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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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136. 羽系作品の力の方向性



「そういえば“トウキョウ”に送り込んだ弟子が1人いるんだが、会ったことあるか?丸眼鏡をかけて、ヒョロっとした優男風の奴なんだが」


「もしかして、後ろで1つに纏めた腰までの長いストレートヘアの?」


「そうだ」


「あぁ〜こないだお世話になりそうになりました。空腹で倒れて。わたしが」


「倒れた原因が“空腹”だったから世話になることはなかったが、使用過多の治療もできるだなんて、かなり有能なのを送り込んだな?」


「いろんな経験を積ませてやらないと後進は育たないからな。育て中だ」


 そうか、元気でやっているか、と満足そうに頷く夕紀美さん。


「じゃぁぼちぼち昼飯に行くか。もう動いていいだろ?夕紀美さん、おすすめの店を教えてくれ。奢るよ」


「よし、じゃぁ大吉の財布を空にしてやろう!」


「中の上くらいの店で頼む・・・・・・・・・・・・」


 なんだ残念、と言って十分に冷めたお茶をすすった。


 3人で街に繰り出し、夕紀美さんおすすめのお店にて、昼食を取り、今度小さい頃の大吉さんの映像を見せてもらう約束をしたりした。

 デザートを食べながら雑談していると、夕紀美さんが病院からの呼び出しで少し早めに切り上げることに。




「じゃぁ、明後日頼んだな。待ち合わせは清水医院前で。頼んだぞ!」


「あぁ!」


「こっちこそ。ご馳走さん!あ、くれぐれも無茶はするなよー!」


「わぁったよ!ありがとうなー!」


 早足で去っていく夕紀美さんにお礼を言いながら手を振る大吉さん。

 一緒に手を振り見送るわたし。


「じゃ、この後どうします?」


「主治医の進言通り、宿に帰って大人しくしとこうか。と言いたいとこだが・・・・・・達磨頭取の紹介してくれた糸屋がすぐ近くなんで寄っていこう」


 そう言って、達磨頭取の紹介状を懐から出す大吉さん。


「いつのまに・・・・・・」


 宿の離れの玄関口の棚に置いてきたと思っていた紹介状。


「散歩程度ならいいだろう?」


 そう言って歩き出す。


 たしかに糸屋はすぐそこだけど、糸を見るのに時間がかかりそうだ。


 人には見せれない程にハイテンションになったわたしに、


「会計の時には呼んでくれ。達磨頭取のアレで、コーヒー代くらいしかないだろ?」


「す!!!すみません!

こんなに素敵な糸が沢山あるとは思ってなくて・・・・・・!! 興奮してしまって・・・・・・!!!

あの、予算は」


「気にするな。好きなだけ」


 そう言って、自分は店の入り口で座ってお茶を啜って待っていてくれた大吉さん。

 それでもまさか糸屋だけで数時間もかかるとは思っていなかったろう。


「す・・・・・・すみません・・・・・・こんなに遅くなっちゃって・・・・・・」


 時刻は18時。


「ははは・・・・・・大丈夫だよ。ただ買い物だけしてきたわけじゃないみたいだし?」


 そう、糸屋には糸に関するアーティファクトが数点展示されていて、それを舐めるように眺めていたのだ。


「も、ものになるかはわからないですけど・・・・・・手まり作ってみたくて・・・・・・」


「それはすごいな!藍華ならきっと成功するだろう!」


 そう言われると頑張りたくなっちゃう。自分って単純だな、と思いながら気になっていたことを聞く。


「ところで、本当に達磨頭取のツケで良かったんですかね・・・?」


 多少遠慮しながら、カゴに入れた糸たちを、大吉さんのお財布の中身大丈夫かな、と思いながら会計時に大吉さんを呼んだ。

 すると、紹介状を見せてそのまま何も支払わずにきてしまったのだ。


「店の人が紹介状を調べてたろ?」


 そういえば受け取って、何かライトのようなものにかざしていたような・・・・・・


「あの紹介状、すこーし特殊な羽根ペンで書かれた物でな。購入物の請求は紹介状の主の元にいくことになってるんだ」


 なんと。何か紙が光ってるなーとは思っていたけど、文字が光ってたのか。


 この“キョウト”。アーティファクトの気配が多すぎて、ちょっと酔いそうな感覚だったので着いてしばらくしてから、感覚を閉じていたのだ。


 馬車で通りを来た時からもう街全体がぼんわり光って見えて、こりゃいかんと思って一度認識したら閉じるように。


「特殊な羽根ペンてもしかして・・・・・・」


「そうアーティファクトな」


 あぁ・・・・・・なるほど、そっちの方に力が発揮されたのか。

 ただの羽ペンな訳はないはずだ。


「金額的には───まぁ大丈夫だろう」


 ちょこっとだけど遠慮しておいてよかった。


「買った糸で、身代わり守りをお礼に編みます」


「いいんじゃないか?」


 そう言って頭をポンポンしてくれる。


 だいぶ慣れてきたけどさ。

 嬉しいんだけどさ。

 ビミョーなワタシの乙女心。


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