105.敵を騙すにはまず味方から
大吉さんの目前、地面上に現れたそれは敵意レーダー。
それに気づいたのは位置的に私とアグネスだけ。
大吉さんが今コレを発動したと言うことは。。。!!
「アグネス藍華を!!」
鬼のように怒っている最中でも。
フェイの言葉に長年パートナーを組んできたアグネスは素早く反応する。
私を守るように立ち身構えるアグネス。
「防御結界!」
アグネスが動くのとほぼ同時に、彼女の目と鼻の先から囲うように私の張った結界が発動する。
「2人ともよくやった!!」
大吉さんの声に、しゃがんだまま振り向くと、何かのアーティファクトを発動しようとしていた1人と、ナイフを持ったもう1人、護衛チームの若い2人を大吉さんとフェイが取り押さえていた。
アグネスが結界から出てフェイに押さえられている方の右手に握られているアーティファクトを蹴り飛ばしその手から離させる。
「発動されたら面倒なんでな。タイラさん、それ回収しておいてもらえるか?」
ちょうど飛んでった方にいたタイラさんに言う。
「達磨頭取、護衛チームのリーダーだけ呼んでくれ・・・
残り2人は警備を続けるように、と。」
大吉さんの言葉に、事態を飲み込んだ頭取が、わかったと言って動いた。
「ユウリさん、すまないが何か強いロープを借りれるか?」
「・・・は・・・はい!!」
そう返事をして荷台の方へ走っていった。
一気に緊張の頂点から落ち着いた私は、その場にへたりこんでしまい、その2人を交互にながめた。
胸の一部にモヤモヤしたものがあるのがわかる・・・
「・・・私を殴ったのはそっちの人です。多分。」
そう言って大吉さんに押さえ込まれてる方の人を指す。
モヤモヤは抑え込まない。
「ブレスレット、指輪、ネックレスとあと靴の中、確認してください。アーティファクトかレプリカもってます。」
淡々と淡い光を感じたものの場所を言う。
「そっちの人は耳飾り、ネックレス、ブレスが左右に1本づつ」
アーティファクトは基本身に付けていれば発動できる。
出来るだけ離しておくにこしたことはないと思い告げる。
おそらくネックレスが認識阻害のものだろう。
「藍華。。。心眼が使えるのか。。。!!」
アグネスがちょっと驚いて言う。
「え、アーティファクトとかレプリカって、ちょーっと目をこらしたら光って見えますよね??」
「「「・・・・・」」」
しばしの沈黙の後。
「発動中のものはな。力が強いほど光る。
だが発動中でないものは、訓練した者や、聖職者、職人には見えるようになる者がいるが、それでもそう数は多くないはずだ。
俺も最近ようやっとかすかに見えるようになってはきたが。」
まじですか。
「とにかく今のうちに藍華の言ったやつを取り上げておこう」
アグネスがそう言い、商隊の人たちも協力して、アーティファクトを回収して、大吉さんが刺繍のある小さな袋にそれを入れたところに、ユウリさんが縄を持ってやってきた。
手は後ろ手で縛り、腕のあたりでぐるぐる巻きに。足も縛り自由を奪う。
拘束し終えた2人を4人で囲み、大吉さんが告げる
「お前らをどうするかは達磨頭取とお前らのリーダーと決めさせてもらう。」
「・・・チッ・・・」
「・・・・・」
「で。相談もなくあんなアホなことしたのは。時間かけて料理した食事をダメにすることで、全員から敵意を向けられるためだったと。」
呆れた顔して言うアグネス。
「まぁ何かあるとは思ってましたが。。」
「全員から敵意を向けられないといけなかったからな。。。」
ベルトチェーンにつけた敵意レーダーを見せながら言う大吉さん。
「状況から、藍華が目をつけられたのは熊の時の鎮火でだろう、と考えてな。」
「目をつけられてたのなら、何故敵意レーダーにうつらなかったのか。大吉が発動した時にもレーダーに映っていないそうだし。俺たちのにも映っていなかったろ?」
「そうだな。だから内通者はいないと判断をしてたんだよな。あたしたちは。」
アグネスが右手を顎のところに持っていってそう言う。
「だが状況から内部犯がいるのは絶対だ。」
「そこで俺たちはレーダーに映らないような、阻害、又は無効系のアーティファクト持ってるんじゃ、と予測をたてたわけだ。」
「あと、できるだけ早く。奴らがまた事を起こす前にやる必要があった。」
「奴らのアジトがここから近いことと、まだのうのうとここにいることから、何かするつもりだろうということは容易に想像がついたしな。。。」
「できれば藍華と接触する前に捉えれて隔離でもしておきたかったんだが。
決定打にかけてたんでこういう行動を取らせてもらった。」
両手を腰に当てて胸を張って言うフェイに
「胸ぇはって言えることじゃないだろうが。。。
カレー全部ダメにしちまって。。。」
ドスッとグーで腹に一撃を喰らわすアグネス。
本当に・・・食べ物の恨みは恐ろしい。




