102.色々感動なお風呂
アグネスも一緒に入ってくれるそうで、着替えとタオルと持って、幕の張られたそこに連れていかれる。
「しっかり見張れ、でも絶対に覗くなよ?」
と念を押して入り口の幕を閉める。
「うーわ〜!!すごい!」
想像していたのより大きく、四方は幕で覆っているものの、上はフリーで星空が綺麗だ。
「さ、今多分ちょうどいいぞ。冷めないうちに早く入ろう。」
天幕に入る直前に焼き石を入れてもらい温度を上げてもらったのだが、石を入れた瞬間上がる蒸気、伝わって行き囲われた中の水だけがお湯に変わって行く様はとても面白かった。
上着を脱ぎ、破かれたシャツが露わになると、吐き気にも似た感覚で胸が苦しくなる。
このシャツは後で火にでもくべてもらおう。
そそくさと着ていた服を畳んで薄い大きめのタオルを身体に巻く。
足先からゆっくりと肩まで湯に入ると、これまでに感じたことのないほどの開放感。。!
簡易露天風呂サイコー。
いや、お風呂が最高。。。!!
アグネスと一緒に入っても、十分に足が伸ばせる広さ。
これから先“くさつ”によるらしいのでそこの温泉も実は楽しみにしていたけれど、これはまた違った感動がある。
何せ数日ぶりの湯船ですから。。。
星は綺麗で気持ちいいし、
そしてアグネスのダイナマイトボディがまぶしかった。
リアルに胸がお湯に浮く様を見れるとは。
隣に座ったアグネスの胸を直視して、貴重なものを見せてもらったと思わず拝んでしまう。
拝んで同時にスカッと小さな自分の胸が寂しく思えるが。それはそれ。
何してるんだ?という目で見られていたけれど、アグネスが手の縄の跡に気づいた。
「藍華、その手。。。」
縛られた跡がまだ残っていたのだ。
「痛くはないか。。。?」
「。。大丈夫です。縛られて吊るされてただけですから。自分の体重でこんな跡ついちゃうんですねぇ。。。」
手の跡をさすりながら言うと、
そっと手を取られ、ぎゅっと抱きしめられる。
胸が。胸が。。。!!
「泣けるなら泣いていいんだ。泣かなくても大丈夫ならそれでいいけどな」
考えてもいなかった言葉に、じわっと目が潤む
「でもっ・・・縛られてシャツ破かれたくらいでっ・・・」
たったそれだけで、と続けるつもりが。
声が出なかった。
「・・・それくらいで、なんて言うな。嫌だ、と思うようなことをされた時点でそれはもう犯罪だ。許そうとしなくていい。」
「・・・ぅん・・・」
「忘れるものなら忘ちまえ。出来ないなら思い出すたびにそういうことに対する怒りに変えるんだ。
その怒りはお前の中で力になっていくはずだから。。。」
心が震える。それが伝わり身体も───
「んで、それ以上の幸せで上書きして行くんだ・・・」
「・・・ゔん・・・・」
アグネスは心の方向を指し示してくれている。
どれが出来るかは、わからないけれど。。。
「・・・多分・・・すごくこわかった・・・」
「ん・・・怖いとこよく頑張ったな・・・」
そのまま思いっきり泣いてアグネスの胸の幸せな感触に再び気づいた時にはお湯がだいぶ緩くなってしまっていた。
「・・・ありがと。アグネス。だいぶ落ち着いたみたい。。。」
「・・・後は奴に上書きしてもらえ・・・!」
小さめの声で、天幕の向こうの影を指して言う。
誰の影か分かった瞬間に茹で蛸のようになって顔半分がお湯の中に沈む。
「フェイー!ユウリさん呼んでくれー!」
アグネスの呼びかけにフェイが手だけ幕から突っ込んでヒラヒラさせて答える。
「さ、今のうちに洗髪もするぞ!藍華もそれ外せ。」
頭に巻いたていたタオルを外すと、アグネスの輝く赤毛が波打った。
自然を出来るだけ汚さないように、湯シャンプーだったけれど、とてもさっぱりした。
ユウリさんが焼き石の補充に来てくれて、も一度温かいお湯を堪能させてもらい。
髪はアーティファクトで一気に乾かして、髪に良いから、とアグネスの持っていた香油を塗ってもらった。
軽く一本の三つ編みにまとめた髪を自分で嗅いでみて
「いい香り〜」
ホワホワと香るのは、桜のような香り。
「これ“きょうと”で売ってるから、気に入ったなら行ったときに店を紹介するよ。」
「ありがとう!」
楽しみが1つ増えた。




