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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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115.その硬貨の価値

「ぉおおおおぉぉ多すぎだ!!!」


「!!!もっと小さいのないのか?!!」


2人とも大慌てで言うのでもう1回確認するけども、いやーコーヒー1杯分の金額じゃないだろうと思い、


「ないですね・・・・・・」


ホラ、と言って中身を大吉さんに見せる。


「みーばぁ・・・・・・あのブレスレットにいったいどんだけの価値を見出したんだ?!」


「え・・・・・・この硬貨っていくらなんですか?初めて見るんですけど・・・・・・」


「コレは1枚で10万円の価値がある硬貨だ・・・。」


足りる以上!!!


「えええええうぇええええ?!」


特に数字は書かれておらず、綺麗な金色で、おそらく何処かの寺か神社の彫りが入っているその硬貨は、五百円玉より少し大きいくらいの大きさで。


「お釣りが足りねぇよ・・・・・・今日はそこまでもってきてねぇ・・・・・・」


「細石全部でいくらなんだ?ヨシゾーじいさん。」


「1万もしねぇよ・・・。」


・・・・・・


その話を聞いて、気になっていたものの金額を聞いてみる。


「ヨシゾーさん、あの彫りの入ったネックレスはおいくらですか?」


多分、お高いゾーンに置かれているケースに入った物を指して言う。


「あれか?翡翠の玉の?」


鳳凰と龍の彫りが入った物で、一際目を惹かれていたので聞いてみた。


「3万5千だが。。。」


「じゃぁ、あれください。合わせておいくらで?」


あちらにいた時の自分からすると、とても思い切った買い物になるのだけれど、良いのだ。


一期一会、逃してはならない出会いの奇跡。


よく言うではないか、

推し作家の気になった作品は、出会った時が最初で最後の購入チャンス。


頭をワシワシとかきながら、


「わかった!!全部で4万だ!」


多分細石は8千くらいだと思うのだが、おまけしてもらえた。


「ありがとう!!」


お釣りはお札と小銭でいただいて。

ウェストポーチにはとても入らなかったので、畳んで入れてあったナップサックを出して細石をそこに入れた。


「またな〜ヨシゾーじいさん!」


「大吉はこんでもいい!お嬢ちゃんはまたおいで〜」


ひっでぇ、と言いながらも楽しそうにしている大吉さんを見て自分も嬉しくなる。


「さて、目的のものは買えたんだよな?」


「はい、この裏町での欲しいものは買えました。」


ちょっと多めに仕入れたので、上手くいったら当分大丈夫なはず。


「大吉さんは、何か買い物ないですか?」


「んー。まぁ、出会いがあったら、かな。」


みっちゃんが色々話ししてくれたけども、この裏町、闇市とは違うそうで、グレーゾーンらしく。ここに出てくるアーティファクトは良くてA級品。碧空作品は全てS級品以上になるからここには出てこない、と。


それでも質の良いものを安く手に入れ、手直しが必要ならば手直しし、店に下ろすには。こういった所での仕入れが重要になる。


今は護衛の依頼を受けてる途中、ということもあって、容量で上限を決めているようだった。無垢の木の箱一杯分を購入して、大吉さんのここでの仕入れは終わりに。


「さーて。ここがこの場所の面白いところだ。」


一通り屋台を冷やかし終わり、行き止まりの2つの扉の前に立つ。


1つは普通の鉄扉、もう1つは木製の飾り気のない扉。


「開けてみな。」


普通の鉄扉の方を指して大吉さんが言う。

何が面白いのか全く想像がつかないが、言われるままに開けてみると・・・


扉から出ると目の前にみっちゃん喫茶の木彫りの扉があった。


「?!!」


木彫りの扉と大吉さんの顔を何度も交互に見る。


なんで?!どうして?!!

みっちゃん喫茶の奥から入って一本道で。ここまで距離にして多分1キロ程度はあったはず。。。!!


さらに、もう見えるわけはない入ってきたドアの方向を見るが・・・道は確かにまっすぐで・・・


「この空間自体がアーティファクトの影響を受けてるらしくてな。みーばぁの店から入った者はこの鉄扉からしか出られない。逆にこの木の扉から入ってきた者はみーばぁの店に続く木の扉には入れないようになってるんだ。そして、それぞれ入り口近くの鉄扉に繋がっている。」


「空間がねじ曲がって繋がって・・・?!」


「そして、この鉄扉を1度閉めると、元の所へは戻れない。」


バタン、と閉めて再び開くと。

そこは薄暗いランプしかついていない倉庫が広がっていた。


「・・・・・・・!!」


「な?面白いだろ?」


まさかそんなことまでできるのかアーティファクト!!!


興奮止まぬままにひとまず階段を降りて、表道の商店の所に出る。


「色入楽しかったですー!!あそこ。またぜひ一緒にいきましょう?大吉さん!」


少し暗くなってきた空に両手伸ばし、見上げながら言うと


「そうだな・・・・・・。

ところで・・・聞いてもいいか?」


手を下ろして、大吉さんを見上げつつ答える


「なんですか?」


「あの“妖精のたまごの殻”について、何か知ってるのか?」


多分そのことだろうと思っていたので答えはすぐに口から出てきた。


「あちらの世界の話、しましたよね。

顔も知らない色んな人と文章で会話ができて、色んな方の作品を写真や映像で見ることができるSNS、ツイッターというモノがあって。」


クゥさんも話していたと言っていたから、大まかなことはわかるだろう前提で話を進める。


「仲良くさせていただいていた方々がいるんですよ。皆、すごい作家さん達で。“碧空のクゥさん”もそのうちの1人なんですが、他にもよくやりとりをしていた方達がいて・・・

そのうちの、1人“天さん”という方がいたんですよ。」


ネイルスタンプをレジンに取り入れ、模様はなんと手彫りという強者だ。


3ミリのビーズにスタンプできる模様なんて他に誰がやる?!っていう。。。


クゥさんはそこを手描きでいくさらなる強者だ。

3ミリ玉に天さんの模様とクゥさんの手描き棒人間の合わせを見た時には何やってんのこの人たち状態だったし(褒め言葉)・・・・・・


いつか自分もあの人達のように素敵な作品を作りたい、とは思っているけれど・・・この世界でどこまでいけるだろうか・・・・・・?


「そうか。。。」


先ほどとは違って少し神妙な顔つきで何かを切り出そうとする大吉さん。


「それで───みーばぁと、どんな風に契約したんだ?」


「向こう半年間は月々5本みーばぁの所に“身代わり護り”を送ること、で半金前払い。ですよ?

あれ、聞いてなかったですか?」


少し俯きながら言う大吉さんの表情は付きはじめた街灯の影になって見えなくなる。


「・・・・・・帰る方法は・・・・・・探さないのか・・・・・・?」



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