014.いきなりフルパワー?!大丈夫なの?!
「大吉さんのこのジャンプて!
アーティファクトの力ですか!?」
降下する時の風の音で声がかき消されそうだと、かなりの声量で聞く。
「そうだ! クゥさんの棒人間の指輪!」
わたしを抱えながら器用に左手を見せてくれる。
力を使用しているからか、指輪から発せられる光が強く眩しい。
そうすると、羽付きのやつは空が自由に飛べたりするんだろうか?
「着地したらまたすぐ飛ぶぞ!
歯ぁくいしばっておけ!!」
三度の大ジャンプの後、目的の場所まで辿り着く。
「はぁっ……はぁっ…………!」
なかなかに面白い道中だったけど!
きっつぃ!
すぐ気づいて、クゥさんのプレゼント指輪で体強化したから耐えれたけど!!
生身にはキツイわ!!!
わたしの手持ちのはこの指輪と、昨日もつけてたオマージュネックレス 、あと大吉さんに習って、ウォレットチェーンをズボンにつけて、キーホルダーやらストラップやらを、色々ぶら下げてみてはいるけれど……
「大丈夫か?」
「なんとか……! わたしは何をしたら?」
「自分が生き埋めにならないように瓦礫を退けつつ、人がいたら安全地帯までの誘導だ。
そこらへんにいる奴らを使え!」
言い終わる前に土煙の中に飛び込んでいく。
見えてるのか、感なのかわからないけど。危険極まりない大吉さんの行動に、こういう場面に慣れているのだろうな、と勝手に想像。
でも自分には無理!
せめてこの土煙だけでもどっかに飛んでってくれたら……!!
そう思った瞬間、ウォレットチェーンを押し込んであるポケットが光り、自分を中心として風の渦が起こる。
チェーンを引き出して確認してみると、飾りの一つ、淡く銀色を纏う緑の水晶を模したものが埋めてある雫形のチャームが眩い光を発していた。
風はどんどん強くなり、吹き荒れる。
「ちょ! 強すぎ‼ 土煙だけ飛ばして頂戴!」
魔法世界とかだと呪文を唱えて力が顕現するじゃない! そういうのはないの⁈ この世界‼
っていうか、自分でそう決めて意識すればいいのか?
「ストップ!」
ピタッと止まる風の渦。
面白い…………!
頭抱えて感動のポーズをとってしまうが、すぐに平静を取り戻し、改めて手を前にかざして言ってみる。
「風の渦!」
強過ぎず弱過ぎず、視界を開け!
で、できたら遠くに、生活に支障のないようなとこまで運んでいって!
自分を中心に起こった渦は、どんどんと視界を開けていく。土煙は空高く登って行き、海の方へと飛んでいった。
「視界良好! お次は人命救助!」
またチェーンにつけた飾りが一つ反応していることに気づく。だが今度は淡く光るのみで何も起こる気配はない。
「生存者捜索」
チャームから今度は力強い光が放たれ、瓦礫の何ヶ所かにその光が留まる。
光のある所に生存者がいるという事だろうか。
「手伝う元気のある人たち!
この光ってる場所を掘り返すなり瓦礫退けるなりして! その下にまだ息のある人がいるから!」
多分!
あやふやな単語はこの際飲み込み心の中だけで叫んでおいた。
わたしは自分の後方に立っていた数人に声をかけて、一番力の必要そうな大きな瓦礫の元へと急ぐ。




