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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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134.治療風景

 光る玉が大吉さんの頭部に設置したものから光の線を伸ばして繋がっていき、五芒星を描き上げる。 

 すると光量がさらに増し、光のドームが大吉さんを囲み込んだ。


 その光景に目が離せられない。と、同時に一言も発することができない。


 エネルギーの流れとかそういったものが見えているのだろうかこれは・・・・・・


 光るドームの中では、大吉さんの腰のあたりに光が集まっている。


 ぐ、あ。と言ってもだえる大吉さん。


「数分で終わる。我慢しろ」


 有無を言わさない口調がやはりキツい性格、雰囲気を思わせる。


 それでも避けてやり過ごそうと思わないのは大吉さんの親族だからなのだろうか。

 元いた世界だったら遠巻きに見て、出来るだけ近寄らないタイプだったろう。


 とか考えながら、ものすごい集中している事を感じ取っていたので、私も身動きせず邪魔にならぬようにその場の空気と化している気持ちで見守った。


言葉通り、数分で腰部分の光が薄くなり消えていった。


夕紀美さんの額には汗が滲んでいる。


「終了だ。」


 そう言ってペンダントトップを覆っていた手を下ろすと、ふーっと深呼吸をする。


「お疲れ様です・・・・・・」


「しばらく動くなよ、大吉」


 鞄からハンカチを取り出し汗を拭うのをみて、


「お茶でも淹れましょうか?」


「ありがたい。ぬるめで頼む」


 大吉さんもすぐに動けるようになるのかな、と思って一応3人分のお茶を用意する。


「ところで。お嬢ちゃんは大吉の・・・・・・嫁かい?」


「・・・・・・ち! 違います!!!」


 突然のセリフに

 じょばばば〜っと急須の先が茶碗から外れて溢れ出る。


「お店の方でアーティファクトの見習いをさせてもらってます・・・・」


 いそいそと、畳に溢れる前にっ!と、こぼした茶を拭きながら答えると、


「へ〜・・・・・・」


 含みのある笑顔で大吉さんに目線を移した。


 こちらからは大吉さんの顔は見えないので、どんな表情をしてるのか。

 気にはなるけどみたくない気も・・・・・・


「・・・・・・俺の方が教わることも多いんだがな・・・・・・」


「自己紹介が遅れてすまないな、こんなでも大事な甥っ子で腰を悪くしたと聞いて心配でな。早く治療してやりたかったんだ。私は大吉の母親の姉で夕紀美だ。よろしく」


「わたしは藍華です、よろしくお願いします」


「藍華、夕紀美さんには話しても良いか?」


体はまだくの字のままだが、先程とは打って変わってしっかりとした声で大吉さんがそう言う。


大吉さんが必要と判断したならば。


「はい」


クゥさんと同郷であること、“きょうと”出身ということにして過ごしていることを端的に説明した。


「驚いたね、あのクゥと同郷とは・・・・・・普通じゃなさそう、と感じたのは間違いじゃなかったか。しかし、懐かしいな・・・・・・。あれからもう10年弱か・・・・・・」


そうか、夕紀美さんはクゥさんとの面識があるのか。

“おおさか”へ行った時に会ったのかな?


「・・・・・・懐かしい、か・・・・・・」


「彼女とは類友だな。気質も似てた。

飾らず言い合える良い仲だったと思ってるが?」


 表では一徹して“良いお店”

 裏では歯に絹着せぬ物言いしつつも、自分と反する意見も貶すことは絶対にしない、そんなクゥさんのツイッタを思い出しながら、夕紀美さんの性格を想像して、少し緊張の糸がほぐれた。


「夕紀美さんは誰に対してもソウな気がするんだが・・・・・・」


 大吉さんの小さな呟きは無視して、こちらに話が振られる


「彼女はあちらに帰る方法を探していたが、藍華もかい?」


「・・・・・・わたしは・・・・・・

そうですね────」


 帰りたいかと言われると、今ははっきり答えられる。


「帰る方法を探して、帰らない方法を知りたいです」


 動機は不純でも、理由はそれだけではない。


「あちらに待ってる家族も人も特にいないですし、何よりこちらの世界が好きになってきてるので」


 大吉さんのそばにいた・・・・・・い、とかいうのは置いといて。


 ハンクラ作品が不思議な力を持つ世界なんて、普通望んでも来れるものではない。


『来てしまったなら楽しもう』と、今は心の底からそう思える。


「そうか・・・・・・。

有能な人物が知人にいるというだけでもこちらはありがたい」


「ゆ・・・・・・有能かどうかはちょっと───

クゥさんほどではないですから!!」


 何をどうして有能と判断するのか。

 クゥさんのような製作能力はないし、気がつくと200個も桜のワイヤーひねれるわけでも、思いつくがままに模様を彫ってスタンプできるわけでもない。


 おおよそこちらの世界で重宝されるような技術は自分にはないと思っているのでそう言ったのだが、


「私はそう感じたが」


「藍華は有能だよ。夕紀美さん」


 もう、動いても良いか?と大吉さんが口を挟んできた。


「修復の仕事は丁寧だし、今あるものを上手に使ってる。クゥさんとはまた違った有能さがある」


 ドクン


 クゥさんとは違うユウノウサガアル??


 ドコガ???


 比べられることはしょうがないし、もともと雲の上の人と思っているのでそこまで気にはならないけれど、それでもちょっと胸にきた。


 しかもわたしのことを認めてくれているらしいその言葉にキュンキュンしてしまう。


「ゆっくりとならいいだろう。」


 言われた通り、ゆっくりと起き上がり、あぐらをかく。


「ふーっ」


「どうだ?何か違和感は感じるか?」


 目を瞑り、腰に手を当てたり真上に伸ばしたりしてみる


「今のところない。さすがだな、ありがとう。礼はどうしたらいい?」


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