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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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120.からみ酒とお預け

宿に着き、旅館のような雰囲気の入り口を入って行くと、美人な40代くらいの女将に案内され喫茶店とバーが一緒になったようなホールに辿り着く。


そこには飲んで出来上がっている達磨頭取とそれに絡まれている大吉さんが。


「今日だけはいいだろおおおおおお?!」


「ぃや、それでもまだ藍華も戻ってきてないんで・・・」


「イィじゃないか、酒には強いと聞いとるぞ〜?」


お目付役なユウリさんがいないのでくだまきたい放題な達磨頭取。


そっかー大吉さんはお酒強いのか。

しかし流石にアレはちょっと可哀想だなと思ったので助け舟を出すことにする。


「耕助さんたち、ありがとうございました。また後ほど!」


そう言って軽く会釈してから大吉さんの方へ小走りで行く。


「大吉さんー!今戻りました!」


「・・・藍華・・・!」


わたしの声に気づいてこちらを見て、嬉しそうな雰囲気と戸惑う感じが垣間見えた。

やっぱり話の途中で行ってしまったの、あれだったかな・・・スミマセン。


「さっきは話の途中ですみませんでした・・・・・・」


「気にするな、用事は済んだのか?」


縋りついてきている達磨頭取を引き剥がしながらたちあがる。


「はい。色々話したいこともできました。

後でお話ししてもいいですか?」


「後と言わずに今行こう。」


そう言ってわたしの手を取る。


「・・・・・・!」


「夕飯は大体1時間後には食べれるそうだ。それまで部屋で話そう。達磨頭取、じゃぁ続きは夕食の時に!」


いい笑顔でそう答えて振り向きもせず、ズンズンと先へと進むが、少し行ったところで突然立ち止まり、パッと握っていた手を離す。


「あ、すまん・・・・・・」


めをまるくしたまま、無言で引かれていた手を離されて。落ち着いたようなちょっと残念なような・・・


「いえ・・・・・・」


こっちだ、と言う大吉さんの後について行くと、長い廊下にいくつも扉が等間隔に並んでいるところへ来た。


「ここが俺たちの部屋だそうだ。荷物はもう運び込まれてるから」


そう言ってガラガラっと引き戸を開けると、畳の香りが心地よく香ってくる。


チーム毎に一室だそうで必然的に大吉さんと同室。


耐えれるのかワタシ・・・・・・?


「隣にフェイ、アグネスの部屋もあるし、後で遊びにいくか!」


今日だけは護衛気分ではなく旅行気分になってしまいそうなわたしだったが、大吉さんもそのようだ。


「イイデスネ!」


おそらく4人までは泊まれるだろう部屋は寝る時にはこのテーブルを退けて布団が敷かれるのだろうが。。


コレはちょっと・・・・・・

また眠れなくなりそう・・・・・・


テント初日を思い出しながらそう考えていると


「で。話の続き、いいか?聞いても・・・・・・」


大吉さんが和風テーブル横に敷かれた座布団の上にあぐらをかいて座り、大吉さんが話を切り出した。


「はじめは帰る方法が見つかったなら帰るつもりだったと・・・・・・」


わたしも慌てて向かい側に座り言葉を探す


「・・・はい・・・」


どう伝えたら良いものか、と。

もし迷惑ならば1人で生活する場所も探さねば、とか。

色々頭の中で考えてはいたけれど、いざ伝えるとなると、どうしてこう言葉が出てこなくなるのか。


「今は・・・違うのか・・・?

その・・・」


大吉さんも言葉に迷っているらしい。


ならば、自分的に1番重要なとこから伝えよう。


「・・・帰らないための方法は探したいと思ってます。」


「帰らないための方法?」


そう───捕まってた時に。ふと感じた不安の正体が今ならはっきりとわかる。


「おって説明するとですね・・・」


まず、あのユキノリとかいう男が言っていたことと、あの男がおそらく向こうから来た者であるということを話す。


「クゥさんと藍華の他にもいたってことか。。。?」


「あのセリフからするともしかしたらクゥさんが来た時と同じくらいに来ているのかもしれませんね。。」


するとただいま50くらいだとしたら何歳の時に来たんだ?


「扉って表現もなんだか気になるな・・・」


「そうですね・・・

それで・・・そこで、ふと気づいちゃったんです。

こちらに来たのも突然で。向こうに帰るのも、もしかしたら予期せぬうちに突然帰らされるかもしれない、と。」


マンホールに落っこちたのがきっかけで、何かが発動してこちらに飛ばされたならば。


クゥさんがどこかの扉を開いて、くぐっただけでこちらに来てしまったのなら。


ひょんなことから突然向こうに返されてしまうかもしれない。自分の意思とは関係なく。


「今は・・・はっきりと認識してます。私は向こうに帰りたいとは思っていない、と。」


その時コンコンコンコン、と扉をノックする音がした。


「それでも、まだしばらくはおいてもらえますか?大吉さんのところに。。。?」


大吉さんだって、どれくらいかかるかはわからないけれど、向こうに帰るまで、というつもりだったはずだ・・・し・・・・・・


コンコンコンコン


「・・・俺的には・・・」


大吉さんが少し俯き、頬をかき、私が続きの言葉を待ってるその時


コンコンゴンゴン!!ドガァアア!!!


勢いよく開けられたドアの向こうに。


「・・・大吉・・・助けてくれ・・・」


ヨロヨロと倒れ込んでくるフェイ。


「フェイ?!どうした!!」


あ、コレ今度は私がお預けくらう番・・・?


大吉さんは駆け寄りひとまずフェイを仰向けにする。


私がそんなに慌てなかったわけは。

開けられた瞬間香ってきたお酒の匂い。と。その背後にいる二つの影。


「大吉〜!!こんなとこで何やってんだぁ〜?!」


酒瓶らしきものを片手に乗り込んできたのはラフな格好のアグネス。


「今日飲まないでいつ飲むってんだヨォ〜?」


めっっっちゃ絡み酒。


「次は“きょうと”までお預けだろー?!飲んどけ飲んどけ!!」


「・・・ったく頭取もアグネスもはしゃぎすぎだ・・・

藍華、フェイの小瓶のアーティファクトをちょっと返してやってくれ。」


「あ、はい。。」


もぞもぞと首から外して大吉さんに渡す。


「フェイ、ほら。しっかりしろ。」


大吉さんがフェイの胸元にそれを乗っけると。小瓶が淡く光り、青ざめていた顔に血色が戻っていく。


「う・・・助かった・・・大吉・・・ありがとう・・・・」


なんとか身体を起こし、礼を言うフェイ。


「酔いを醒ましたってことですか?」


「あぁ、少なくとも悪酔いは緩和してくれる。

酒弱いのに、無理すんなフェイ」


「・・・あんなのが2人もいたら無理だ・・・藍華、すまないが今晩だけ返してもらってもいいか・・・?」


「もちろんですよ!!

わたし、お酒は飲みすぎなきゃ大丈夫なので。」




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