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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 三章 “キョウト”へ
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101.生身で空中散歩は。。。。。


商隊と待ち合わせたのだという小さな湖のところに着いた時には、もう日が落ちてからだいぶ経った時だった。


盗賊のアジトから結構離れた場所だと思うのだが、大吉さんの棒人間の指輪で空中散歩はまぁ生身にはコタエタとだけ記しておこう。


多分前回は無意識に自分も棒人間の指輪で身体強化してたのだろうな。。。。。



盗賊の頭が迷惑料と言って渡してきたアーティファクトで先に連絡を入れておいたので、私たちのテントをアグネスとフェイが立ててくれていた。


「藍華!!大丈夫か。。?」


アグネスが心配そうに覗き込んでくる。


「なんとか。。ご迷惑おかけしました。。」


口はしっかり回る。


「ありがとうな、アグネス。藍華が痺れ薬にやられてるんで、もう少し痺れが抜けたら頼んでいいか?」


「あぁ、しっかり用意してあるから。いつでも行けるようにしとくよ。」


フェイもやってきて、


「荷物も全部運び込んであるから、少しお前も休め。話はソレの時でいいだろう?」


「恩に着る。」


「お礼は“きょうと”で酒でも奢ってもらおうか」


「あたしもあたしもー!」


「勿論だ。」


苦笑しながら答える大吉さん。

私も参加したい。


「じゃぁありがたく、ちょっと休ませてもらうよ。」


「食事はアレの後でいいな?すぐに飲み物だけ持っていくよ」


ソレとかアレってなんだろう。


「サンキュー」


大吉さんはそう言って立ててもらったテントへ入る。


入って開口一番。


「・・・あいつら・・・」


そう言って赤面している。一体何が??

と、少し自由を取り戻した首で大吉さんの目線の先の物を見ようとするが。


「みなくていい。。」


そう言って目隠しされる。


目隠しされたまま足を下ろされ、あぁまだたてなぃ。とわかる。


大吉さんがその一瞬で何をしたのかわからないけれど。


私用の寝袋の上に下ろされた。


大吉さんは、自分の装備を外し、予備の上着を出してきて私の上にかけてくれる。


「ありがとうございます。。」


アーティファクトの力があるとはいえ、ずっと抱えたまま5キロ弱の道。重くないはずがないのに休むことなく来てくれて。


あぁあホント私って役立たず。。。


「ひとまず休憩な。」


少し離れた寝袋の上にゴロンと転がり言った。


「商隊の人達とアグネスが風呂と飯を用意してくれてるから。風呂は後でアグネスに連れて行ってもらえ。」


「お風呂ですか?!」


首をグリン!!っと大吉さんの方に向けて、

食いつくように言葉が出る。


ここまで、水は温存せねばならなく。リフレッシュ系アーティファクトで汚れを落とすだけだったのだ。


「ここの小さな湖は水の入れ替わりが激しくて好条件なんだ。一部岩で区切って、そこに焼き石を入れることであったかい風呂になる。」


すごい。。嬉しい。


「大吉、入っていいか?」


「おー」


垂れ幕をアグネスが避けて、フェイがお茶セットを持ってきてくれる。


アグネスが後ろの方で小さくチッと舌打ちしてたが、キロリと大吉さんに睨まれ両手を頭の後ろに回して口笛を吹く。


大吉さんは起き上りあぐらをかいてお茶セットを受け取った。


「サンキュー」


手をヒラヒラさせて出て行くフェイ。


「ちょっと起きれるか?」


コロンと向きを変え、手を立てて力を入れようとするが、体を起こせるほど力が入れられない。


「んーまだ無理みたいです。。」



じゃぁ、と言って私の方へ来て。

まず肩から脇に手を入れ、ヒョイと上半身を起こして座らせてくれる。

そして背の方にまわってあぐらをかいて座り、再び脇に手を入れ持ち上げ自分の方へ寄せてあぐらをかいた足の上にポスンと座らせた。


まるで小さい子供が親に抱えられながら座るかのように。。。


体の感覚は戻ってきてるので脇はちょっとくすぐったいし背中から伝わる大吉さんの体温が気持ちよくて。。。

痺れが抜けてだんだん感覚が戻るように、心臓のドキドキが大きくなる気がした。顔も熱くなってくるのがわかる。


こういうことを平然とやってのける大吉さんて一体何考えてるの?!とか思わなくもない。。。


ポットからカップに注ぐと少し湯気が出てお茶のいい香りがする。


「。。いい香り。。。」


アールグレイのような香りだけど、この世界で諸外国との流通てどうなってるんだろうか?


アグネスは多分どこかヨーロッパの血が入ってるだろうし、フェイは名前からしても中国系?だと思うのだけど。


「達磨頭取、商品おろしたな。。」


「やっぱ高級茶葉ですか?」


「お、わかるのか?」


「大吉さんのお店にある茶葉は、仕入れは“しずおか”の方から仕入れてるって言ってたじゃないですか。

それと同じ種類な香りだけど、これは私のいたところを彷彿とさせる香りだったので。日本国外からの輸入品であると推察しました。」


しずおかは富士山の噴火で壊滅的な打撃を受けて、大きな湾とその付近に残った土地があり、湾をぐるりと囲むようにあるのが現在の“しずおか”で。西しずおかと東しずおかでとれるものが違うと言う話を聞いたのを思い出しながら言った。


「なるほど、そういえばあっちの茶は日本茶以外は輸入が多いと言っていたな。」


「輸入品はどこにいても高級なものだと思ったので。」


「大当たりだ。藍華が来る数日前に輸入船がきててな。その時にストックしておいたそうだ。」


「後でお礼しないとですね。。。」


少し冷めるのを待って、ゆっくりと飲ませてもらった。


多分時間にすると30分も経ってなかったろうが、数時間にも感じるし一瞬だったようにも思えるその時間。


痺れもほとんど取れ、いつのまにかアーティファクトも使えるように戻っていた。


電池式のものは、エネルギーが切れるまで効果を保つことも理解した。髪ゴムに擬態したあのアーティファクトは一向に戻る気配はなかったので。


「じゃぁアグネスを呼んでくる。」


「ありがとうございます」





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