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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
117/343

116.帰る・・・?

風は渦巻き、髪をなぜる


帰る方法を探さないのか、と聞かれ脳裏に色々な思いが駆け巡った気がする。


はっきりわかっていることは1つだけ・・・・・・


《帰りたくない》


その動機は不純で・・・でもどうしようもなく・・・・・・


「・・・きた当初はなるようになれ!って思ってました。

もし帰れる方法が見つかったならば、帰る。とも思ってはいたんですよね・・・・・・。」


たった数週間前の気持ちがこうもハッキリと変化するとは・・・自分でも思ってなかった・・・・・・。


みっちゃんの依頼を受けたのも、帰るつもりがないから。


けれど・・・


気づいてしまった─────


突然来た時のように、突然向こうに帰らされるかもしれないと・・・・・・


その時、夜の少し湿った空気の中、どこかの寺の鐘の音が響き渡った。


ゴォオオオン


鐘の音は合計6回。


「・・・・・・!!」


みっちゃんが言ってた鐘の音だ!


「大吉さん!!ごめんなさい!これからちょっと1人で行かないといけないところがあるので、先に宿に戻っててください!!!」


今日しかないと言うことと、鐘が鳴り10分くらいで閉まってしまうという制限から、大吉さんをその場に放置し、みっちゃんからもらった折り鶴を頼りに、教えてもらった神社へと急いだ。


薄緑に光る折り鶴は手から離れて飛び立ち、迷うことなくとある方向へと飛んでいく。


できることなら一緒に居たい・・・・・・

この望みは過ぎたものだろうか・・・・・・?


いや、誰が何と言おうと構わない。


わたしがそうしたいのだから!!




導かれた先は、薄暗くて全体はよく見えなかったが、そこそこ大きめな神社のようだった。

敷地を囲うように背の高い生垣(いけがき)があり、外側とはどこか切り離された空間のような雰囲気がある。


折り鶴は鳥居の手前で地に降りて、光が消える。


お稲荷さんらしく、稲荷の石像が鳥居の手前に並んでいた。

鳥居からのびる石畳は経年劣化は見えるものの、キレイに整備されていて、雑草もなく、手入れがされていることがよくわかる。


みっちゃん情報では、この社には2匹の神使(しんし)と1(はしら)の神様が、いる。

毎週奉納しているものを持っていっておくれ、とお使いを頼まれたのだが。


私の目的はみっちゃんに頼まれたお供物を本殿入り口に置くことと、授与所で御守りを受けて御神籤(おみくじ)を引くこと!


御守りは・・・・・・縁結びで有名な神社だというので・・・・・・


テレテレモジモジ。


あと、昔からわけもなく好きなのよね・・・御神籤って。

なかなか買えなかったから、というのもあるかもしれないけれど、何かをねだることもできない環境で自分の力でいち早く買えそうなもので、そこまで高額でもないもの、ということもあったかもしれないな。


今思うと。


ここの御神籤に石御籤というものがあって、小さな小袋の中に天然石のかけらが入ってるそうで。

畏れ多くもその石使ってアーティファクトを作りたい、と何故か閃いてしまったのだ。



鶴を拾い、鳥居の手前で1礼をしてからくぐると


『クスクス、珍しい』


『参拝者だよ、クスクス』


幼い雰囲気の声が2つ空から降ってくる。


突然、正面神殿の方から突風が吹き、目を開けていられなくなる。


「!!!」


一瞬目を閉じただけだったのだが、目を開くと巫女っぽい装束を着た狐耳と尻尾の生えた2人の少女 (?) がすぐ前に立っていた。


「みっちゃんからのお客さんね?」


「おねーさんからみっちゃんの気配がするの!」


「みっちゃんから何か預かったものがある?」


「ある?」


突然交互に捲し立てられて、アーティファクトの不思議現象には慣れてきたけども、こういった不思議事象にはまだ耐性が出来きってないのだな、と自覚する。っていうか初めてだし!


深く深呼吸して、ウェストポーチに手を突っ込む。


この子達が、みっちゃんの言ってた、縁があったら会えるだろうと言われた神使。。。!


かわいいいいいい!!

ギュってしたいいいいいいい!!!


内心激しく萌えてる自分を隠すのは、そう難しくはなかった。


なにせここのところ大吉さんへの気持ちを鎮めることが日課のようになっていたから。


片膝ついて、ウェストポーチから木箱を取り出す


「これをここの主様(ぬしさま)に預かってきました。」


神様への御供物だと言っていたけれど、この2人はおそらく神使。


渡して良いものだろうか。。。?


と思案していると、本殿の方から不思議な赤い光が飛んできて、2人の後ろに降り立った。


光から現れたその人(?)は、私より少し背が高く、白い装束に赤い袴は神使の子達とほぼ変わらず、けれども装飾のついた薄布を纏う姿は天女のようで。

赤い目赤い口に髪と耳と尻尾は白銀で。9本の尻尾はそれはもう艶々とした見事な毛並み。


現れた瞬間に、灯籠に灯がついていき薄暗い神社の敷地全体が温かい力に満ちる。


ふら〜っとその美貌に吸い込まれるように立ち上がると


「・・・・・・我はこの社を司る1柱天狐(てんこ)(すい)と申す。翠さまと呼ぶことを許そう。」


響く声は心地よいテノール。

よく見たら、胸の部分は確かに私よりも(たいら)


「ほぅ・・・光子(みつこ)の使いか・・・?」


この面で・・・このひと (?) 男性もしくは雄・・・。


鍛え上げてきた表情筋よありがとう。

能面面(のうめんづら)を貫き通して言葉を絞り出す。


そして気配がよく覚えのあるものと似ていて気が付いた。


この人アーティファクトだ・・・

はじめての人形になるアーティファクト!!


「光子さんからのお届けものです。」


木箱を両手に乗せて差し出す。


「感謝する・・・が、」


ヒョイとうけとった木箱をそのまま神使の2人に渡す。


「我はこれよりそなたの懐にあるものが気になってしょうがない・・・」


そう言って明らかに生きた人間のそれではない動きでスーッと息がかかるほどまで近づかれる。


まつ毛長っ!!

赤い目に惹き込まれそう!!

そして一瞬ふわっと白檀の香りが一瞬した。


「・・・ど・・・・・・どれのことでしょうか・・・・・・?」


「コレ」


ウェストポーチを指して言う。


何か入れてたっけっか・・・・・・?




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