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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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125. 大事な記憶、鬼灯のチャーム

部屋に着くと、

部屋には布団が用意されていた。


「んー。。お布団だ〜」


布団に飛び込みたいけど、その前にシャワー浴びて着替えたい。


ふらふらと布団の方ではなく、避けられたテーブルに向かう私を見て大吉さんが言った。


「風呂はやめとけ、危険だ。シャワー浴びて着替えたら何か飲んで寝よう」


泥酔状態でお風呂は危険です。

シャワーだってやめたっていい。やめたっていいけどやっぱりそこはやめられない。


「大吉さん先に行ってくださいー。梅昆布茶でも飲んで少しでも・・・酔いを覚ましながら待ってます・・・・・・」


飲み過ぎの胃には蜂蜜牛乳か梅昆布茶。

丁寧に、端に寄せられたテーブルの上に置かれているお茶セットの中に梅昆布茶と書かれた缶が目に入ったのでそう言うと、


「じゃぁ茶用のお湯用意してやるから。」


ポットに水を入れ、アーティファクトを発動してくれる。


「ありがとうございますー」



あ、これ湯上がり(シャワーだけど)の大吉さんの浴衣姿に萌えるやつだ。


平常心平常心。


酔っ払っても意識ははっきりしている、けれど体の動きは操りきれていないような感覚。


飲酒運転が法律で禁止されていた理由はここにあるのだろうな・・・とか、あちらの世界のことが頭を掠めると、ふと思い出したあの三種の神器と呼ばれるうちの一品。


ウェストポーチから手のひらサイズのカンを取り出し中を見る。


そこには自分の作ったものやら作品交換で手元に来たもの、お迎えさせてもらった物、こちらに来るときに持ってきていた作品の一部が入っている。


「それは・・・?」


「お気に入りの作品群です」


「全部アーティファクトだな・・・!」


「この鬼灯(ほおずき)のチャーム、あの三種の神器の桜の作者と同じ方の作品なんですよ・・・多分・・・」


ミニサイズの鬼灯チャームを取り出し、天井からぶら下がっているレプリカランプの光にかざして眺める。


懐かしくって嬉しくって。でも今は寂しさを感じない。どういうわけか。


「それは・・・すごいな・・・!」


その真剣に鬼灯を見る眼差しに、ちょっと嫉妬しつつ


あぁ・・・大吉さんの存在がわたしの中で大きくなってきてるっていうことか、と気づく。


「神器と呼ばれるには訳がある。その確かな効果、力の大きさ。崩壊した世界に確かな力で人々を救った経緯があるからだ。神器となるほどのものを作れる人と知り合いってすごいじゃないか」


「クゥさんの作品も神器になってるんじゃないですか?」


絶対になってる。


「クゥさんのは神器にもなってるが。。。主に政府の所蔵になっていることが多い。」


少し苦い顔をして言う大吉さん。


「実用的すぎるんだ・・・クゥさんのアーティファクトは・・・。」


確かに、棒人間の指輪も然髪ゴムにしてるコレも実用的だけど・・・


「3点、神器として奉納されていることは把握しているが、全国の神社仏閣を見てまわったわけじゃないからな・・・。多分まだあるとは思ってる。残りはおそらく政府の期間によって保管、もしくは使用されている・・・」


「クゥさんと直接面識のある大吉さんの方がすごくて尊いです・・・。」


碧空のクゥさんは私にとっては雲の上の作家さん。

フォローフォロワーの関係ではあるけれど、直接のやりとりはプレゼント企画の時のあの数回程度。

畏れ多くてこちらから話しかけるなんて・・・


でもこうなった今となっては、もっと話しかけておけば良かったとも。思ってはいる。


「まず作者が明らかになることは稀だ。

クゥさんみたいに作品に屋号を入れてる者が少ないからな。あとは作風で“おそらく”と言う分類はあるが、特定はあまりされていない。」


作品に名入りのものというと、主に手描きのクゥさんと、天さん。何にでもスタンプしちゃう人が入れてたなぁ。

とふと思い出す。

あの妖精の卵の殻を作った人。


「スマホは店の方に置いてきてしまったので、今度お見せします。あの桜の写真もあるですよ〜」


私の知る作家さん達と、その作品達を。

思えばまだ紹介してなかった。


今度“とうきょう”に帰ったら、ゆっくりあちらの作品情報を大吉さんと見てみたい。そしてこちらで、知っている作家さん達の作品を探してみたい。


「この仕事終わって帰ったらゆっくり話聞かせてくれ・・・」


お湯が沸いて、茶を入れるのは自分でやるので大丈夫ですと、大吉さんをシャワーに送る。


出てきた大吉さんの浴衣姿にやはり心拍爆上がりで、フラフラしながらもなんとかシャワー浴びて布団に倒れ込んだ。



布団がきもちよく、畳の香りも心地よく。

すぐに深い眠りへと誘われる。


ところが───

心地よいはずの眠りが、黒い霧に覆われる夢で再び悪夢へと変化していく。


頭から頬にかけて何かが触れたようで、そこだけが安らかな感覚。

だけど触れていた何かが離れると一瞬で安らぎは不安に変わる。


「・・・や・・・」


安らぎを求めて、自分の口から漏れ出る呻き声。


「なんなんだコレは。。。?!」


聞こえてきた大吉さんの声に、反射的に薄く目を開くと


黒い影が目の前にあり、大吉さんがそれを手で振り払おうとしていた。


胸に薄く残っている絶望の感覚と気持ちの悪さと軽い吐き気に認識したくはないが予想はたった・・・。

またあの時の夢を見たらしい。


「くそっどっかに行きやがれ!」


手で払い除けた上に、首と背に手を回し上半身を抱き上げられる。


すると影は霧散し、戻ってこないようだった。


鼓動が早いのがわかる。というかどんどん早くなる。

見ていた悪夢のことなんか、あっという間に心の中から消え去って、大吉さんのことで一杯になる。


「・・・大吉・・・さん・・・?」


ビックぅうん!と大吉さんの肩が震える。


声をかけても抱きしめられたまま、自分の心拍も激しいままで。


大吉さんに抱きしめられているだけで雪が一気に溶けて流れ出ていくかのように気持ちは落ち着いていく・・・・・




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