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第14話 大爆発

――マギアス副神官長を伴って控室に戻ると、私とミーナセインに改めて説明を始めた。



「お二人にはご迷惑をお掛けしているので、こちらの誠意として正直にお話しますが――他言無用願います」


マギアス副神官長が語ったのは、聖女が現れなかった百年の間は形だけの聖女を教団が立てていたこと、ここ近年は有力貴族の令嬢を優先していたことだった。


「知ってましたわ」

「存じておりました」



私とミーナセインがハモる様になってしまい、思わず二人で顔を見合わせてから何事も無かったように振る舞う。


「……知っておいででしたか?」


副神官長は意外そうに驚いていた。


「貴族界隈では有名な話です。ただ、事が事だけに暗黙の了解ということで表立って言わないだけだと思いますけれど」


ミーナセインの言葉に副神官長はとても気まずそうな顔をしていた。



(この子も結構ズバリと言うんだ、へえ……)



「で、今回はルインバロー侯爵家のご令嬢が聖女になるはずだったけれど、私とミーナセインさんみたいな本物の聖女が現れてしまったと……」


「……仰る通りです。お二人につきましては大神官様たちでも意見が割れておりまして……」


「まあ、沢山寄付を貰ってる手前無碍には出来ませんものね」


私はちょっと嫌味っぽく言うと、副神官長は頭を下げた。本当に申し訳なさそうにしていたので、ちょっと意地悪くし過ぎたと良心の呵責が……。


「取り敢えず、今日は皇太子殿下もお越しになられるのでお引き取り下さい。必ず後日話し合いの場を……」



――その時、爆発音が轟き振動で部屋が揺れ窓ガラスがびりびりと音を立てて振動した。



「な、何事?!」



マギアス副神官長が慌てて窓から外を見る。私とミーナセインもそれに続いた。


窓から外を眺めると、大聖堂の正門から建物に続く道で火災が起きていた。建物が吹き飛んで残骸が散乱していて、人々が右往左往している。石畳や崩れた建物の中に倒れている人が幾人も見える。


「酷い……怪我人が?! 私、行きます!」


ミーナセインは部屋から駆け出して行った。


「ミーナセイン殿、待ちなさい!」


副神官長は焦って止めようとしていたが、ミーナセインは一目散に飛び出して行った。



(躊躇なく駆けだして行った……やるわね)



ミーナセインもただ偶然で聖女に選ばれたわけじゃない様だ。私はというと、窓を開いて魔力探知(センスマジック)を発動させて様子を探ってみる。


「かなり濃い魔力残滓……攻撃魔法?」


「馬鹿な?! 大聖堂外壁の魔法障壁が破られる訳が……それに大聖堂の敷地内は神聖魔法以外の魔法はかなり減衰されるはず、あの様な強力な爆炎魔法など……」


私の呟きにマギアス副神官長は驚き反論した。



「私が思いますに、魔法障壁を抜いたのではなくて内部から放ったのでは、と。そして威力は減衰した上でアレではないのかと推察しますわ」


私の呟きに副神官長はギョッとしていた。そして窓の外を再度見て、血の気の引いた表情になった。


「あれは、あの馬車は本日来られるはずの皇太子殿下の……」


爆発の中心辺りに上級貴族用の馬車数台の残骸が散乱している。その様子から、馬車の車列に対して爆炎魔法のようなものが使用された様だ。



「――これは只事じゃないわね、こうしちゃいられないわ」


私は自身に強化魔法(エンチャント)を施す。


『……身体能力向上(モアフィジカル)……護り(プロテクション)……疾風(ヘイスト)


「ヴェルメリア殿、何を?!」


「魔法を放った敵がまだこの付近に居るって事ですよね? これ以上好きにはさせませんわ!」


「ヴェルメリア殿、何を言っているのですか?!」


窓枠に手と足をかけます。


「行きますわ……とうっ!」


私は窓から飛び降りた。因みにここは三階だけど、張り出したバルコニーを足場にして難なく着地する。窓から叫ぶマギアス副神官長の声を無視して私はもう一度魔力探知(センスマジック)を発動させた。



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