012.フラッシュバック
大吉さんがご飯を用意してくれている間に、彼の指示した物を物置部屋に移動させる。
と言っても、散らばっていた物を箱2つに入れ、それを移動させただけで、部屋は十分に片付いた。
「この部屋にしばらく住む、か…………」
好きなように模様替えしていいと言っていたけど、このままでいいや。
作業用机のあたりは大吉さんが自分で色々持って行ってくれて。引き出しとかも空にしてくれたので、リュックサックの中身を広げてどんどん片付けていく。
レプリカ製作は自分もできることがわかったし。
ほんと魔法みたいで超楽しい…………‼
あとは、いろんなアーティファクトやレプリカの力を使ってみたいが、それは我慢。
色々壊したらいけないから。
よし、片付け終わり!
足早に喫茶店部分に向かう。
今日は店はお休みの日だそうで、仕入れやらレプリカ修理やらで外出していたそうだ。
「大吉さーん!
片付け終わりました!」
「おー、ご苦労さん。
みてていいぞ、アーティファクトとレプリカ」
ジュワッッといい音をさせながらフライパンを振る
「ありがとうございますっっ!」
壁にはネックレスや耳飾り、おそらくチェーンベルト? とか大物がかかっている。
壁にくっついている低めのカウンターにはブローチやブレスレット、キーチェーン などが並べられている。
気をつけてみてみると、レジンっぽい物にはあの白濁のある物が多い。わたしには白濁の具合でレプリカかそうでないかが見分けれそう……。
それにしても金属部分には錆が出てるものが多く、年月を感じる。
そしてレプリカでない本当にレジンのようなものもいくつかある。
黄金糖よりも濃い飴色のものも多く、内包物から元は無色透明だったのだろうことが想像できる。
空をテーマに作られた作品も多いようだ。
ただ、色が変色してしまって青空が半分夕空のようになっているものばかり。
青色はやっぱり緑っぽくなってくるのだな……
変色のとても少ない物が2品ほどあるが、保存状態が良かったか、使われている材料が変色の少ない物だったか、どちらだろうか?
そして、意外だったのがワイヤーを使ったアクセサリーが多いことだった。
ワイヤーラッピングされた石や、めがねどめのブレスレットなどもある。
「大吉さん、コレ、手にとってみてもいいですか?」
シンプルなメガネどめブレス、石は細石でおそらくトルマリン……?
「あぁ、いいぞー。ちなみにオレンジ色の札のやつが、レプリカだ。そしてそれは俺が作ったやつなー」
なるほど、アーティファクトは商品の一割にも満たないのか。
「ありがとうございます」
そーっと手にとりみてみる。
シンプルだけども間に丸玉挟んだり、複数を一緒にメガネどめたりしていてカワイイ。
じーっと大吉さんをみて、またブレスレットに視線を戻して、あの大吉さんがこのブレスレットを───
とかしみじみ思いながら元の場所に戻す。
ブローチコーナーで気になったのは、花が封入されているタイプの物。
札からアーティファクトだと分かるが、色はそこまで飴色ではなく、保存状態も良かったのだろう。が、花の周りに大きな気泡があり、気泡が長い年月を経て収縮し小さくなるのにあわせて表面が凸凹になる現象が見受けられる。
自分の失敗作すらも重宝されるこの時代(世界)きっと、いろんな人のこっぱずかしい失敗作も重宝がられて大切にされていることだろう…………。
もしかしてあの失敗作やあの初期作品ももしかしてここでは大事に…………⁉
思い出すと恥ずかしい記憶と嬉しいムズムズする感覚がフラッシュバックしてくる。そのなんともいえない感覚に思わず頭抱えてもんどりうっていると、大吉さんからの救いの声がかかった。
「おーぃ、飯できたぞー」
「はいぃ!」
いい匂いー!
胡麻油にスパイスの効いた香り。
用意されたご飯は、チャーハンと卵スープのようだった。
「おーいーしーそ〜‼」
「ゴマ醤油チャーハンとセットの卵スープだ。召し上がれ♪」
カウンターに置かれたそれは、一人暮らしの身には幸福の逸品。
自分で用意しなくていい!コンビニ弁当じゃない!
ここは天国か……⁉
「いただきまっす!」
一口頬張り、目頭を抑え。
二口食べて突っ伏した。
「ぉい?どした…………?
大丈夫か…………?」
「美味しいです……!
語彙が……己の語彙不足が憎い…………‼」
「いや…………そこまで…………」
「めちゃうまです‼」
この後
泣きながら完食した。
しっかりおかわりもした。




