106.処分は…
達磨頭取が護衛チームのリーダーを連れてやってきた。
「すまない。。。!!!」
私の方に向けて土下座するリーダー耕助さん。
「・・・・・」
最近入ったのだという若い2人は、コレまでの彼らのやりとりを見るに、耕助さんにとっては息子のように大事にしてきたのだろうと思う。
思うけれど。。。
「処遇としてはあの2人分の依頼料を無しにすることと、名目上は監督不行き届きの罰金とさせてもらおう。」
達磨頭取がそう言うと、アグネスがポソリと言う。
「監督不行き届きというよりは見る目がなかっただけなんだろうがなー。」
「アグネス。」
見る目がなかった。そう言ったアグネスをたしなめるフェイ。
「・・・それだけでいいのか・・・?」
耕助は驚きの表情を隠せず、達磨頭取と私をみる。
正直。自分の中の恐怖とか、恨みとかいった感情、そういったものは簡単には消えはしないだろう───
ただ、そういうものよりも悔しさの方が上をいってる気がする。。。
護衛任務ということで、怪我をしたりっていうことの覚悟はしていた。
コレもそれの一部なのだろう。
己の中に停滞している吐き気のようなものを見つめながら、感じながら考えていると、
返事ができずにいる私に代わるように大吉さんが少し前に出て発言する。
「耕助リーダーには申し訳ないが、前後関係を吐かせてから、ここに放置していく事を提案させてもらいたい。」
大吉さんの冷たく言い放ったその言葉にビクリと肩を震わせる耕助さん。
「拘束した状態で、か?」
フェイが問うと
「あぁ。」
縛られ、並んで座らされた2人を見ながら答えた。
「おそらく2人とも超貴重な遠隔操作能力者だ。」
・・・超貴重??・・・
「組織的にもそんな貴重な者を見殺しにはできないだろう。でもって、そんな危険な者を隊にこれ以上同行させることには賛成できない。」
「それで1番良い籠目模様の袋出してきてたのか。。」
フェイが先ほど大吉さんが彼らのアーティファクトを入れた刺繍入りの袋を指して言う。
「それはアーティファクトの力を遮断する籠目模様入りの袋か。。!」
達磨頭取が驚愕の顔で言う。
「“きょうと”でも指折りの職人しか作れないと言う。。」
「ちょっとツテがあってな。。。」
達磨頭取の言葉に少し言葉を濁す大吉さん。
「アグネスがそいつのアーティファクトを蹴り飛ばしてくれたお陰で確信が持てたよ。手を離れた直後に光が増してたからな。」
私たちの会話を聞きながら、反抗、驚愕、諦めへと表情が変化していく捕らえられた2人。
「・・・藍華もそれで良いか・・・?」
固い表情のまま動かない私に。伺うように言う大吉さん。
「・・・大丈夫です。
やられたこと、許しはしないしやられたままでいるつもりもないですが。今は私に力が足りないので。」
2人を無感情な目で眺めながら言った。
何をどうしたら自分の身がちゃんと守れるのか。
大きな課題ではあるけれど、どうしたらいいのかもわからないけれど、
このままでいいわけはない・・・
この世界にくるまでは、面倒事はひたすら避けてきた。
見て見ぬふりもしてきた。。。
でもこの世界に来た直後、大吉さんが助けに来てくれて。
今日も助けられて。
多分、もし向こうに帰ったとしても、もう見て見ぬ振りはできない。
「次来た時には覚悟しておけ、とだけ伝えれればオッケーです。」
それに、悪意の塊の様な人物と対峙したから、多分わかる。
この2人はまだ、そこまでではないと。
「では、それで良いかな?耕助殿」
達磨頭取が耕助さんに問う。
「命の心配がないなら同意しましょう。。。
リオ、カイ、次もし会うことがあるなら1発食らう事を覚悟して来い。。。しっかり面倒みてやる。。。!」
「訊問は。。。」
達磨頭取が私たちに問うと
「俺たちがやろう」
フェイが挙手した。
「なんでだよ。。。」
大吉さんが不服そうにつぶやくが
「お前は“当事者”の方にあたるだろうが。殺したらいけないからな。。。」
アグネスが大吉さんの肩を叩きながら言う。
「護衛チームの3人はその間の警備をよろしく頼む。他のものへの説明も早くしてやった方がいい。」
フェイがそう言うと、耕助さんは立ち上がって改めて頭を下げて。
「すまない。ありがとう。」
そう言って夜警の焚き火の方へと向かった。
「夜警は私らと警護チームでやる。明日から負担が少し増すから2人ともしっかり休んどけ。」
アグネスは私の頭をグリグリ撫でた後、大吉さんに何かを渡す。
「・・・おまっ・・・コレ・・・」
渡された物を見て何に考えが至ったのか、
ズボッとポケットにそれを押し込みながら。
「何考えてんだ。。。!」
「明日に影響のない程度にしろよ?」
私の位置からは何を受け取ったのか見えなかったのだけど、2人は楽しそうに大吉さんをからかっているようだ。
「???」
私は訳がわからずその光景を見ているだけ。




