100.いざ脱出へ
「さっきの医務室の近くにな。地上に出るルートがあるんだ。
階段で上って、さっきよりもでかいホールを抜けたら後は地上に出る階段と通路だ。」
移動をしながら簡単に説明してくれる。
その間にも爆発が数回響いていた。遠くの方だったり、近くだったり。脱出するまで不定期に爆発が続いて身を隠せるようにしたのだろう。
時限式で分数も変えれるようなものなのかな。。
大吉さんの腕の中だからか、安心感は強い。。。
そして色々振り回されてるけども脳ミソは落ち着いている気がする。思考力は落ちていない。
いや、多分先程までの大吉さんの言動について詳しく考えたくないのか。。。まだ脱出し終わってはいないのだから。
また数人を煙に紛れてやり過ごし、1人鉢合わせて蹴りを食らわせて倒した以外は問題なく出口近くだというホールまで辿り着く。
ホールには煙が薄く広がっていて全体は見渡せないが、中央部分だろう位置に、1人の人影が見えた。
「・・・こいつだけは避けられんな・・・」
大吉さんはボソリと言った。
ホール中央で待ち構えているかのようなその人物を、
大吉さんは気配とその風貌から何者なのかを判別しているようだ。
「やはり貴様か。」
「六剛だったか。。?
俺がこんなに早く来るとは思わなかったろ・・・?」
六剛は答えない。
が、言葉遊びに乗るような人物ではなさそうだ。
爆煙は少しづつだが薄くなっているようで、煙が動いて表情が少しだけ垣間見えたが、強面で盗賊らしいと言えばそれらしい雰囲気の人物だった。
「藍華、すまない。ちょっと待っててくれ」
ホール入り口から少し離れたところの壁側に横たえられる。
「・・・!・・・」
「心配するな。そう時間はかけない。」
立ち上がり、煙の向こうの六剛と呼んだ人物を見据えて右手を振り下ろす。
「雷刃」
大吉さんの声と共にネックレストップの刀が手に黒刀として具現化する。
黒い刀身には銀色だけども虹色に輝く何やら文字のようなものが入っており、バチバチッという音と共に雷をまとっていた。
「もし結界がはれるようになったら・・・はっておけよ。」
そう言って煙の中へと消えていく。
シャァぁっという金属の擦れる音が響く。
おそらく六剛というのはあの時大吉さんが手こずっていた相手・・・
どうか無事で。。。!
煙は薄くなってはいるものの、元々戦闘のスピードとかについていけてない自分には何がどうなっているのか予想もできない。
剣戟の音だけがはっきり聞こえるその空間は、心配で苦しくてしょうがなかった。大丈夫だとは思ってる。
思っているけどそれでも。。。
キィン!!
剣戟の音が何回か鳴り響き、互いに距離を取り、また再びぶつかり合う。
そんな音が何回か繰り返された後。
雷光と感電する音。そして───
「・・・ぐっ・・・」
うめく声とドサッと倒れる音が聞こえる。
その後しばらくしてこちらに向かってくる足音が聞こえ。。。
「待たせたな。」
よかった。。。と少し目が潤む。
「何人か追ってきているような気配がするから、適度に急ぐぞ。」
そう言ってまた私を抱き抱える。
「・・・すみません・・・」
小さく出た声は色々な音が飛び交う雑音の中でしっかり届いていたようで。
「そういう時は、ありがとう、だ。」
ふんわりと笑顔でそう言う。
先ほどよりは開けるようになった目で直視し、
あぁもぅ。ホント。。。。。
赤くなりきる前に顔を大吉さんの胸に埋めた。
ホールを突っ切り、
「ここを抜けたらもう外だ。」
少し通路を入り込んだところの扉前でそう言うと、
ピタッと止まって真剣な顔で何やら黙り込む。
後ろを気にしているようだが。。
「ちょっと歯を食いしばっておけ」
言われてすぐに返事なしで言う通りにする。
すると大吉さんは一気にその階段と通路を突っ切り、出入り口の扉を蹴り飛ばして外に出る。
煙は勢いよく外へと逃げ出していく。
少し離れたところで大吉さんは私を下ろし、座らせた。
その前に、盾になるかのように陣取って黒雷の剣を構えて出入口から出てくる人物を待つ。
ヨロヨロと出てきたのは、あの医務室にいた幼なげな少女に支えられてきた盗賊団の頭だった。
「・・・戦闘の意思はない。刀を納めてくれ。」
確かにそんな感じだではあるけど。。
と思っていると、大吉さんもそうだと判断したのか、剣をアーティファクトに戻す。
「迷惑料だ。」
そう言って通信アーティファクトのもう片方を投げてよこす頭。
「随分と殊勝じゃないか。」
まだ体の自由が効かないのだろう、医師だという少女に支えられながら煙吐くアジトの出入り口をバックに答える頭
「割りに合わなさすぎたしな。。
うちの団の者じゃない。。。依頼者とは言え約束を違えたお詫びだ。」
今度は私を見ながら言う。
服、破られたこととかに対する慰謝料か。
生温い。そんなもので許せるか。一生許さない。
だが、許さないのはこの頭じゃなくてユキノリとかいうやつの方だ。
「一応受け取っておこう。コレは後で藍華の好きにしろ。とりあえず商隊と合流するまでは役に立つ。」
「りょーかい」
くるりと振り向き、奴等と沈みかかっている夕日に背を向け歩き出す大吉さんに、頭が最後の一言をかける
「・・・二度と顔を合わさないことを祈ってるよ・・・」
「おたがいに、な。」
大吉さんは振り向かずに答えた。
その直後私に向かってボソリと言う
「しっかり捕まってろ」
あ、はい。ジャンプですね。
「はい。。」




