123.美女に脱がされていく恰幅の良いサンタクロース
あああああああ10万円金貨と同じ材料じゃない?!
しかも後4枚ある。
「大吉さん、ちょっと鍵持っててください。」
ウェストポーチからゴソゴソとあの小さな巾着を出して、金色に輝く硬貨を1枚取り出し見せる。
「もしかして・・・
もしかしなくても同じ材質じゃないですか・・・?」
色といい艶といい、雰囲気といい。
私のカンは同じだ、と告げている。
「「「・・・!!・・・」」」
「・・・高額硬貨は政府御用達の職人が専用の資材で作る。
機密事項を扱うアーティファクトも政府御用達の職人が作ったレプリカだというから同じ可能性は高いな・・・」
硬貨を大吉さんに渡してみてもらう。
「多分同じだ・・・だが質量が足りない。硬貨一枚半で鍵一個分くらいだろう。」
わたしが持ってるのは4枚。2枚足りないか・・・・・・
「誰か持ってませんかね・・・?」
大吉さんはもちろん肩をすくめて首を振る。
アグネス、フェイと目線を交わすが2人とも首を横に振る。
「そんな大金持ち歩いてないわ。もうちょっと額の低いのならまだしも。。。」
「護衛職にはあまり縁のない硬貨だな。。」
ふと全員の視線が頭取に向くと。
目が泳いでいる。
一同心の中の声がハモる
((((持ってるな。この人))))
「頭取〜、ちょぉ〜っといいですか〜?」
アグネスがにこやかにジリジリと頭取に近づき。
「持ってるんですよね・・・?」
「い・・・いやぁ〜商用で持ってはいたが自室になぁ〜」
両手を盾にしながらまだ目が泳いでいる。
「フェイ」
「おうよ」
2人の息の合った行動には感嘆の声しかない。
呼ばれたフェイは返事だけして頭取の腕を背の方で拘束。
「ちょーっと失礼しますよ頭取?」
アグネスが羽織の紐を解き、フェイが器用に拘束が解けないように脱がす。
あ〜れ〜!!持ってない持ってない、と拒否しながら脱がされれていく頭取。
絵面がキツい。
美女に脱がされていく恰幅の良いのいいサンタクロース。
「大吉、藍華、確認頼む!」
そう言って剥ぎ取った物々をこちらに投げるアグネス。
宿備え付けだろう羽織、内ポケットに何やらカード入れ。厚みからこの中にはないと判断。
腰ベルトにつけられていた小袋。コレは小銭財布のようだ。中を確認するが、例のコインは見つからず。
私が小銭財布の中を確認しているときに、大吉さんがベルトを確認。
「あったぞ!」
なんと。ベルトの裏側に縫い付けられていたソレ。
「ぅおおおおおんヘソクリなんじゃよおおおおお」
泣きの入る頭取に。
「藍華は4枚出すんだぞ。。。?」
大吉さんがボソッと一言。
「・・・はぃ・・・謹んで提供します・・・」
やはり後で元に戻すことは不可能なんだろうか。。。?
と思いながら。
まぁいっか!
「だが藍華、レプリカ用の道具持ってきてるのか?」
「わたしの専門はアーティファクトじゃないですか。当然!」
にっこり答えて。それ用の袋を出す。
少し大きめに作ってあった袋は、開いたらそのままマットになる仕組み。そのなかに、レプリカ制作用の指輪が入っている。
「皆さんの目の前で作業してもいいですか・・・?」
もしかして作業風景は秘匿すべし!なんてルールがあるなら、見ないようお願いしないといけないと思い、聞くと。
「問題ない。」
何も気にすることなくハッキリとそう言う。
ということは、職人にはレプリカ作りのアーティファクトとの相性とかが重要なのだろうか。
秘匿する必要なし、と。
「では。」
そう言って遠慮なく広げて、左側に鍵のアーティファクトを置き、右側に硬貨をおく。レプリカ制作用アーティファクトを右手中指につけ、数回深呼吸をする。
まず、鍵の情報を映し取る。
鍵を覆うように両手をかざし、念じる。
レプリカ制作アーティファクトよ、この鍵の情報を細部まで記憶せよ。
ここでいつもなら淡く光るレプリカ制作用アーティファクトが、異様なほどに光り輝く。
「「?!!」」
数秒後、光は収まり指輪の中へと消える。
「・・・いつもあんなに光ってるのか・・・?」
大吉さんの質問に戸惑いを隠せずに答える
「いいえ・・・こんなに強い光は初めてです・・・!」
指輪に力を感じる。普段よりも強く。
「ひとまず試してみます」
硬貨の方へ手を移して念じる。
記憶した情報を素に整形せよ!
すると先ほどよりもずっと強く、目も開けていられないほどに光り輝き、数秒後に消える。
後に残ったのは、左側の鍵とそっくり同じ物が4本と、硬貨のごく僅かな一部と思われる欠片。
「早いな・・・」
フェイがそう呟く。
「確かに。俺だったら数十分はかかるな・・・」
大吉さんまでもがそう言う。
「藍華も色々規格外、ってことか。」
アグネスが1人勝手に納得したように言う。
「大吉さん、確認願います。」
元の鍵と作った鍵を渡して確認してもらう。
「・・・擦り傷とか劣化具合までそっくりだな。。。」
わたしには作ったものの方が色鮮やかな新品風に見える気がするのだが、フェイとアグネスも同じように言っているので、問題はなさそうか・・・?
「さて・・・誰が1番に試す・・・?」
「私は最後に残った方がいいと思うんですよね。。。何かあった時作り直せるのは多分私だけなので。。。」
大吉さんの言葉に真っ先に応えたのは私だった。
「いや、1番最後は達磨頭取でオリジナルの鍵だ。
念のため、な。」
大吉さんがそう言って頭取を指す。
「オリジナルの鍵がこの場から出た瞬間にこの空間がどうなるのかもわからないからな・・・。」
「なるほど。」
まぁ納得。
「1番は俺だな。フェイ、アグネス、あと頼む」
そう言ってレプリカの鍵を1つ握りしめる大吉さん。
誰が1番に行くにしても私にかかっている責任の重圧は変わらない。変わらないはずなのだけれど・・・
それでも心臓が鷲掴みにされているような緊張感・・・
失敗したらどうなるのかはわからない───
「頼むと言われても。俺たちもすぐ行くさ。」
続いてフェイとアグネスも1つづつ鍵をとる。
「達磨頭取、どうやって戻るんだ?」
「鍵を宝箱に差し込んで力を発動するだけじゃよ。瞬きする間に元の場所におるはずじゃ。」
「心配するな、先に戻ってる。」
そう言って頭をポンポン、となでる。
単純なもので。たったそれだけで鷲掴みされていた心臓が解放される。
カチャリと鍵を差し込み少しすると鍵と鍵穴から光が溢れ、大吉さんを包み込み、フッと消える。影も残さずに。
「・・・さて、じゃぁ俺も。」
「フェイ、ツマミは残しとけよ?」
アグネスの突っ込みに、苦笑いで答えあっさりと鍵を差し込み光に包まれて消えるフェイ。
「じゃぁ、あたしも!」
なんでみんなこんな簡単に、平気に行けるんだろうか。。。
「藍華もすぐ来いよ?」
笑顔で行くアグネス。
「・・・みんなすごいですよねー・・・」
「藍華さんもそうじゃろ?あんな高額硬貨を4枚もポンと使ってしまって。」
「そんなことないですよ」
達磨頭取の言葉に、硬貨の価値をまだあまり実感していないせいもあるかもしれないな、と苦笑しながら、3人の後に続く。




