表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 二章 そして事故?はおこった。
16/343

015.『小さく砕けろパンチ』と『アーティファクト使用の際の注意事項』

 土煙がなくなって見えてきた陥没事故の現場は、ざっと見ただけでもかなり酷いと感じた。

 ずいぶんと深くまで落ち込んでいるようだ。


 陥没の中心部はおそらく完全に埋まっている。

 周りにあった建物群が中心に向かって落ち込んだのもあるだろう。


「気をつけないと二次災害? になるわね……」


 大きい瓦礫はどかせるより、小さくした方がいいだろう。


 両の手を握り、ファイティングポーズをとって。力を貯めるフリをする。


「小さく砕けろパーンチ!!」


 いいのかそんなネーミングで?!

 いいんです、結果が良好なら!!


 心の中で1人ノリツッコミ。


 実際、ものの見事に粉々に砕ける瓦礫。

 あとは普通にどかせれるし邪魔にはならないだろうと、人気のない方に放り投げながらどんどんと退けていく。


 時間がかかり過ぎたら元も子もない……!!

 急がなくては────


 ここらへんの瓦礫が一気に、人体に影響のないようにどかせれたらいいのに……!


 淡く光るネックレスに気づかずに、少し大きめの瓦礫を退けた時、人の手が見えた。


「大丈夫ですか、返事できますか⁉」


「…………ぅう…………」


 息がある!


「瓦礫よ浮かべ!」


 意識せずに出た言葉は、ネックレスのおかげで現実のものとなる。


 反応してるのはオマージュネックレス。わたしはふわふわと浮かぶ瓦礫を避けて、そこにいた人物を抱きかかえた。


 身長約百五十センチの(か弱くはないと思ってるが)女の私が百八十はあろう男の人をお姫様抱っこするというシュールな絵柄など誰も気にはしていまい。


 陥没した現場の、端のところまで連れて行き、そこにいる救護の人達に後は任せて再び救出に舞い戻る。そんな救出作業を続けていたら、気づくともう日が高く登っている。陥没した奥の方まで日が差し、気温も上がって蒸し暑さが出てきていた。


 瓦礫を退けて、救出し怪我人を受け渡す。それを何度も繰り返して、もう回数は覚えていない。


 思えば朝ごはんもまだだったけども…………。


「藍華、大活躍だったな!」


「おー本日三回目の大吉さんだー。そっちはどうですか?」


 ハイタッチをしながらお互いの無事も確認する汗だくの二人。大吉さんもあちこち擦り傷だらけで額の汗を拭いていた。


「生きて助けられるのは多分ここらへんまでだろう…………」


「……陥没が起こってから七十二時間経ってないです……まだ『生きてる』可能性はあります──

 何人くらい見つかってないんですか……?」


 ここの医療の技術がどれくらいのものなのかわからないから、間違っても「助けられる」などと断言はできないけれど…………あの、一番最初に私が救出した男の人、元気になって救出作業の手伝いに来てるし……。



「おそらく五人、全員寺の関係者で、住職と坊さんが二人に小間使いが二人。

 明け方だったからな…………朝のお参りとか掃除やらでいたんだろう」


「そうですか……

 ところで大吉さんに1つ質問です。今更なんですが。

 アーティファクトを使用する際の注意点て何かありますか……?」


 ふと気になった。


 自分が救出したのは十人以上、朝七時にはこの場所について作業開始してるから、日が高くなってるってことは、もうお昼近く。大体五時間くらいはフルでアーティファクトの力を使ってる。

 体の疲労は普段から使っていない筋肉とかを使用しているからとして、アーティファクトに使用制限時間とかはないのだろうかと……


「大まかには連続での多用を避けること、あと同時にいくつものアーティファクトを使用しないこと、だな」


 えええええええ⁉


 わたし、めっちゃ連続で多用して、しかも二つは同時使用してるんだけど……?



「アーティファクトはそれ自体に力があり、ほぼ全ての人が使える道具だ。精神力を糧としてエネルギーを発すると研究がなされている。

 事実、多用すると昏睡に陥ることがある。

 あと、連続で使用すると壊れたりしてしまうことがある。よって、連続の使用は控えるべし。

 目印となるのは、ソレの温度。使用を続けると発熱してくるからすぐわかる。

 そして元の温度に戻ったら再びの使用が可能だ。大抵十五分くらい休憩させたら大丈夫だ」


 ふむふむ、発熱? 全然感じなかったけど……


「同時使用を避ける理由は、力の混線が起こってしまうから。力の混線が起きると、相殺しあって力が発揮されなかったり、違う効果を発揮したりする。

 そして混線し、違う効果を発揮したものはその後壊れてしまう」


「それって、大吉さんと私が同時に同じ場所──例えば今ここでアーティファクトを使用しても、ですか?」


「いや、アーティファクトを持つ者が違えば大丈夫だ。原理はまだ解明に至ってないが、アーティファクトが動力で、人間はブースター(増幅器)なんじゃないかというのが通説だな。

 通常はアーティファクトだけでは何も起こらない、人間だけでもまた然り。

 そして、人は通常一度に一つのアーティファクトしか扱えない」


「通常、ってことは通常じゃない人がたまにはいる、ってことですよね…………?」


「俺が知る限りでは今まで1人だけだ…………」


 含みのある言い方。


「クゥさんですか…………?」


 無言で頷く大吉さん。


「もしできるのだとしても、あまり人に見せないほうがいいかもな。気をつけろ?」


 そういうことは先に言っておいて欲しかった。


「とにかく、もし熱を持ち始めたらできるだけ早く使用を中止することだ」


「了解です。あと五人、とにかく探しましょう!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >身長約150cmの(か弱くはないと思ってるが)女の私が180cmはあろう男の人を >お姫様抱っこするというシュールな絵柄など誰も気にはしていまい。 いや読者は気にしますよ(笑) 絵柄にす…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ