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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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151. 藍華の隠れた能力と大吉さんの苦手なモノ……

 普段と違う感覚は少しあった。


 いざジャンプしてみると、想像以上のパワーだったようで一気に地面が遠ざかり想像外の出来事で、恐怖に一気に血の気が下がりはじめる。


「ぃやああぁぁぁぁぁあああ⁉︎」


 未だかつて出したこともないような叫び声が自分の口から出た。


 ど! どこまで⁈


「藍華⁈」


 はじめはジャンプで届くかどうかで怖かったのに、飛びすぎて怖いって……!


 遥か下の方から聞こえた大吉さんの声の方を見るが、どんどん遠ざかっている。


 命綱引の長さ目一杯まで到達しても止まらなそうな勢いに、引きちぎれるかと思ったその瞬間、大吉さんが鞭のアーティファクトをわたしの腰に巻き付け、空の向こうに消えるのを防いでくれた。


「……‼︎……」


 グンっと引っ張られ、一瞬息が止まる。

 飛び過ぎの恐怖は無くなったものの、今度は落下の恐怖。あのジェットコースターの落下の感覚がずっと続いている感じといったらいいのだろうか。


 鳥居横の大きな木にぶつかる! と一応着地の体制を取りながら目を瞑ったその瞬間、もう一度引き寄せられ


「ふぐあぁっ……‼︎」


 見事、大吉さんの顔面に蹴り入れるような体制で着地した。


「ごっ……‼︎ ごめんなさい‼︎」


 慌てて踏みつけてしまっている大吉さんの上から下りてしゃがんで覗き込むと


「一応覚悟はしてたから大丈夫だよ……いつつつ……ってか怖くても目は瞑るな、情報を見逃したらダメだ」


 わたしの突っ込んだ顔を手で覆いながら起き上がってそう言った。


「……はい……」


 目を瞑ってなかったら大吉さんに着地しなくてすんだよね……多分。

 ホント申し訳ない……


「……珍しいじゃないか? 力の出し過ぎ」


 鼻から血を流した大吉さんが、あぐらをかいてそう言った。


「……普段の具合からだとここまで届かないと思ったんですよ……それで柘榴様の言ってたこと思い出して意識してみたんです。そしたらこんなことに……申し訳ない」


 とにかくいつもより強いパワーを望んだ結果がコレ。

 色々試して練習しないと使いこなすのは難しそう……


「はっはっは! ま、大丈夫だろう。用は慣れだ。俺も一番初めの時は飛びすぎて海に落っこちたしな」


 大吉さんは、夕紀美さんからもらったティッシュで鼻に詰め物をしながらそう笑った。


「海に⁉︎」


「まぁ怪我したら私がすぐに治療してやるし、心配はいらんぞ」


 鑑定用のチャームをつけたままの夕紀美さんが大吉さんを診てから言った。


「鼻血以外は全く問題なしだ。さすがだな、体力バカは健在か。

 例の黒い影もなくなってるし、行ってきたのか?双葉様のところ」


「ん? あぁ、行ってきたよ。みーばぁからのお使いの届け物しにな。ただ影を祓ったのはフシミ稲荷の稲荷神だ。双葉ーちゃんにもそこに行けって言われたから行ったんだが」


「フシミの稲荷神だと⁈ もう十数年も顕現してないと聞いているが」


「そうなのか? 子狐もわらわらと凄かったぞ?」


「可愛かったですよね〜子狐神使たち」


 もふもふしたかった、と思い出しながら言うと


「子狐がわらわら⁈ 聞いたこともないぞそれは‼︎」


 行ったら普通に出てきたから、普段からそうなのかと思っていたけれど、そういえば大吉さんも初めてだと言っていたし…

 え、かなり特殊な状況だったの?アレ。


「稲荷神の“声”は催事や儀式の際に聞けるものの、そのお姿は双葉様でもしばらく見ていないはずだ。最近は代替わり準備で花子さんと一緒に行動されているが。子狐の神使がいるという話も聞いたことはあるが、目撃した人数は一人二人程度だ」


「あんなに沢山いたのに……?」


 つぶやくわたしを見る二人。


「え……?」


 わたしを見たあとチラリと二人して目を合わせ、勝手に何か納得したように頷いて…………


「……それしか考えられないな」


「何か特別なオーラでも出てるんじゃないか?」


 口々にそう言って何故か納得した顔をする。


「え……わたしそんな特別なモノは持ってないかと……!」


 慌てて言ったその言葉に、


「「その存在自体がまず特別だろう」」


 さすが親戚。見事なかぶり具合で。


「こりゃー期待できそうだな、水晶龍の動いてるところがこの目で拝めるかもしれんぞ!」


「…………」


 夕紀美さんはスポットライトが当たったような輝きの表情でそう言い、大吉さんの表情は対照的に笑顔のまま影に入ったかのように暗くなっていた。


「……大吉さん、もしかして龍が苦手……?」


 ずっと気にはなっていたのだ。龍の話が出る度に様子のおかしくなる大吉さんが。


「……いや、龍が苦手ってわけではないんだが…………」


 言い淀む大吉さんに、ニヤニヤとした顔で夕紀美さんが


「大吉が苦手なのはアレだよな、トカゲとか蛇とかの爬虫類」


「ちょ! 夕紀美さん‼︎」


 慌てる大吉さんは恥ずかしそうな表情をしたあと左手で顔を覆った。


 え。カワイ……


「〜‼︎ 昔な、トカゲの尻尾掴んじまってな……尻尾残して本体逃げて……

 切り離されてるのに握った手の中で動いてた尻尾の感触が……トラウマで…………」


 そう言いながら右手がプルプルしている。


「……だそうだ」


「トカゲのしっぽて……本当に千切れるんですねぇ……」


 知識としては知っていたけれど、そもそも触ろうとも思わなかったので考えたこともなかった。


「まぁドラゴンの尻尾が掴んだ瞬間切れるって言う話は聞いたことがないから! 安心しとけ!」


 そう言いながらバシバシと大吉さんの背中を叩く夕紀美さん。


 いや……多分そう言う問題ではないのかと……思ったけれど、その痛みで大吉さんの気が紛れてそうだったので言わずにおいた。



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