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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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135. お礼は依頼

「礼とかいいからまずそこにいけ。ちゃんと断ち切ってからのほうがいい」


 そう言って先ほど書いた紙を指す。


「ん、あぁ……そこな、ちょうど行く予定があるから、行ったらみてもらうよ」


 あのキツそうな状態で書かれた文字をちゃんと確認してたのか大吉さんはすぐにそう答えた。


「そうか、じゃぁこちらかの礼は田次郎の依頼を受けること、だな。あと修復をいくつか頼みたい」


 鞄をガサゴソとまさぐって、年代物な梅昆布茶缶が出てくる。


「‼︎……」


 まさかの遺物に目を丸くしてしまう。


「修復して欲しいのはここに入ってる5品だ。必要経費は出すからこっちにいる間に頼む」


 そう言って缶を大吉さんに渡す。


「田次郎からの依頼だが、研究機関よりも医療の方が困窮しそうでな。

 治療に使用していた湖の水質が変わってしまって何にも使用できなくなってしまったんだ。

 あと数日はストックがあるが、早いところ手を打たないといけない。あの水が使えないとなると、救えるはずの命も救えなくなってしまうからな…………。

 もちろん、それに代わる代案も同時に検討はさせてるが」


「それってもしかして神事の時とかにも使われる清めの水か?」


「そうだ」


「清めの水⁇」


「“きよみず寺”の裏に崖から湧き出てる小さな滝があってな。小さな湖にもなってるんだが、その水が色々なことに使われていて、神事、医療、実験などに使われている」


 普通の水とは何かが違うのだろう、成分とかかな?


「特別な水で、その水を使って作られた酒は神酒としても売られている。」


 お神酒かー、ちょっと興味ある。


「大吉に頼みたいのは源泉の調査だ。

 明日は私が用事があって無理だから、明後日だな、時間をくれ」


「え、夕紀美さんも行くのか?」


「しょうがないだろう。

 今1番スペックの高い鑑定アーティファクトの担当をしてるのが私なんだから。」


 鑑定アーティファクト。なにそれ凄そう。ってもしかして───


「もしかしてそのメガネにつけたチャームのことですか……?」


「よく気づいたな、そうだ」


 眼鏡を手に取りチャームを外しながら言った。


「あらゆるものの状態を鑑定してくれるアーティファクトだ」


 見てみるか?と言われたのでありがとうございます、と両手で大事に受け取り、マジマジと見てみると……………


 黄変が少し進んでいるけれど、透明度の高いレジン作品のようだ。

 内包物はab加工のされている白っぽいスワロを中央に透明な部分に偏光ホロ、ぐるりと濃い青のパールトーンの部分。

 おそらく濃い青とabスワロが鑑定系の能力を発揮する要因。


「半年ほど前から水質が良好からだんだん下がっていって、とうとう劣悪に変化したのがつい2日前。

 詳しい調査をするのに源泉の方に行かねばならなくてな」


 話の途中だけど、大事なアーティファクト。観察終えたのでありがとうございます、とチャームを返す。


「調査する人間を選出してる最中だったんだ。

 悪いがお前の背中に乗せてってくれ!」


 受け取ったチャームをケースに戻し、カチッと蓋を閉じ、笑顔でそう告げる。


「えぇええ、政府機関のやつじゃいけないのかよ……。

 俺と同じクゥさんの棒人間の指輪を使ってる奴がいるだろう?」


 政府機関で使われてるようなアーティファクトだったの…………この棒人間の指輪…………


「あんなイキリ倒した奴の背中に乗るのはゴメンだな!

 断固拒否した!」


「拒否する権限がある夕紀美さんがスゲェよ…………」


 がっくりと項垂れて大吉さんは言った。


「じゃぁわたしは荷物持ちで同行しますね」


「結構ハードな道のりだぞ、大丈夫か?」


「実はわたしも持ってるんです」


 手を開いて、内側にしてある棒人間模様を見せる。


「なんと…………! もしかしてあちらでクゥと知り合いだったのか?」


「直接会ったことはないんですが……手紙のやりとりのようなものをしてたんですよ」


 SNSがないこの時代。

 まぁ手紙でいいだろう。

 秒速で届く手紙。


「多分、ついて行くことはできると思います。何か壊れやすいものを運べと言われたらちょっと自信はないですが」


 どんな道を行くのか楽しみ。

 源泉、棒人間の指輪がないと厳しい道のり、神聖な場所なのだろうと勝手に想像。


 ちょっとウキウキしてる様子のわたしを見て、息ひとつ吐いて大吉さんは言った


「わかったよ。源泉の調査依頼、受けよう」


「そう言ってもらえると助かる。

 何せ一般人は70年、公的にはもう50年は誰も足を踏み入れられてない場所だから」


「それまでは行けれてたんですか?」


 公的には、っていうのも気になるんだけど


「あぁ。源泉の所に神社があったからな。まぁそれでも宮司くらいしか足を運ばない場所で。70年前の地震で大岩と地割れで分断されてから立ち入ることがむずかしくなったんだ。

 地割れ後は高低差もあって棒人間の指輪でもギリギリの距離で。上手く力を引き出せる者しか行けれない場所となってしまったんだ」


 そこまで話を聞いてふと思ったことが。


 空飛ぶ能力のアーティファクトはなかったのか。

 羽をモチーフにしたハンドメイド作品たくさんあるのに、と。


「棒人間の指輪で大吉よりも力を引き出せる者は見たことも聞いたこともないしな」


「空を飛ぶような能力のアーティファクトはないんですか?」


 手描きの羽つき棒人間で光る羽が生えるのだ。


 羽の形のレジン作品や金属チャームの物はどうなってるんだろうと気になって聞いてみた。


「それ、確かクゥさんも言ってたな。空を飛べるアーティファクトはないのかって。

 羽の金属片がついてる物は一緒になってるものの材質にもよるが、大抵は立派な羽ペンが現れる。

 政府の官僚達のステータスのようなものにもなってる。特殊な物は代々引き継がれているらしいぞ」


 羽ペン…………


「レジンで作られた物は…………」


「内包物によって効果が変わるが、羽ペン率が高いな」


 大吉さんの返答を聞いて、なんというか、ちょっとがっかり。

 さぞかし立派な羽が生えて、クオリティによって飛べる距離が違うのかとか想像してたのだけど。


「羽が生えて空飛べるような物は…………?」


 クゥさんのアーティファクトと同じような能力の物は存在しないのか、と含みを持たせて聞いてみると……


「あーっはっはっは! アーティファクトのメッカであるここ“きょうと”でも見たことも聞いたこともないな。

 1番レアな物で、空飛ぶ船の動力源になってるが、日本の所蔵は7個のみ。

 適応者は今現在3名のみで、使われる時は限られている」


 夕紀美さんがそう教えてくれる。


 その話を聞きながら。大吉さんを見ると、


「と、いうのがここの常識だ。

 まぁ、棒人間の指輪があればあの崖は越えられるだろ。何かあったら俺も手助けするから」


 そうにっこり答えた。


 了解、羽つき棒人間は、異常な能力。

 あと今回は使わない。と。





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