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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 四章 キョウトにて
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133.夕紀美さん


 歳の頃は50代と言ったところだろうか。


 肩にかかるくらいの長さの美しいストレートヘアをポニーテールにし、赤い花のポニーフックをつけていて、それが髪色を赤紫のメッシュが入った感じに染め上げていた。


 細い金縁のメガネが印象的で、その声色と釣り上がった眉からも、何というか強そうな印象を受ける


 荷物はショルダーバッグが1つ。

 チャックの部分に、レプリカのチャームが付いている。


「わたしは医者の夕紀美だ。大吉という者の治療に来たんだが」


 わたしがその顔をガン見している間、じっと頭から足の先まで一瞥され、変わらぬ表情でそう言われる。


「あ!はい!どうぞこちらです」


荷物を持ったまま部屋へと案内をする。


襖を開けて、まず夕紀美さんを通す


「生きてるかー?大吉」


自分も室内に入り、荷物置き場として用意されているスペースに持ってきた鞄等を置き、大吉さんの寝ている布団の横に座布団を持ってくる。


「どうぞ」


「ありがとう」


 勝手に顔から想像して、キツい性格な人だと思っていたけれど、中身はそうでもないのかもしれない。


 診察の邪魔にならないよう、夕紀美医師の少し後ろに自分も座る。


「大丈夫か?大吉」


 青い顔して横たわってる大吉さんに声をかける夕紀美さん。


「・・・・・・おばさん、ありがとぅ・・・・・・」


「夕紀美さんと呼べ!!

・・・・・・珍しい。痛みで朦朧としてるな?」


 呼び方に文句を言いながらも、ちゃんと大吉さんの様子をみている。


 ショルダーのチャームをはずして中から小さな小箱を取り出す。


「腰をやられたと言っていたな?」


「・・・あぁ・・・ここまでは痛み止めで騙し騙し来たんだが、治療もあるんで今朝から痛み止めはしていない。」


「いい子だ。本治療に影響が出るからな。

まず痛みの詳細を()よう」


 いい子扱いされる大吉さんがかわい


 小箱を開けると、中にはさまざまなチャームが入っていて。その中から1つを選ぶと、メガネを外して左の飾り部分に取り付けた。


 その部分の形から、以前は半球かオーバルタイプの物がハマるようになっていたのだと思われる。


 そのチャームもじっくり見てみたいけれど、今は夕紀美さんが何をどうするのか、の方に興味があった。


 チャームをつけたメガネをかけて、その力を発動すると、メガネのレンズが光りだした。


おぉ、リアル光る眼鏡!


 わたしの位置からは光ってるようにしか見えないけれど、その眼鏡をかけた状態で見ると何かが見えるのだろうか。


「これは・・・・・・たしかに腰がヤられてるが。

久しぶりに何か激しい運動しただろ。

その影響もあるようだが・・・・・・

他にも原因がありそうだな。」


 難しい顔をしながらそう言った。


 眼鏡を外して右側の部分にもう1つチャームをつけ力を発動する。


そして大吉さんの腰の上の空間に手を翳したり左右に振ったりしてから再び眼鏡を外した。


「内側からのものは治療可能だ。だがこれはそのうちぶり返すぞ。外側からの問題を解決しないと。」


「えぇぇぇ・・・・・」


力なく、情けない声を出す大吉さん。


「黒い影だ。黒い影が見えた。わたしの診察用具ではこれの出所まではわからない。

 とても細い糸で繋がってる感覚はあるんだが。。

 恐らくこれに対応できるのは神道職の者だ。

 後で一応紹介状を書いてやる。」


 カバンからペンとノートを出すと、何やらサラサラと書き込んだページをビリっと破って大吉さんの目の前に置く。


「話は通しておくから、こっちにいるうちに行っておけ。」


 声色が柔らかい。大吉さんのことを大事に思ってくれているのだな、と感じて何故だか嬉しくなる。


「ひとまず内側からは、しっかり治してやる。そこのお嬢ちゃん、今からガイドの出るところにコレを置いてくれるかい?」


 そう言って出されたのは5個の玉と台座。


 大きさからしてショルダーバッグの半分以上を占めていただろうそれらは、どれも一見無色透明に見える、拳よりやや小さめくらいの大きさの玉。


だけど───


「ものすごいアーティファクトですね・・・・・・」


 そこにあるだけでこの雰囲気、力を発動しているわけではないのにこの光。


 力の弱いレプリカの発動発動時くらいは光っている。


「わかるのかい?」


「力を発動していないのに、ものすごいひ・・・・・・パワーを感じます」


 ふと通常アーティファクトの光は見えるものではないということを思い出して誤魔化してみるが


「お嬢ちゃんも“普通”とは言い難い力を持ってるみたいだね。」


 多少驚いた風にそう言ってマジマジと顔を見られる。


「込み入った話はまぁ後にしておこう。早いとこコイツを治してやらなきゃな」


 そう言って胸元のチェーンを引っ張って五芒星の形をした金属片の封入された、シンプルなオーバルカボションのついたペンダントトップを取り出した。


 アーティファクトを発動すると、アーティファクトの光が増す。


 光が増すのは他のアーティファクトも同じことだが、夕紀美さんがそれを発動した時、コレまでとは明らかに何か違う圧を感じた。


 なんというか、アーティファクトから力を引き出す時の力の流れが明らかに何か“違う”と感じた。


 発動直後に、大吉さんを囲むように5つの光の点が現れる。


 察したわたしはすぐさま一つ一つ台座と玉を設置していく。


 光の点を繋ぐと、五芒星になる配置。

コレが本格的な医療用のアーティファクトか。。。!


 設置した玉は見た目は無色透明。触れた感じは水晶のような感じなのだけど・・・一部分穴を開けてまた埋め直した形跡がある。。

 自分でもよく気づいたな、と思うけどそこだけ光が増してるから、一目瞭然。

 何で埋められてるのかははっきりとはわからないけど、おそらくレジン。


 配置が完了すると、わたしの座っていた位置が五芒星を円で囲った時内側にくると気づき、なんとなく座布団を引いて夕紀美さんの斜め後ろに座り直す。


「・・・・・・ありがとう、助かる。」


設置し終わったわたしにそう言うと、

深呼吸をしてただ一言。


「発動せよ!」


 胸のあたりにあるペンダントトップを両側から覆うように手をかざしてそう言葉を発すると、

 その声に呼応して、まず初めにペンダントトップが。次に5つの玉の光が同時に増す。


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