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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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127. 伝説の赤福


朝食後の出発時。


やはり食事の用意がないと、色々楽だ。


旅館での朝食終了後、30分の準備時間を設けてそれぞれが用意をしていた時。


少ない荷物を運び込んでいる時に、耕助さんがやってきた。


「大吉さんに藍華さん、コレ良かったらどうぞ」


受け取ったのは2つの包み。

特徴のある薄く少し渋めのピンク色の包みをみて大吉さんが言った。


「コレは・・・!!まさか伝説の赤福?!」


伝説て。


心の中でめちゃくちゃツッコんだ。


「いや〜ちょっとツテがあってな。出来立てが1番うまいから、今朝届けてもらって。

よかったら道中に馬車の中で食べてくれ」


そう言って、少し大きめな袋を持って、他の商隊メンバーの所へ行く。


「赤福て、伊勢の方の特産品だった気がするんですが・・・“ナゴヤ”にもあるんですね?」


「あぁ。ここで細々と続けられている支店があってな。1日に作られる数も決まっていて、競争率も高い。それを小サイズとはいえ人数分用意するなんて、ツテがあるとはいえ容易ではなかったろうに・・・

ちなみに俺は過去に一度だけ・・・」


お、食べたことがあるのかな?と思ったら・・・


「目の前でみーばぁが食べているのを見たことがある」


みーばぁ・・・

お前にはまだ早いわ、とか言いながら食べてそう・・・。


あちらにいた時は名古屋はおろか、伊勢の方になんて行ったことがなかったので、特産品ということしか知らないけれど、まさかこの世界で食べることになろうとは。


「多分、自分のチームから侵入者を出てしまったことへの詫びもあるかもしれないな・・・」


ポツリとそう呟く大吉さんからはなんの感情も見えなかった。

あえてそうしているかのようには見えるが、深くは追求しない。


どんな小さくとも、組織の長とは大変なものである。

全ての責任を負わねばならないのだから。






一行が出発し、山道に差し掛かったところで、雨がシトシト降り出した。


「雨・・・大丈夫ですかね・・・?」


「天気予報ではそこまでひどい雨にはならなそうだということだから、大丈夫だろう。酷くてぬかるみに車輪がハマるくらいじゃないか?」


車輪がハマるって、それかなり大事なんでは。。。


「ところで、盗賊が出るのって、あそこのあたりだけだったんですか?」


「俺はそう聞いているが。

まぁ油断はしないことだな・・・

盗賊だけが絡んでいるわけではないようだし・・・」


そう言い、吃る。


自分自身、そこまで気にはしていないつもりだし、そうなるよう心がけて行っているけれど・・・夢見の悪さからもやはり心の傷は癒えていないのだろうか・・・


黒い霧の正体も謎のまま。


シトシト降る雨に共鳴しているかのような自分の心に、

アグネスの言葉が響く。


“上書きしてもらえ”


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


ギュゥで一緒に寝ただけじゃダメデスカ・・・?


ぃやもうギュウを思い出すだけでも心は晴れるというか悶えるのだけど・・・・・・



雨はひどくなることはなかったが、止む気配もなく。


大きなぬかるみがあるところにさしかかった昼直前、駆け抜けるはずだった道の途中で何頭もの馬の鳴き声とともに突然馬車がスピードを落とし止まる。


「ユーリさん、何かあったのか?」


大吉さんが荷物の隙間をぬって前方へ行き、問いかけた。


「1号車がぬかるみに車輪を取られて止まってしまったみたいです」


少し先の方で、確かに1号車が止まっているようだ。


後ろの3号車も無事に止まれたようで、馬たちが水払いをしていた。


あららら、大吉さんの予想が的中。

よくあることなのか・・・?


「藍華、ちょっと1号車の方に行ってくる」


そう言ってヒラリと馬車から飛び降り駆けて行く。


「お気をつけてー!」


そこに後ろの方から馬が一頭やってきて。


「どうしたんだ?」


「耕助さん!1号車が車輪をぬかるみに取られてしまったみたいです」


ユーリさんがそう答えると、


「じゃぁ、力仕事になるな。行ってくる!」


馬車と岩壁の隙間を器用に抜けていき、1号車の方へ向かう。


じゃぁわたしは付近の警戒でもしておこうか。

と敵意レーダーを起動させると・・・


レーダーの端に2個の反応。

端だから距離的には50メートル近く。

そして位置は道脇の崖下の方。


どうするのが得策か。


一応連絡しておこう。


『大吉さん、レーダーの端に反応2つ。方向的には崖下の方になります』


『了解した。動きがないならとりあえず注意だけしておいてくれ。念のためフェイとアグネスには伝える。

ナイスサポートありがとうな!』


『そちらはどうですか?』


『耕助さんがきてくれたから多分大丈夫だろう。車輪が抜けたらすぐに出発は出来るはずだ。ユーリさんと3号車に左車輪部分に気をつけて、最低でも20センチほど左を行くように言ってくれ』


『了解です!』


「ユーリさん、1号車が出発できたら最低でも左に20センチほどズレて通過してください、だそうですー!」


「わかったわ。ありがとう藍華さん!」


「3号車に連絡してきますねー!」


そう言って、躊躇うことなく雨の中を3号車の方へと向かう。


何故ならば例え雨に濡れても、泥まみれになっても、水のアーティファクトと風のアーティファクトの混ざった様なもので一瞬で泥を落とし、乾かすことが可能だから。


濡れたままになって風邪をひくこともないし、もしかしたら普通にお風呂に入るより清潔かもしれない。


ちなみに、ここまでの道中風呂に入れたのはあの湖でだけで、あとはそのアーティファクトを借りて体をきれいにしていたのだ。


「タイラさーん!」


3号車の御者は今日もタイラさん。


「1号車の車輪左側がぬかるみに取られてのストップです。出発したら20センチ以上左にずれて行ってください!」


「了解したー!」


手を振りながら答えるタイラさんを確認し、2号車へと戻る。


再びレーダーを確認するが、二つの光は動かず。


結界(アルジズ)を張る心の準備をしておこう。


そう思った瞬間。連絡用アーティファクトからうめき声が。


『う・・・・・』


続いて雨の中きこえてきた声に、大吉さんに何かが起こったとわかった。


「大丈夫か?!大吉さん!」


耕助さんの声だった。


駆けつけたい。

駆けつけたいが、それはやってはいけないこと


何者かわからないが敵意を持つものが2人レーダーの範囲内にいる


私はここから離れられない。。。!


『大丈夫ですか?!大吉さん!!』


『・・・大丈夫だ・・・藍華はそこにいてくれ・・・』


苦しそうに聞こえる声に、心配はつのる。


大吉さんは耕助さんとフェイに両側から補助されながら戻ってきた。




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