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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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126. 黒い影と野球拳のその後

翌日───


カーテンの隙間からさす太陽の光と、鳥の声。


「・・・ん・・・」


気がつくと大吉さんはもう着替えて座ってお茶を飲んでいた。


二日酔いもあって、良い目覚めとは言い難いが、何故か幸せだと感じた。


「おはよ、藍華」


「おはよぅございます。。。」


目を擦りながら起き上がると、はだけそうになる胸の部分をあわてて手で押さえながら布団の上で正座する。


「昨晩な・・・藍華がうなされてる時に黒い霧のような影があったんだ。」


・・・夢じゃなかったのか・・・!!

黒い霧を大吉さんが手で払ったけどまた戻ってきて抱きしめられて───

ん、そのあとどうなったんだっけ?


「昨晩───手で払ったりしてなんとか霧散したんだが・・・覚えてるか・・・?」


「ふ・・・ふんわりと・・・?黒い霧みたいなのが目の前にあったのは覚えてます・・・」


あえてみなまで言わなかった。

抱きしめられた後から覚えてないのは事実で・・・


「霧散した後、いい寝息立ててたからそのまま置いといたんだが・・・」


あ、そうなんだ。

抱きしめられたままふわふわした幸せ気分でそのまま寝た、と。


「多分悪夢・・・を見せてるのはソレじゃないかと思うんだが。前の時にもあったし・・・」



「・・・黒い霧、ですか・・・?」


「みーばぁが別れ際に言ってたんだ

『出来るだけ1人にするな、特に夜。何か強い念のようなものが付き纏ってる。』って。

何か心当たりはないか・・・」


アーティファクトの何かだったら自分で気づきそうな気はするし。心当たりなどないけれど・・・


「“念”というのがよく分からないですが・・・心当たりというか、言いそびれてたことがあるんですが・・・」


神社で会った翠さまの事と彼に言われたことを話す。


「なに・・・?あそこの神社の神でも落とせない何かが付いてるって・・・?」


「はい、陽が落ちるほどに濃くなってくとも言ってました。」


「で、眷属に会いにいけって、どこの神だ?」


「それは・・・“きょうと”に行ったら導かれると言ってました。」


導かれるための印がどんなふうにつけられたのかは説明を省いた。

やましいことはないんだけども・・・なんとなく。


「そうか・・・あそこは稲荷神だったはずだから・・・“きょうと”に着いたらできるだけ早く行こう。多分伏見稲荷の方だとは思うから。泊まる予定の宿からそう遠くはないはずだ。」


「ありがとうございます・・・」


「あっちでの予定は、今のところ糸屋と、研究所だけだ。そこに神社探しが入ってもなんら問題はない。滞在予定日数は5日ある予定だからな。」


お茶を一口飲んでから


「あぁ・・・あと向こう着いたら1日俺にくれ・・・よかったら・・・」


少し言いにくそうにそう呟き頬をぽりぽりかく


「・・・仕入れとかですか?もちろん」


もちろんオッケーですよ、と続けようとした時、


コンコンコンコン♪


軽快なノックの音がしてきた。


「藍華〜♪起きてるかー?朝風呂行こうぜー?」


アグネスだ。


「はーぃ!」


「朝食まではまだ時間あるからゆっくりいってこいな。。」


「じゃ。。。ちょっと行ってきます。」


いそいそと用意して、浴衣を整えてアグネスと女湯へ向かう。


露天風呂があるようで、趣のある小さな庭付きの通路をいった先に浴場入り口があった。


「ところで、昨晩はどうだった───」


じぃと私の顔を見るアグネスに、


「よく寝れたと思いますよ?」


そう返すと。


ニヤニヤしながら、(首元のキスマークを発見して)


「それは良かった!」


そう言って、女湯の暖簾を退けて中に入っていった。




出発は朝食後1時間を目安だそうで。

朝食の用意をしなくても良い今日は、いつもよりはゆっくりできる感じ。


でもみんな結構飲んでたので二日酔いとか大丈夫かちょっと気になった。


「アグネスは二日酔いとかは大丈夫ですか?」


ゆっくりと湯に浸かりながら問うと、


「あーあたしはぜんっぜん平気〜。

フェイがな。アーティファクトがないときついとこだったな。」


全く飲めないわけではないが、アグネスに付き合って飲むと、先に酔いが回ってしまうし、大変なことになるのだと。


そこまでしてお酒を飲むのは何故なのか。


「藍華はそこそこ強いんだな?」


「強いーというよりは、無理して飲まない、ですかね。昨日は普段よりずいぶん飲んじゃった方だと思います。」


千鳥足になるまで飲むなんて、向こうの世界では考えられなかった。


「あんなに飲んだの多分初めてですよー。」


旅行や泊まりで飲み会は行ったことがなかったし。


「ほんのり頬が桜色に染まった藍華は可愛かったぞ〜?横で大吉の目が光っててコワカッタけどな」


プカプカと浮かぶ二つの山を横目でみながら吹き出してしまう私。


「光ってて・・・て・・・そんなに飲み過ぎだったかな私・・・」


そこまで心配されてるとは。。。


「・・・」


後で謝らなければ。。。!


横で呆れ顔で、でも楽しそうにしているアグネスには気づかない。


「そういえば野球拳はどっちが勝ったんですか?」


ちょっと気になっていたので聞いてみると。


「どっちというか。あたしが全勝したぞ?」


全勝・・・え、全員脱がされ・・・?


死屍累々な光景が目に浮かんだ。

やだ、なにそれ楽しそう。






風呂から上がって部屋に帰ると、大吉さんとフェイが朝食に行くのを待っていた。


「2人はいいのか?風呂。でかかったぞ〜楽しかったぞ〜?」


アグネスの言葉に、


「俺は“くさつ”の方で入るからいい」


と、大吉さん。


そうか、草津と言えば、温泉!


「俺もだな。湯に浸かりながら温泉卵が食いたい。」


フェイは温泉後に片手を腰に当てて牛乳を飲むタイプとみた。


「酒はほどほどにな〜」


「藍華、その時はまたコレ返してもらっていいか。。。?」


紫水晶の小瓶アーティファクトを出してそう言う。


「もちろんです。」


にっこり笑顔で受け取り、男性陣には部屋の外で待ってもらい、アグネスと2人、着替えて一緒に朝食へと向かった。




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