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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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138.記録

「公的に調査が入ったのは50年前が最後の記録だ」


「1番新しいデータはもらえないのか?」


「それを話すにはここでは無理だな。

 研究室の方へ来てくれるか?」


 何やら公の場所では話せない内容だとわかる。


「と、その前にカフェで何か買っていっていいか?

 朝まだ食べてないんだ。」


 時刻はもう昼手前。


 大吉さんとわたしも一緒にコーヒーと抹茶ワッフルのようなものを購入して田次郎さんの研究室へとお邪魔した。


「相変わらずの甘党だな。叔父さん・・・・・・」


 甘いものてんこ盛り、袋一杯に激甘コーヒーを手に扉を開く。


「脳みそが必要だと叫んでるんだ。甘党なんじゃない。しょっぱいものも大好きだぞ?」


 その量はそういう問題でもない量だと思うが。


 扉を開くとまた数々のアーティファクトの光が目につく。


「眩しくないか?」


 瞬きをしていたわたしに気付いたのか、そっちに行ってくれと進む方向を支持しながら問うてきた。


「慣れれば抑えれるので大丈夫です。と・・・・・・」


 思わず答えて口どもる。


「心配しなくて良い。この部屋は内部の様子が外部に漏れるような簡単な作りをしていないし、それに研究員のほとんどは“見える”から」


 そう言ってついてきてくれ、と先に進んでいく。


 なるほど、大吉さんが“見える”ことにあまり頓着していない理由がわかった気がする。


 きっとご両親も“そう”だったんだろう。


 ついていった先は、事務をこなすのであろう机の並んだスペースを通り、隣の部屋の色々な機材の置いてある所も通り越して。所長室と書かれている扉を迷うことなく開ける田次郎さん。


 あれ?副署長て言ってなかったっけ?


「勝手に使って良いのか?所長室・・・・・・」


 やっぱり。


「あーあの人今長期休暇中。問題ないだろ」


 そう言いながら来客用であろうソファの所のテーブルに買ってきた甘味類を広げ始める。


「そこ、座って良いぞ。」


 言われてとりあえず座ってちょこんとテーブルの端にコーヒーを置かせてもらう。


「で、先に一つ相談なんだが。藍華を叔父さんの紹介で家に居候してることになってる。

 何か問われた時、適当に誤魔化してもらっていいか?」


「手紙にも書いてたな、それ。

クゥの時にもやって大変なことになっただろうが・・・・・・主に俺が。俺はそういうその場を濁して誤魔化してーって苦手なんだよ!超インドア派の研究職舐めんな? 人付き合いは超がつくほどに下手くそなんだから!」


「胸張っていうようなことじゃないだろぅ・・・・・・」


「お前、あれだ。みっちゃんのねーちゃんの双葉さんのところに行け」


 まさか田次郎さんからみっちゃんの名が出てくるとは思っていなかったので、ビックリ。


「やっぱそうなるか・・・・・・」


「まぁ俺づてでお前のところに、っていうのはそのままでいい。俺が双葉さんに頼まれたってことにすればいいから。連絡入れといてやるから行ってこい」


「いや、それはだいじょうぶだ。みーばぁのお遣いで行くことになってるから、行くという連絡はもういってる」


「じゃぁあちらさんは全てお見通しだろう。安心していってこい」


 全てお見通しってどういう・・・・・・?


 自分の経歴ルーツがポコポコ決まっていくのに、異論はないので黙っているけれど、その双葉さんは大丈夫なんだろうか・・・・・・?


「さて、調査の記録の話だが。

お前の想像通り、非公式に見回りはされてきている。月1(つきいち)で」


 先程大吉さんが言った1番新しい情報とはそのことか!


「まぁどれくらいの頻度とかは想像してなかったけどな。そんな大事な場所の公式記録が50年前っていうのが怪しすぎだろう」


「まぁそれには色々訳はあるんだが」


 苦笑しながらそう言い、話を続ける。


「その月1の記録でも、特におかしいことは報告されていない。湖も、神社も。

 神社は御神体があることもあって、年一回はメンテナンスと掃除が入るんだが、水質の落ちはじめた半年前より少し後にちょうどメンテナンスが入ってて、その時は特に変化はなかったそうだ。

 原因は御神体の劣化が進んだかどうかじゃないかと言われていて。

 来年のメンテの時にしっかり確認する計画が立てられてたところなんだ」


 とりあえずこれがその報告書だと、束になったファイルを大吉さんに渡す。


 パラパラと見ながら


「やっぱり担当は蘇芳(すおう)か」


「あぁ、棒人間の指輪を担当してるやつだ」


夕紀美さんが言っていた『あんなやつ』という人か?


「見回りが月1なのは別の調査や何かで引っ張りだこだからか?」


「まぁ半分はそうだな」


“半分”というところが引っかかる。


「残り半分は奴がやりたくないっていうだけだよ」


なんと。


「だろうな・・・・・・掃除にメンテナンス、そんな地味な仕事、奴はやりたくないだろう」


 諦めというか、呆れというか、何か色々混じったような表情でいう大吉さん。


「お知り合いなんですか?」


「まぁな・・・」


 あまり詳しくは語りたくなさそうなのでまぁ突っ込んで聞くのはやめておこうと思ったが、


「なんてことはない。棒人間の指輪を提出に来た時、ちょっとした事件が起こってな。

 大吉とクゥと、相性の良さそうな奴がそれを使って事態を収集してくれたんだが。

 その難しいアーティファクトを使いこなせてる大吉を目の当たりにした蘇芳がが勝手に対抗心燃やしちゃったっていうだけの話だよ」


 カラカラ笑いながら説明してくれる。


 あぁ、本当はすごい人なのに、もっとすごい人たちを目の当たりにしてしまって、

 変に対抗心燃やしたりして変な方向に行ってしまったくちなんだろうか?


「悪い奴じゃないんだよ・・・・・・多分。ただ色々とタイミングがすこぶる悪くてな・・・・・・」


 珍しく大吉さんが言い淀んでいる。


「俺が会わなければ多分普通のやつだから・・・・・・」


「実力はあるし、志もまぁあるんだが。ちょっと調子乗った、ただの若造だよ」


 田次郎さんの言葉から勝手に想像。

 大吉さんより若いのかな?


「まぁ、直接話を聞くのはやめておいた方がいいかもな。

 変な対抗心燃やされて調査の邪魔されてはかなわないからな・・・・・・」


 

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