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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
164/343

163.アルジズのルーンの力とは

 コトン、と竹筒の水筒を一つわたしの頭の横に置くと、


「体を起こせるようになったら、これを飲むんだ。そうすれば、体内からの回復も早まるし、血の量を増やすのに必要だから」


「ありがとうございます」


 きゅぅううん♪


 本殿の方から可愛らしい鳴き声が聞こえ、水晶龍が飛んでくる。


 大吉さんがビクリ! と体を震わせ固まり、水晶龍はわたしの胸元に降りてきた。


「水晶龍……」


 長い尻尾をピタン、ピタン、と軽く叩きつけながら上半身をくねらせ擦り付けてくる姿は、さながら猫のようで、可愛らしく見える。


「ありがとう、助けてくれて…………」


 わたしの声を聞いてか、その赤い小さな美しい目を嬉しそうに細めて


 きゅるるるるる


 と、何にも形容し難い声で鳴く。


「しかし、どうして突然水の質が“清浄”になったんだ? 藍華、何かしたのか?」


「わたしは……多分血の流しすぎで……もう動けなかったんで、意識続く限り結界貼って凌ごうと結界貼っただけなんですが……」


「結界て例のルーン文字とかいうやつのか?」


「はい。ルーン文字アルジズの結界です」


「その“アルジズ”とやらには浄化の能力でもあるのか?」


 アルジズ、今思い出せるのは“保護、守護”の意味があるということ。


「浄化、という明確な意味はなかったと思いますが…………」


 きゅぅ〜ん


 水晶龍が泣きながらわたしの顔の横に下りると、大きな口を開けて、エロ〜んと何かを吐き出す。


 それは何かヒビの入った拳大の黒っぽい玉と、小さなビー玉サイズの中央に向かって黒くなってる玉だった。


「おま、その透明な体内の何処にこんな黒い玉入れてたんだ⁈ っていうか、明らかに体積の関係がおかしいだろう⁈」


 大吉さんの驚愕のセリフに激しく同意。何故なら大きい玉は明らかに水晶龍の体積の倍はある。


 小さい方の玉は吐き出した反動で転がっていってしまい、水晶龍がそれを追いかけていった。


 大きい方は転がり、ヒビが入っているからか、大吉さんとわたしの間の視界内でピタッと止まった。そしてそれから微かに負の気配を感じる。


「大吉さん、これ……多分泉の水の質を落としていた元凶なんじゃ……!」


 色は黒いけれどよく見ると赤黒い感じの色合いだということが見て取れる。


「ちょっと貸してくれ」


大吉さんがそれを両手でそっと持ち上げ渡すと、夕紀美さんは鑑定アーティファクトを起動させた。


「なんなんだ……? コレは……」


「どういう物なんだ?」


「…………こんな物見たことがないぞ…………⁈」


 夕紀美さんの驚き具合が、ソレは確かにとても良い物ではないことを示していた。


「鑑定結果は……それの能力は一体なんなんだ?」


 大吉さんの問いに額に冷や汗を浮かべ、鑑定アーティファクトのメガネを外して夕紀美さんは答えた。


「怨念の塊、浮かばれない魂達────と記されている…………」


「なんだって…………⁉︎」


 大吉さんの驚きようからそれが悪い意味で何か特別な物であることが感じ取れる。


「それは…………おそらく…………ずいぶん昔に製造を禁止され、製造方法も(ことごと)く回収、破棄された呪い系アーティファクトだ…………‼︎」


「…………呪い系…………?」


 夕紀美さんは聞いたことがないらしく眉をひそめてそうつぶやいた。


「呪い系アーティファクトは他の普通のアーティファクトより威力がアホみたいに強くて、その昔街が一つ消滅したこともある。

 夕紀美さんなら国立図書館に入れるだろう? そこの持ち出し禁止の禁断の書庫に資料はあるはずだ……」


「お前……なんでそんなこと知って…………」


「……俺にも色々あるんだよ。何でも屋と発掘と、マスターの兼業してるとな…………」


 大吉さんは、言えないようなアレコレがあるのか

 少し困ったような顔をして言葉を濁した。


「藍華、アルジズの能力は“保護、守護”でまちがいなかったか?」


「はい、わたしが覚えているアルジズの“意味”はそれであってます」


「多分……保護したんだよ、その中身を」


「怨念を……⁇」


「“怨念の塊”、というのはアーティファクトの種類名だな“水系アーティファクト”とかいうのと同じだ。この場合注目すべきは注意書きの方の“浮かばれない魂たち”だ」


 大吉さんが言うには、浮かばれない魂たち、というのは志半ばにして亡くなった者や動物の霊が元になっているらしいということ。


「アルジズの“保護”が外に現れる効果としては“浄化”と同じになったんじゃないか……?

 だって……小さい球の方…………俺でも分かるくらいすごいぞ……?

 凝縮されてるっていうかなんていうか…………」


 水晶龍がその手に持ってきたそれを指して大吉さんは言った。


 水晶龍は再びわたしの胸の辺りにきて、左手に小さい方の球を、右手には千切れた身代わり守りを持ったまま、嬉しそうにその小さな体をくねらせている。


 うん、確かに中央の黒いところ、なんだか物凄く黒い気配が…………


「で、その外側の薄い白っぽいような黄色っぽいような色の所が“アルジズ”の結界なんじゃ…………?」


「浄化じゃなくて保護した…………」


 夕紀美さんの眼鏡が光り、鑑定アーティファクトでその小さな球を確認すると──


「…………大吉の言う通りだ…………

 “保護された浮かばれない魂たち”と出ている…………」


 ええええええええ⁈



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