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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
114/343

113.2礼2拍手、1祈り

「取り敢えずこれ飲んで、心を鎮めな。」


そう言って出されたコーヒーは。

香りが高くとても落ち着いた気分へと導いてくれる。


「古来術師とは、道具がなくともその力を発揮できるものだった。気を鎮め、流れる力を詠み、時には操り。あたしはそういう者の家系らしいが、かたっくるしいのは嫌いでね。いろんなものから逃げまくってここに落ち着いたしょうのないババァだ。

だが、大事なものは知っとるよ。」


神道系の巫女の家系なのかな?


コーヒーを飲みながら、ちょっとミスマッチな気がするけど、神社とかの落ち着く雰囲気が思い出される。


「コレに必要なのは鎮魂だ。それは作り手である藍華なら簡単に行えるはずだ。見本を見せてやるからやってみな。」


テーブルの上に置いたブレスレットから1つを左手の上に乗せ、そこに右手をかざすと。


「溢れ出てる物を沈めてやるんだ。」


そう言って静かにそれを見つめる。

ぼんやりしていた光が更に小さくなったのがはっきりとわかった。


「おぉ。。」


大吉さんが感嘆の声をあげるが。


「。。。すみません何をどうしたのか全くわからなかったデス。。。」


ぜんっっぜんわからなかった。何をしたのか。


手をかざしたら光が小さくなる。わけではないのはもちろんわかるのだけど。。。


「・・・お前さんの隠したい恥ずかしー情報が垂れ流し状態で主張しまくってるって言ったらわかるかい?」


隠したい恥ずかしい情報???

特にないような気が・・・


「・・・例えばそこのボンクラをー」


「ちょっ!!!」


何故それを?!とかそんなにわかりやすかった私?!


両手を振ってそこから先のセリフを言われるのを拒否する。


言うのをやめてくれたことに安心し、振っていた手を口に当てて目を閉じる。


「待ってください・・・!!!」



今現在の感情にシンクロしてるとなるとワカル。。。。。!!


私の様子を細かに観察しながらみっちゃんが言う。


「ソレを、秘密にしてくれー!鎮まり給えー!!ってお願いするんだよ!」


みっちゃんの真似して手をかざしてみるものの、光の弱まり具合は芳しくなく。


「わかりにくかったらこうしてみぃ!」


そう言って2礼2拍手をし、もう1度礼をして見せる。

それは何か知ってる!神社で参拝する時のやつ!!


座ったままだけど、あのクゥさんの手入れしてた神棚を何となく思い出しながら、一動作ごとに手を合わせ2礼2拍手そして最後の礼の後にも手を合わせて祈ってみる


(しずま)りたまへ───


そっと目を開けて見てみると。。


光は他のアーティファクト、レプリカと同程度の光の収まっていた。


「・・・できた・・・!」


「向こうから来た者でもできる者とそうでない者がいるが」


そうでない者。。。クゥさんでは無さそう。。。?


「藍華は筋が良さそうだ!

この店の跡取りにならないかい?」


突然の提案に、私ではなく大吉さんが


「ダメだ!!」


と、飲んでいたカップを中身が少し溢れるほどの勢いで戻して言った。


みっちゃんは目を少し見開いた後すぐに細めてニヤリと笑い。


「お前に愛想尽かすかもしれないじゃないか。」


も・・・もたない・・・心臓が持たない・・・。


「・・・ぃや。。。だって・・・藍華は向こうに帰るかもしれないじゃないか・・・クゥさんみたいに・・・」


───向こうに帰る───


大吉さんのその言葉に、ひやっとした何かが心の片隅を掠める。


帰りたくないと思っていても、帰らされることもあるかもしれない・・・?


今はもう、帰りたいとは思っていなくとも・・・


「なんだい、はっきりしないねぇ!

ひとまず定期的にうちにコレと同じような物をおろしてくれないかい?料金は先払いしとこう。」


好条件!!

ブラック企業で働いていた時の。

チャンスは逃すな食らいつけ、がこんな時に甦り、食らい付いてしまう私。


「是非によろしくお願いします!!」


みっちゃんと2人、手を取り合う私。


そのセリフを聞いた後、大吉さんは何か心あらずだったようだが、そんなことはそっちのけで話は弾む。


「ひとまずコレくらいだ。」


そう言って小袋にチャリチャリと硬貨を入れる。


「差額は後々な。

月に5本は入れてもらいたいが、どうだい?」


「可能です!この石のグレードは仕入れ次第になるから、どこか良い仕入れ先を教えてもらえると嬉しいんですけどー」


などと、とても話が弾んでしまって。時間のたつのの早いこと早いこと!


「じゃ、そういうことなんで、大吉さん、良いですか?」


心あらずだった大吉さんにそう聞くと、


「ん?あぁ!別にいいぞ!!」


と返事をいただく。


「じゃぁ、出入り口まで一緒に行って、その後は別行動で!よろしくお願いします!」


みっちゃんに裏町への出入り許可をもらい。店の奥から裏町通りへと続く扉へと案内される。


「扉の番人には心眼の能力プラスアルファがひつようでねぇ。クゥには向こうに帰るから、と言って断られた。藍華ならやれるだろう。本気で大吉に愛想尽かしたら遠慮なくおいで。」


こっそりと耳打ちされた言葉に。こちらでの、1つの居場所をいただいた気がした。


「・・・ありがとう、みっちゃん!」


アーティファクトの販売スペースからカウンターの方へ入り、奥のカーテンの向こう側に、物置スペースがあり、最奥には扉があった。


「さぁこっちだよ。・・・ん・・・?」


少し狭いそのスペースでみっちゃんの横に並んだ時、私の肩のあたりを見て


「何かついとる。」


そう言って肩のゴミを払うようにポンポン、とする。


「??ありがとう」


まだ何か訝しげな表情だったが、突然何かを思い出したように


「お前たち、“きょうと”の方に行くんだったね?」


「あぁ、数日間留まることになってるから、何か遣いでもあればしてくるぞ?」


「・・・じゃぁ姉様の所に顔出してきな。受け取ってきて欲しい物がある。」


「う。。。あそこか。。。わかった。」


どこへお遣いだろうか?大吉さんが言葉を濁している。苦手な場所なんだろうか。


「連絡は入れておくよ。じゃぁ気をつけてお行き!」


みっちゃんが扉を開くと、そこは高架下の閉鎖空間のはずなのに、風が吹き、緑のかおる、どこか懐かしいような屋台が並ぶ道がまっすぐ伸びていた。


「うっわ〜!!」


めちゃくちゃ楽しそう!!全部の屋台をじっくりゆっくり眺めて行きたい!!

でもコレどこまで続いてるのだろうか??


屋台と人で終わりが見えない。っていうか結構人がいる。


「楽しんでおいで!」


「本当にありがとう、みっちゃん!」


握手をし、先に扉を越えて大吉さんを待つ。


みーばぁが耳を貸せと言って大吉さんの耳を引っ張り何かを耳打ちし、大吉さんは少し神妙な顔をして頷き


「じゃぁ、またな。みーばぁ」


そう言って振り返ることなく手を振った。




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