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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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148.奪われた藍華の◯◯◯◯

「身体の力を抜け、固くしていると根が残ってしまうやもしれん」


 知らずのうちに入っていたらしい力を必死になって抜いてみると、


「そうじゃそうじゃ、主は飲み込みがはやいのぅ」


 まだ少し固さが残っている気がするけれど、柘榴様の言葉にさらに力が抜けれた気がする。


「深呼吸をして、少し息を止めてみよ」


 言われた通りに二回ほど深呼吸をして落ち着く所で息を止める。


 すると。


「んんん⁉︎」


 不意に顎を持たれ、唇を奪われる。


 腰に手も回され、逃げ場なし。


 な……⁉︎


「……な!……に…………」


 大吉さんの声が微かに聞こえたが、その瞬間自分の中から何かが排出されていく感覚を味わった。


「……黒い霧が出てきて消えた…………⁈」


 え、ホント⁈


 口を塞がれたままで、呼吸が苦しくなって、思わず鼻で息を吸うと、それまで久しく感じていなかった爽快感のようなものと、柘榴様のおそらく本体の画像のようなものが脳裏になだれ込んでくる。


 口が解放されて、腰からも手が離れると、


「ぷ……はっ……はっ……」


 肩で息をするわたしの前で


「完了じゃ」


 親指立て、唇をぺろりと舐めて成功したと告げる柘榴様。


「な……なんでっ……きっ……キス……⁉︎」


 思わず口を手で覆いながらそう言うと


「集中しやすいからじゃ」


 そうケロリと答える。


 いきなりのキスに混乱する頭ではそれ以上セリフも出てこなかった。


「しかしさすが、古の巫女はすごい。

 ちょっと手助けして道を作ってやっただけで、ほとんど自分で追い出してたぞ」


 あのチュウで何をどう手助けしたのかはわからないが、自分の中に何か変わった部分があることをうっすら感じる。


 ノーカン! ノーカンよ! 柘榴様女性だしそもそも人間ではない……!


 無理矢理自分の心にそう言い聞かせ、呼吸を整えてから気になっていたその言葉の意味を聞いてみる。


「あの、その古の巫女ってなんなんですか……?」


「古の巫女とは、ありとあらゆるアーティファクトを破壊せずに使用可能な者のことをいう」


「破壊……?」


「昔の人間は加減ができずに沢山のアーティファクトが破壊され、失われてしまったのじゃよ。

 古の巫女みこ、又はかんなぎと呼ばれたが、彼等はアーティファクトを壊さず己のうちの力で補助をし、さらなる力を引き出せた者の総称じゃ。

 お主はそこら辺の力の抑え方が物凄く訓練されているのぅ、何故か。だから人より少し強いくらいで特に目立つことなくアーティファクトを使用してきてるであろぅ? 今まで」


 そう言ってニヤニヤとわたしを見る。


「現代の人間達はアーティファクトを扱いやすいように進化しておるからの。

 誰もがアーティファクトを破壊することなく安全に使用できるように進化したのだよ」


「それって……ある意味退化じゃないか……?」


 今まで事態を見守っていた大吉さんが柘榴様にそう言うと、


「妾はそうは思わん。

 人は生きるために手段を自然と選んで進化してきたのじゃから。これからの世に必要不可欠となるアーティファクトを後世に残すための、れっきとした進化じゃ」


 柘榴様はキッパリとそう言い切った。



「さて、お主の方はコレで十分じゃ。

 少し下がっておれ」


 大吉さんが言われて数歩後ろに下がるのと同時にわたしも少し離れ、様子を見守る。


 大吉さんにもチュ◯で祓うのだろうか、嫌だな……と思っていたので、柘榴様が大吉さんに下がれと言うのを聞いて、その自分の思考回路と気持ちに慌てながらも心は穏やかだった。


 コレが独占欲、と言うものなのだろうか……?


 柘榴様が腰帯こしおびに挟んでいた扇子を取り出し、バサっと開くと、扇子は二倍くらいの大きさになり、輝きを増す。


 扇子は間違いなくアーティファクト。神器である柘榴様がアーティファクトを使える⁈


 目を見開いてその様子を見守る。


 大吉さんに向けてそれを一扇ぎすると、大吉さんの体から黒い霧のようなものが離れて消えていくのがはっきりと見えた。

 これまで大吉さんに纏わりついているのは見えなかったのに……!


「ふむ、これで大丈夫じゃろ!」


 大吉さんを一瞥しながらそう言うと、わたしが何に驚いているのか気づいたようで、


「お主は妾をただの神器と思うてか?

 初めに言ったであろう、妾は稲荷神だと」


 ふん、と鼻をならしながら言った。


 大吉さんも何か変化に気づいたのか、手をわきわきしたり、腰をさすったりしている。


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