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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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130. 手毬

荷物を持って部屋に着くと、ちょうど達磨頭取が来ていた。


「恩に着る、頭取」


ぐったりと畳の上に横になっている大吉さんの元に、何かを持ってきてくれていたようだ。


サッカーボールよりは小さいくらいの大きさの、手毬のような見た目で、すっぽりと木の鉢に収まっている。


木の鉢には宿の焼印が入っていて、手毬はどうやら固定されているようだ。


「有線アーティファクトか! ありがたい」


それを目視してそう言う大吉さん。


有線アーティファクト??


「じゃぁ、大吉さん、終わったらフロントの方に連絡を入れてくれ。宿の者が取りに来てくれるから。わしゃ諸々の手続きの続きをしてくるよ」


そういうと達磨頭取は部屋からいそいそと出て行った。


「それってどういうアーティファクト何ですか?」


「タイムラグなしで連絡が取れる超貴重なやつなんだ」


だいぶ長いこと使われてきたようで、所々糸が緩んでいるようだけど、細い糸で作られている模様はとても美しく、古くからの伝統を感じた。

わたしのいた時代にもある伝統を。


「手毬の形をしてはいるけれど、中にレジン部分が入ってますね?」


糸を使ってマクラメブレスを作ってきたので解る微かな違い。


アーティファクト特有の光の柔らかさが違う。

レジンを使われたものは強く硬い輝き。

糸を使ったものは優しく柔らかい輝き。

天然石はそれだけでそれぞれの種類の光を持つようで。


ブレスレットを作っていてもそれぞれに個性が見えて楽しかったのだが、


この有線アーティファクトからは系だけではなくレジンが中に入っていることがわかる。


「よくわかったな。。。!これは大きさからすると内部はレプリカだな。手毬の内部にレプリカの玉が入っていて、それを原動力に動くんだが、内部とこの外側の手毬糸部分、両方合わさって完成されるアーティファクトで、作り手も少なく成功率もなかなかに低い。

だからか“トウキョウ”の方でコレがあるのは皇居の中に1つだけなはずだ」


そこまでなのか・・・!


よっぽど難しいのだろうな・・・

中身が見て見たいけれど、分解したらまず今の自分には元に戻せないだろう。


手毬は作り方知らないし。

作っては見たいけど・・・


「“キョウト”の方に行くと数は多いんですか?」


「政府の主要なところには必ず置かれている。

んで、俺の知り合いの医者も政府御用達の医療機関で働いてるから、これがあったらオンタイムで連絡が取れる」


「連絡取ってる時私ここにいても大丈夫ですか?」


頭取はおそらく連絡取ってる最中にいてはならないと、いそいそと出て行ったのだと思ってそう言うと、


「大丈夫に決まってるだろ?」


???じゃぁ何か別の急ぐ用事があったのかな???


「じゃぁ荷物の整理してるんで、連絡取ってください」


そう言ってひとまず持ち歩かねばならない貴重品と部屋に置いておけるものと分ける。


あと念のため1度『選択の魔法陣』のレプリカを一度元に戻そう。


特に意識してはいないけれど、安全な場所で数分でもいいので元のレプリカの形に戻すことにしている。


なんとなく。


大吉さんが桶手毬 (桶に突っ込まれてる手毬だから)に手を置き、住所と機関名を言うと、手毬がほんわり光だし、ルルルルルル、ルルルルル、と柔らかい音で発信音のようなものが鳴る。


《はい、こちら政府医療機関のキヨミズ総合病院です》


「トウキョウの方から来ました大吉と申します。夕紀美(ゆきみ)医師は在院でしょうか?」


《しばらくお待ちください》


無音状態でしばらくすると、


《久しぶりだな、大吉。有線で連絡してくるとは珍しい、こっちの方に来てるのか?》


少し低めの女性の声が聞こえてきた。


「久しぶり、あぁ。今“クサツ”にいるんだが、明日暇はあるか?」


《・・・ぁあ?! 暇なんかあるわけないだろぅ・・・相も変わらず馬車馬のように働いてるんだ。

何か用事があるなら田次郎を通して、理由つけて依頼しろ!

あそこからの依頼ならこちらは断れん》


「やっぱそうなるかー。わかったよ、田次郎叔父さんのとこからすぐに依頼が行くようにするから、時間は何時でも大丈夫なのか?」


《問題ない。で、一応聞いておくが、何の用事だ?》


「ぃや〜・・・ちょっと腰をやっちまって・・・治療を頼みたいんだ。」


《腰を・・・? お前が・・・??》


「あぁ・・・・・・」


《・・・ぷ・・・あ〜っはっはっはっはっはっ!!!》


止まらぬ笑い声。


「笑いすぎだろ・・・・・・」


《ひーっひっひ・・・ィヤまぁすまん、あの! ヨチヨチ歩きしてたお前ももうそんな歳かー!!》


笑い声は聞こえずとも、まだ笑ってると分かる間。


《いいだろう、指定された時間に向かうよ。あんまり無理はするな? 補助してくれる仲間か誰かはいるんだろ?》


「まぁ、な」


チラリと荷物整理中の私を見る。


もちろん全力で補助しますよ!とガッツポーズを取る。


「大丈夫だ。じゃぁ明日の昼飯時、12時に草鈴園という宿まで来てくれ。治療後に一緒に飯でも食おうぜ。もちろん俺の奢りで」


《了解した。じゃぁ気をつけて来いよ》


「サンキュー、また明日」


そう言って、手毬の上に手を乗せると、淡い光は消えて、通信は切れたようだ。



「そんなわけで、明日到着したらすぐに治療受けて街に繰り出して昼飯な!」


こちらを向いて、先ほどよりは顔色も良くそういう大吉さん。


「さぁ、じゃぁもう1箇所連絡取らないとなー。」


田次郎叔父さん、例の研究所で働いているという大吉さんの叔父さんか。


大吉さんは再び鞠に手を置き、繋げてほしい場所を告げた。


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