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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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129.太っ腹な頭取と“くさつ”と黒い影


服を乾かしたところで、ちょうど出発することになり、そこからの道中は何事もなく順調に進んだ。


雨も止んで無事に山越え谷越え森を越えて。

“くさつ”につく前に、少し遅めの昼食を取ることになる。


普通に降りてきた大吉さんを心配して、1番目の警護を終えた耕助さんがやってきた。


「大吉さん、本当に大丈夫か?

ぎっくり腰は後がきついぞ?」


耕助さんの言葉に、明るく答える大吉さん


「“くさつ”に着いたら“きょうと”の知り合いの医者に連絡をとって、すぐにみてもらえるように手配するから大丈夫ですよ」


「本当にスミマセン・・・身代わり護りもルーン文字の“ベルカナ”も外的傷にしか力を発揮しないなんて・・・」


「護衛や探索といったらそっちが優先だから当然だろ。それに“ベルカナ”はしっかり痛み止めしてくれてる。十分役に立ってるし助かってるよ」



警護中のフェイから声が飛んでくる。


「ハンモックも一役買ってるだろー!」


そう、ハンモックも絶妙な加減で張られていて、とても良い感じに振動を吸収してくれていたようだ。


「“くさつ”の宿はもう決まっているし、そこで一泊して、翌日の昼飯後に出発したら、夕食前には宿につける。宿の方には先に連絡をしてあるから、全員宿探しに時間を取られることはないし、大吉さんはそこの宿に医者を呼べばいいだろう。」


と、達磨頭取が自分の食事を持ってやってきた。


「あれ、“きょうと”の宿は自分たちで探すんじゃなかったか?」


大吉さんがそう問いかけると、頭取がいい笑顔で答えた。


「道中な。色々護衛以上に助けてもらったんで。せめてものお礼だ。宿代も半分は持つから他の安宿と同じ程度で泊まれるはずだ。全員楽しんでってくれ。」


「お。。。俺たちもか。。。?」


達磨頭取の言葉に、耕助さんが驚いた様に言う。


「あの後からの働き様でも、減給以上のことはいらんだろう?」


さも当然、と言う様に言い放つ達磨頭取。


「そうですよ。“なごや”ではお世話になりましたし!」


私が言うと大吉さんも参加する。


「耕助さんからの差し入れの“なごや”名物の“赤福”。。。最っ高に美味かったし」


めちゃくちゃ感動しながら食べてたもんね。


「大吉さん達にはちょっと事情あって部屋と負担率は違うがな!」


がははははっと笑う頭取に、まだ怒ってくれているのかアグネスとフェイからの視線がキツい。


もともと私的には棚からぼた餅みたいな感じに手元に来た金銭だったので、あまり実感がわかないというのもあるのだが。


「遠慮なく受け取るためにも警護は順番通り回してくださいよ〜!アグネス、フェイ!」


手をぐるぐる回して主張する。


何のことだかわかっていない耕助さんははてな顔だったが、大吉さんが思っていたよりは大丈夫そうなことに安心して、チームの人と食事を取りに行った。


「さて、じゃぁ適当に持ってくるんで、大吉さんはおとなしく待っていてくださいよ?」


釘を刺してから食事をもらいに立つと、


「あぁ・・・よろしく頼む」


素直にそう答え、見送ってくれる。


じっと顔を見られて、思わず視線を外していそいそとその場を後にする。


今まで通りでも十分。

十分幸せだけども───



食事も警備も無事に終え、一行は“くさつ”へと到着した。


日も傾いてきていて、温泉街なだけあって、浴衣人口が多いようだ。

例によって馬車道と通行用の道が分かれていて、大通りがすれ違うところでホコ天の方を垣間見ただけだったが、観光客も結構いそうな感じ。


この宿の仕組みはほぼ同じだった。

馬車置き場があり、専門の護衛も付き。


「何というか、考えられてますよねー。」


「何がだ?」


宿の作りと仕組みですよ。


市街地から遠すぎず、馬がゆっくりできて馬車の安全も確保され、それでいて寝泊まりできる旅館があるっていうところが。


聞くと、こういう小隊向けの旅館も少なくはないようで、それなりに繁盛しているようだ。



「電車は高いし、バイクじゃ大荷物は運べないしな。

こうなってくると伝説の収納系アーティファクトの解明とレプリカ化が早いところ確立するといいのになーって思うよ。」


伝説の収納系アーティファクト。


達磨頭取が持ってるアレもかな。

無限の空間が広がってそうだったし。


宿に到着すると、すぐに大吉さんはフェイの肩を借りて客室へと向かった。



「ありがとなー。。。」


「いいってことよ。大吉にはたくさん借りがあるしな。」


ちょっとげっそりしながらも苦笑する大吉さん。


「荷物は私が持ってくんで、大吉さんをお願いします、フェイ」


「フェイの荷物はあたしが持ってくよ。」


アグネスがそう言うと、頼んだぞーと言いながらゆっくりと歩いていく2人。


軽く見送ってから荷物を取りに行こうと大吉さんたちの後ろ姿を見送ると。。

大吉さんの周りに何か黒い影が見えた気がした。


・・・??・・・


目を擦ってもう一度見ると影は消えていて。

気のせいかと、荷物を取りに行く。

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