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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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149.顕現の法則と気になる◯◯の……

「妾の本体はのぅ、この近所に住んでた者が元々の持ち主じゃったんじゃが。

 再生の日の(のち)、力に気づいたその者が沢山の人々を助けたのがきっかけで、ここに奉納されることになったのじゃ」


 懐かしそうに話す柘榴様を見て……きっとそこに辿り着くまでも、様々な物語があったであろうことが(うかが)えた


「奉納される少し前だったかの……社が崩れ、沢山ある鳥居も互いが互いを支え合っているような状況が続いており、人の手も最低限のところまでしか届かぬ。

 そんな時、もともと此処にいた稲荷神が妾の本体となっているアーティファクトに宿って融合した。

 それからじゃ。顕現出来るようになり、他のアーティファクトを使えるようになったのは」


 なるほど……? 顕現できるくらいのアーティファクトは元々別の何かであったモノとの融合体で、だから他のアーティファクトを使用することも可能となる、と言うことなのだろうか……


「まぁ、妾ほどに使える者は多くはないじゃろうがの。

 顕現できるアーティファクトにはその可能性は高い、ということを覚えておくと良いじゃろぅ」


 扇子はまた淡く光ると、小さな大きさへと戻り、 柘榴様はそれを腰帯へと戻す。


「はい……」


 何故そう言ったのかはわからなかったが、とりあえず心に留めておこうと思った。


「……身体が軽くなった……⁈」


 大吉さんが腰に手を当て、肩に手を当て、つぶやいた。


「そういえばわたしもなんだか……」


 何かが排出される感覚の後から何かがスッキリしてる感じが……


「そうであろ? 妾の祓いの力はこの国最強じゃからの!」


 両手を腰に当てた柘榴様は、その柔らかそうな耳と尻尾を嬉しそうにピクピクさていた。


「あ……ありがとうございます……」


 大吉さんがまだ何か気になるのか、腰に手を当てモゾモゾしながらそう言う。


「わたしも……本当にありがとうございます。

 すごく何かが軽くなった感じが……」


 はっきりとは言えないが、“何か”が自分の中から消えている。


「良い良い。約束の物、頼んだぞ?」


 わたしに向けてそう告げた後


「お主は良く藍華を助けるようにの」


 大吉さんに顔を向けてそう言った。


「さて、では早くこの神域から出るが良い。

 世も更けてくるとここにはいろんなものがやってくる。祓ったばかりでまた新しい変なものが付いても面倒じゃ」


 そう言うと有無を言わさず、胸元からジャラリとペンダントを取り出し両手をその前で合わせて目を閉じる。


 柘榴様のペンダントが眩く光り出したかと思うと次の瞬間わたしたちは強い風に包まれた。


 たまらず目を閉じると、風に乗って聞こえてきた柘榴様の声。


 “ところで……翠が目印に接吻するとは余程気に入られたな、藍華。彼奴のこともよろしく頼んだぞ”


 目を開けると、そこは伏見稲荷の入り口の一番初めにある大きな鳥居の前だった。


 目印てアレ以外にも方法があるんだ⁈


 柘榴様からのちょっと余計な一言にそれ以外の方法とやらを脳みそが考え始めようとした時


「兄さん姉さん寄ってくかい〜?」


 鳥居のすぐ近くのお茶屋さんの、美人で艶っぽい呼び子さんが声をかけてきた。


 自分も呼ばれたことは分かったけれど、呼び子さんは大吉さんしか見ていないし、大吉さんは気にも止めていないようで、こちらをみてる。


 その視線が痛いような気がするのは、気のせいだろうか…………


「また今度寄らせてください〜!

 今日はもう遅いですし、帰りましょう!」


 そう言って大吉さんの手を引っ張っていくも、妙な緊張感があって、微妙な雰囲気。





 宿に到着するまでの道は、もう夜も更けて街の明かりが心地よく綺麗だった。


 カウンターにて大吉さんが鍵とか夕食とかの手続きをしてくれている間、宿のパンフレットをチラ見しておく……


 が、全然頭に入ってこない。


 柘榴様が別れ際に言った


 “翠が目印に接吻するとは余程気に入られたな、お主”


 という言葉の後から、大吉さんからの視線が気になってしょうがない。


「今日の夕食は、離れの入り口まで運んでもらうことにした。明日の夕方はフェイとアグネスも呼んで離れで豪遊しよう」


 初日に約束していた離れで食事。

 今日じゃなくて明日にするのかー。今日の方が良かったな、間が保たなそうで……



 そんなことを思いながら、部屋につき荷物を一通り整理し終えると、


 気持ち不機嫌そうな感じに座ってお茶を飲んでる大吉さんが目に入る。


 律儀に私の分まで用意してくれていたので、ニ人だけの部屋には少し大きめのテーブルの向かいに座りお茶をいただく。


「お茶……ありがとうございます」


「なぁ……聞いていいか……?」


 大吉さんは、わたしの声が聞こえていたのかいなかったのか被せるように話を切り出した。


「はい……?」


 少々気まずく感じる雰囲気の中、とりあえず心落ち着くお茶の香りを目一杯吸い込み、一口いただくと


「その……接吻て」


 ゲホッゴホッッ

 飲んでいたお茶が喉に引っかかった。

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