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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
112/343

111.“なごや”に到着

次の日、思い切って現地で食事を取ることにした一行は、昼ごはんを食べずに歩を進めていった。

達磨頭取のほぼ予想通りに予定より遅めだけども昼過ぎには“なごや”の市街に入ることができた。


「ユウリさん、昼休憩なしでしたけど大丈夫ですか?」


荷台の方から声をかけると、


「大丈夫ですよー!この後しっかり休みますんで!

宿の敷地内に馬車を止める場所があるので、ひとまずそちらまで行きます。そのあとは宿の人に私物を預けて自由時間で大丈夫です!」


そう説明してくれた。


旅館のある場所は中心地からは遠いけれど、そこそこ人通りもあり、いろんな商店も近くにあり、ワクワクするような場所にあった。


「じゃぁ貴重品は身につけて、着替えとかだけ預ける感じですかね。」


「そうだな。あ、余分に持ってきた身代わり守りの練習のやつ持ってこいよー。多分売れるから。」


え。お小遣いになる!?


「ホントですか?!持ってきます!!」



荷物預けてひとまず大吉さんの知り合いの店へとお邪魔することにした。


「ここからだと歩いて30分くらいかな。途中の屋台で適当に何か食おう。」


「屋台、良いですねー!」


屋台というと、祭りのリンゴ飴とか焼きそばとかそう言ったものを思い浮かべてしまうのだが、ここの屋台は、はたしてどんなのなんだろうか。


「そうだ、目的の場所なんだがな、ちょっと怪しい喫茶店でな。そこの店主の出すコーヒーがまた美味いんで、飲み物はそこで飲もう。」


「了解です!」


怪しい、ってどんな?とか思ったけれど、その理由は行ってすぐにわかった。


屋台で五平餅とか唐揚げとか、色々食しながらたどり着いたそこは───かつての線路の高架下。


「あそこだ。」


高架下には普通の小洒落た店が並んでいるように見える。レストランっぽいのも、服屋も。雑貨屋もありそうだ。

が、目的の店は2階部分にあるようで、入り口は階段だった。


道路を一本挟んでいるため、店舗街の端にあるその店は、ガラス窓から店内が少し見えるのだが、喫茶店というよりは、怪しいバーのような趣きだった。


店名は「みっちゃん喫茶」



階段手前に置かれている看板に電飾で店名がピカピカと光っている。

窓ガラスからはボルドー色のカーテンに派手な金銀色のカーテンの留め具。


アレもアーティファクトなんだよねぇ・・・たぶん??


「なんとも・・・おもしろそーな店ですね?」


下の方に並んでる店とのギャップもまた激しい。


「さ、いくぞ。まだ生きてっかなー?」


1人だったら間違いなく避けているだろうなこの店・・・


そんなことを思いながら後についていく。


階段を登った先には左右に扉が2つ。片方は無機質な普通の扉。片方は店の扉で少し彫りの入った木の扉で。押し開くと、カロンカロンと軽快な音でドアベルが鳴る。


このドア・・・アーティファクトっぽい。


「みーばぁまだ生きてっかー?」


生きてっか、が挨拶て。


「こんにちはー・・・」


店内は薄暗く、入り口付近から壁伝いにカウンター席がぐるりとあった。

店内はコの字にカウンターがあり、中央部分がキッチン部分になっているようで。

入り口近くのカウンター端に会計用の場所があった。


入り口のすぐ近くにある扉は荷運び用かな。

キッチンの奥につながっているようだ。


「まだ生きてるよ。

おぉ大吉か。久しぶりじゃないか。」


カウンターの奥から出てきたのはおそらく80代かと思われるお婆さん。


「とりあえずコーヒー2つ頼むよ」


「あいよ。」


慣れた手つきで2杯分の豆を豆引きにいれるみーばぁさん。


青と紫のグラデーションのような髪をフワリと結いあげていて、ジャラジャラとつけられたアクセサリーは、眩しいほどにアーティファクト。


「ん・・・?なんだか懐かしいような気配だね、そっちのお嬢ちゃん。」


「・・・は・・・はじめまして」


その眩しいアーティファクトに視界を遮られている感覚で、ちょっとクラクラしながら挨拶をした。


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