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黎明の氷炎  作者: 雨宮麗
魔天月蝕編 序

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49「男の浪漫と人生」

 

「えっ!?ウロボロスの時の幻覚魔道士!?!?……って誰ですか?」


 そんな不破の声があまねの屋敷に響く。

 目を覚ました京月は、事態の説明をするために不破と翠蓮の二人を連れてあまねの屋敷を訪れていた。京月は自分が意識の無い間、ジェイドの幻覚魔法の領域内にいたことを話し、あまねからその間の出来事を聞いていた。


「ジェイド・ヴェリヴス……、その幻覚魔道士が亜良也のお兄さんの指示で亜良也を助けたと?」

「実際どうかは分かりませんが、そう説明を受けました」


 あまねは何かを考えるように手を口元に持っていき、少ししてからまた口を開いた。


「事実だろうね。嘘をつく必要も無ければ、その理由無しで亜良也を助けることは無いだろうからね。しかしそうなってくると、一体何のためにお兄さんが魔天にいるのか、が気になるな。魔天の状態もね」

「京月隊長のお兄さんが魔天に……。その、魔天が私の力?を狙っているんですよね?」


 翠蓮の呟きに、あまねが頷く。


「そうだよ、エセルヴァイトからも聞いたみたいだね。まだ理解できなくて当然だけど、魔天は翠蓮の力を狙っている」

「魔天に関しては情報が少なすぎる。一体どれほどの規模の組織なのかも分からないままでは先が思いやられる」


 そう話す京月の言葉に、不破や翠蓮が頷く。

 そしてその中でゆっくりあまねが口を開いた。


「魔天との戦いを想定して考えた時、エセルヴァイトの力を全て出せば世界は崩壊する。全力を出せないのは痛手だ。全力でなくともこの世界の神の力に抗えるというのは大きいけど、こちらからも神の力に抗える可能性を上げておきたいという話をエセルヴァイトとしていてね」

「人間である俺達が一体どのように………あ。」


 言いかけた京月は何かに気付いた様子だ。

 そんな京月の様子に、不破と翠蓮は首を傾げる。


「この戦いに宇佐も連れていくということですか」

「えっ、宇佐隊長??なんで??」


 不破はそこでどうして宇佐の名前が出たのか疑問に思うが、彼の体質と持って生まれた力を知る京月はあまねの言いたいことを理解していた。


「まあ、敵が神ならそれに近い存在がいた方が手っ取り早いからな」


 京月の言葉にまだ不破と翠蓮は頭の上に?を浮かべて首を傾げる。


「一体宇佐隊長は何者なんですか?」


 そんな不破の問いに京月は言葉を探しているのか少し間を開けて答えた。


「……ギャンブラー」

「「?????」」


 京月の言葉で、一層謎が深まっていく。その一方、当の本人である宇佐は自分の話をされているということなど全く知らないまま、宇佐は今日もギャンブルの為に町に出ていく。


 ✻✻✻


「〜〜♪〜〜〜♪〜〜♪」


 鼻歌を歌いながら、最近外国から入ってきたのだという遊戯場へと向かう宇佐。宇佐の傍では四番隊の副隊長、司業からの怒りの連絡を伝える伝令蝶がバタバタと忙しなく騒いでいた。


「幽元!業が怒ってるよ??任務の話ができないって……!」

「あーあー、んなもん聞かなくてもどうにでもなるって!俺を誰だと思ってるわけー?」


 そう言って、宇佐は遊戯場へと入っていく。後にパチンコなどと呼ばれるようになるそこでは、タバコの煙がもくもくとあがり、ジャラジャラとしたお金の音が響き渡る。魔法術式が仕込まれている機械の魔力装置を動かせばこれまた派手な魔法演出と共に機械が動き始め、複数の絵柄が浮き上がった。


「ほいじゃま、いっちょやりますかー」


 宇佐がその機械にお金を入れると、絵柄が動き出し魔力装置に触れれば絵柄の動きが止まる。止まった絵柄と被った数に応じて機械に貯められる魔力が上がっていき、絵柄によっては貯蓄魔力が減少する。お金で魔力を増やしたり減らしたりするようなものだ。


 貯蓄魔力の量が投入した金額分を下回ることがほとんどだが、当たりを引けば投入分を上回る金額となる魔力を得ることができる。そうして勝ち、得た魔力を相当の現金と交換する。魔力といっても普通の魔法に使えるような魔力では無く、遊戯用に改良された誰でも扱える弱いものだ。


 そうした遊戯場は、競馬などその他のギャンブルよりゲーム感覚に近く初心者でもやりやすいこともあり外国から取り入れられてすぐに人気となった。ただ人気の裏ではそういった賭け事などのギャンブルに依存してしまい生活が破綻してしまうようになる者も多く存在していた。


 そんな遊戯場で給料を使い込み、総隊長に借金をしてまでのめり込んでいるのが、この国家守護十隊四番隊隊長。宇佐幽元だ。


 総隊長から借りたお金を躊躇なくぶち込んで魔力装置を動かすと慣れた手つきで操作していく。

 うさぎの被り物をしているその姿は遊戯場でなくともそもそも目立つ。真昼間から国家守護十隊の隊長がこんな所で賭け事に勤しんでいる、と騒ぎ立てられてもおかしくはないのだが周りの者も遊戯に夢中で宇佐のことなど気にすることなくお金に目を晦ませていた。


「ッはーー……、マジで当たれ。当たれよ今日こそ。こっちは総隊長に金借りてんだからなァ?……チッ、なんだよまたハズレか。」


 被り物には魔法がかけられており、被り物の上から何にも邪魔されることなくタバコを吸い始める宇佐。まるで被り物にタバコがくっついているような見た目のそれ。うさぎがもくもくとタバコを吸っている姿は全くもって可愛らしさの欠片もない。


「チッ、まだ金はあるし良いか。今度こそ当たれよーマジで」


 タバコを吸いながらまた迷うことなくお金を注ぎ込んでいく。そんな宇佐はどこからどうみても依存者だ。そんな宇佐に先程からずっと伝令蝶が声をかけているが、遊戯場内はかなりの爆音で宇佐に伝令蝶の声は届かない。


「あ、いた!宇佐隊長ですよね??」


 遊戯場への立ち入りは未成年には禁じられている。それは子供が賭け事などの遊戯に依存することを防ぐためだ。


 そんな遊戯場に似つかわしくない明るい声。


 宇佐は聞き覚えのあるその声に心臓が止まったかと思う程の衝撃を受けて飛び上がった。女の子の入隊というだけで珍しいことなのに、今年は三人全員女の子という異例の新入隊。それだけでなく全員が一、二、三番隊という上位の隊への入隊。中でも最強と謳われる京月亜良也の元に入隊した氷上翠蓮のことを、宇佐はよく記憶していた。


 そんな翠蓮の姿を見た宇佐は慌てて外へと連れ出した。


「マジで…………!!なんッでこんな所にいるの!?未成年が入って来ちゃ駄目でしょーが!!」

「えっ、だってこれから私宇佐隊長と任務みたいなんですけど、連絡つかないから伝令蝶に道案内してもらったんです。そしたらここに……、ここって入ったら駄目なところなんですか?ごめんなさい知らなくて」


 そうしょんぼりしながら謝る翠蓮に、宇佐は内心震えていた。確かに伝令蝶が何かを伝えようとしていたが、まさか翠蓮との任務の伝達だったとは。宇佐は京月の性格をよく理解していた。こんな所に翠蓮に来させてしまったことが知られれば大目玉を食らうことは間違いなしだ。


「あー…………悪かったな。任務ね、任務。おっけー。大丈夫だからさ、京月には言わないでね。後でアイスクリーム買ってあげるからさ」

「え?あ、はい……?」


 翠蓮は何がなんだかよく分からないまま、宇佐と共に任務へと向かっていった。

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