107.遠隔操作の法則と夕食の作り直し
「さて。2人がダメにした食事の作り直しだ。
まぁ…できるだけ早く完成する達磨頭取のワイルド料理がいいだろうな。夜もあんまり遅くなると明日が大変だから。」
アグネスがそう呟くと
「まかされよう。すぐに取り掛かるから、ここは任せて良いかな?」
一同顔を見合わせて頷く。
達磨頭取はすぐさま食材が載せてある馬車へ行き、用意を始めた。
「まず2人は飛び散ったカレーの片付けだな。」
「捕らえた2人は?」
「飯食って英気を養って、それからゆっくり訊問させてもらおう。」
捕らえた2人の尋問をいつするのか、というフェイの問いに。腹が減って、気も滅入ってちょうどいいだろうと言うアグネス。
「それまでは…もし藍華が平気ならこの竈門横のキャンプど真ん中に放置でいいんじゃないか?訊問するときはまぁちょっと場所を移してもいいし。」
大丈夫か?とアグネスに問われ、
「わたしは大丈夫です。」
即答する。
心中穏やかではないけれど。
ここでこの“何か”に屈して逃げてしまいたくない。
「ですが、遠隔能力とかっていうのは大丈夫なんですか?」
皆、普通にアーティファクトやレプリカを持っているし、そこかしこに使用されている。
勝手に利用されてしまったりとかしないのだろうかと気になったのだが
「こいつらにそこまでの力はないだろう。
よく慣れた物以外に力を送るのは遠隔能力とはまた違った技術が要る。
それによっぽど訓練された者でも、他人の物を遠隔で使うのはほぼ無理だ。それに遠隔と言っても、せいぜい2、3メートルが精一杯のはず。」
大吉さんが答えてくれた。
2、3メートル。。。
自分が遠隔操作した時のことを思い出すと、牢屋のところであれ大体2、3メートル。
宝物庫の方に持って行かれた時はあれどのくらいの距離があったのだろうか。。。
「アーティファクトの力を引き出すための入口は広い。誰もが使えるのもそのおかげだな。
だがその物の本当の力を引き出すにはよく知り、操ることができないといけない。」
「なるほど。」
あまりホイホイ遠隔操作で使ってはマズイということと、そう簡単に他人のアーティファクトは操作出来ない、ということは理解した。
気を遣ってくれたアグネスに食器等の用意を頼まれ、そちらへ行った。
幸い、米を炊いた鍋は少し離れた場所にあって。飛び散ったカレーが少し上からかかったので、そのままカレーチャーハンに変身。
そこに大吉さんが超特急で作ったお吸い物で晩ごはんが完成した。
「さすが!達磨頭取!!クマ肉を塩胡椒と残ったカレー粉で炒めてご飯と混ぜるなんて!!」
アグネスが嬉々としてそう言うと、
「わしゃ〜こんな大雑把なのしか作れんでな。」
かっかっかっか!と褒められ満更でもない様に答えながら次々とよそっていく。
「大吉さんもすごいです!
あっという間にお吸い物ができちゃいまいたもん!」
ユウリさんが取り分けられた吸い物を配りながら言った。
大吉さんはカレーを片付けた後、カレーの入っていた鍋を使ってあっという間に人数分のお吸い物を作ってくれた。
「手の込んだやつじゃないからな。
カレーのお詫びにはならないだろうが。。。」
カレーチャーハンにも合うような汁物をぱぱっと作れる大吉さんを尊敬。
取り分け終えて、エプロンを脱ぐ大吉さん。
「さ、大吉と藍華は昼も食べてないだろう?早く食べなー」
アグネスが手招きしてくれる。
「じゃぁ私はお茶持って行きますー!」
お茶用セットのところからポットとカップを持てるだけ持っていった。
ご飯が美味しくて。商隊の人たちと色々話をして、達磨頭取とユウリさんからは感謝の嵐を受け。
お礼だと言って何か渡されそうになったのでその代わりに“きょうと”の糸屋さんを紹介してもらうことにしてもらった。
マクラメ用の糸を仕入れたいと思っていたので渡に船。
糸屋で買い物した時、“きょうと”の方に卸問屋があって、そこでなら手に入るかもしれないという糸のことをきいたのだ。
そしていつかそれで作りたいと思っていたのが、まさかこんなに早く叶うかもしれないとは思っていなかったけれど、これも何かの縁なのだろうか。
そして、夕食の片付けも終わり、隊のほとんどの人が眠りについていく。
その日の夜警は、翌日はしっかり警備に参加するということを約束して、念のため外してもらった。私の体調と大吉さんの体力を懸念して。
移動する道中のキャンプでありながら、貴重なゆっくり眠れる一晩ということとなるが───
カレーチャーハン合うスープって。。。
どんなのだ。
なんでもイイ。自分は今カレーが食べたい。




