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第17話 皇太子と聖女

「……殿下?」


私とミーナセインは思わず声をハモらせる。



(皇太子殿下が何故小姓の格好を?!)



驚いていると、殿下と呼んだと思われる一団が駆け付けてきた。騎士が数名、小姓に神官がゾロゾロと。その中にマギアス副神官長もあった。


小姓や神官が私達と殿下と呼ばれた小姓服の男性の間に割り込んで、騎士が武器を構えて私達を警戒している。


「お待ち下さい、その者達の身分は私が保証します!」


副神官長(マギアス)様は大慌てで私達の前に割って入った。


「よい、下がれ」


殿下と呼ばれている男性がそう言うと騎士達は下がって道を作り、男性がそこを歩いてきた。


「皇太子殿下……」


副神官長(マギアス)様はそう言って膝をついて両手を合わせて頭を深々と下げた。


ミーナセインは青い顔になり、平伏する。私は状況を認識するのが遅れて「え?」と棒立ちになっていたけれど、副神官長(マギアス)様に「皇太子殿下で在らせられる、平伏しなさい」言われて、やっと状況が飲み込めたので慌てて平伏した。


「その方ら、名は?」


「ヴェルメリアと申します。ゲルレム侯爵家が長女にございます」


「ミーナセインと申します、ブランシュ侯爵家が長女にございます皇太子殿下」


「ふむ、そうか……なるほど。面を上げてよい」


皇太子殿下に促されて私達は上半身を起こした。


「マギアス副神官長、彼女らが賊を退治してくれたそうだ。余の生命の恩人だ」


「は? そ、そうなのですか?!」


副神官長(マギアス)様は振り返って私とミーナセインを見る。


「うむ。最近余の命を狙う輩が居ると聞いてな。馬車には乗らず、小姓の姿で最後尾に居たのだが――まさか本当に襲われるとは思っておらなんだ」


皇太子殿下は腕組みしながら頷いている。


「ミーナセインにヴェルメリアだったか? この異常な事態にいち早く反応するとは、余は感心しておる」


「はい。私どもは最初の爆発をマギアス副神官長と共に目撃しました。負傷者が多数出ているのが見えましたので、治癒魔術を修めた者としては居ても立ってもいられず駆け出して救護に当たりました」


ミーナセインは恐縮した表情で殿下に説明していた。


「私は最初の爆発は攻撃魔法によるものと判断し、周囲の魔力を探知しながら再度の爆発を阻止すべく窓から直接外へと移動しました」


ミーナセインに続いて私も自己アピールしてみる。


「窓から……直接?」


殿下な眉間に皺を寄せた。


「はい、緊急でしたので。そして魔力探知(センスマジック)で周囲を探った所、不審な男を見つけました」


私はその後の黒長衣(ローブ)との戦いを殿下にご説明差し上げた。


「そして私は男の顔を拳で殴り、無力化させました……」


私の説明に殿下の眉間の皺は段々と深くなり、下唇を噛み締め、拳を握りしめ、懸命に何かを堪えてるいる様に見えた。ミーナセインもその様子に気づいたからか、顔面蒼白で俯いている。副神官長(マギアス)様も顔を蒼くして汗を大量にかいていた。



「で、殿下……あの、彼女らも、必死で、帝国の秩序を、護ろうと……」


副神官長(マギアス)様が私達をなんとか擁護しようと言葉を選んでいたのだけど、突然殿下が吹き出して笑いだした。


「ぶふぅっ……古代魔法を……使う……魔術師(メイジ)を……ふふふっ……殴り……くくくっ……あははははっ!」


「で、殿下?!」


私達も含めて周囲の人々は唖然としました。


「いやいや、失礼。このご令嬢は二人とも見事見事! 流石は慈愛の女神(アヴァロ=スヴァラ)に選ばれた聖女だ」


殿下の言葉にその場に居た人々は驚き、その視線を私達に向けた。


「余とて独自の情報網は持っておる。大聖堂の内々で済まそうとは思わん方が良いな」


殿下は副神官長(マギアス)様に不敵な笑みを浮かべた。


「今日はこの様な事になって後始末など大変であろう、余はこれで失礼する。聖女任命の儀は日を改めるとしよう……」


「は、しかと承りました」


改めて副神官長(マギアス)様は深々と礼をしたので、私達も平伏した。その間に殿下は一団を伴って立ち去られた。



「――まあ、こんな事になっては色々と日を改めなくてはならないしょう。ご自宅へ送らせますので本日はお引き取りを」


こうして副神官長(マギアス)様の取り計らいで私とミーナセインは馬車で自宅へと送られた。

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