出して見せた。


 ちょうどわたしからも見えたが、思っていた箇所と違うところが千切れていた。


 わたしが千切れたと思っていたのは腹部を司る石、カーネリアンの所だった。何せ刺されたのだから。


 けれど、それには大きなひびが入っているだけで、石が割れてなくなり千切れているのは、ローズクオーツのあった箇所だった。


「藍華、この部分は第4チャクラの心臓付近を司る石が入っていたはずだな?」


「はい……ローズクォーツが…………」


「第4チャクラ……愛と憎しみ、慈しみの心……他にも色々意味があったと思うが……」


「わたしが今思い出せるのは……希望、慈悲と博愛……といった言った意味ですかね……」


「藍華……それが切れたタイミングはいつだったかわかるか……?」


 夕紀美さんとわたしが考えあぐねいている時、大吉さんが何かを思い付いたように言った。


「泉に押し込まれてわりとすぐ……自分の血が流れてくのと一緒に千切れたそれが遠ざかるのを見ましたけど…………」


 あの時はてっきり、あの頭を殴られた時と同様に、攻撃を受けた腹部を担当するチャクラストーンが割れてちぎれたのだとばかり思っていた。


「たとえばだぞ……? 泉の水に……呪い系アーティファクトの影響で、救われない魂たちが渦巻いていたとしたら…………?」


 水質が下がっていたことを考えると、龍石の清めの力を上回った呪いのアーティファクトが泉目一杯に広がっていてもおかしくはない。


「慈しみの心、慈悲と博愛……だったか? それが藍華を守るため、救われない魂たちとかちあって…………」


「石が割れて、千切れたと…………?」


「そうすると……藍華が泉に落ちた後、呪いのアーティファクトの影響で身代わり守りが千切れたのか……‼︎」


「え…………ちょっと待ってください…………」


 それまでの話から、失念していたチャクラの意味からある一つの仮説を思いつく。


「そうするともしかしてそのチャクラストーンが水晶龍が今単独で動けている原因……?」


 きゅるるん♪きゅるるるるるる♪


「……どういうことだ?」


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